
PlanetScaleがNekiを発表。Postgresを分散シャーディングで拡張する新サービス
PlanetScaleが新サービス「Neki」を発表した。Postgresデータベースを複数マシンに分散させ、スケールさせるためのシャーディング基盤だ。本日からプラットフォームプレビューとして利用できる。
Nekiの特徴は、各シャードに本物のPostgresが動いていることだ。既存のドライバーやORM、接続文字列がそのまま使えるため、アプリケーション側の変更を最小限に抑えられる。
急速に成長するPostgresデータベースの運用に悩むチームにとって、新たな選択肢になる可能性がある。本記事ではNekiのアーキテクチャと、従来の分散アプローチとの違いを解説する。
Nekiの概要とアーキテクチャ

NekiはPlanetScaleが8年間培ってきたシャーディングMySQLの運用経験をもとに設計された。大規模な本番環境で毎秒数百万クエリを処理してきた知見が、Postgres向けに再構築されている。
実Postgresを維持したまま分散
各シャードは完全なPostgresクラスターとして構成される。1つのプライマリと最低2つのレプリカが3つのアベイラビリティゾーンに分散する。カスタムストレージエンジンは使わないため、拡張機能、SQLサポート、性能は通常のPostgresと同じように動作する。
アプリケーションはNekiルーターに接続する。ルーターは標準のPostgresワイヤープロトコルを話すため、既存のドライバーやORM、接続文字列がそのまま機能する。接続先を変更するだけで移行できる設計だ。
アプリケーションから見ると接続先はルーターの1つだけだ。シャード構成はルーターが内部で処理するため、クライアント側の変更は不要になる。
データトポロジーでシャードキーを制御
シャードキーの選択は利用者が行う。JSON形式のデータトポロジーで、テーブルをどのようにグループ化し、どのシャードに分散させるかを定義する。シャードインデックスでルーティングに使うカラムとハッシュ方法を指定し、シャードグループでテーブル群をどのシャードセットに配置するかを制御する。
最初からシャーディングする必要はない。単一プライマリとレプリカで構成し、1台のマシンで足りなくなった時点でリシャーディングを実行すればよい。
Nekiの4つの構成要素

Nekiは4つの主要コンポーネントで構成される。ルーター、シャードグループ、接続プーリング、コントロールプレーンだ。それぞれが連携して分散Postgresを実現する。
ルーター
ルーターはアプリケーションからの最初の接続先だ。Postgresワイヤープロトコルを解釈し、クエリを解析する。分散クエリプランナーがどのシャードにクエリを送るかを決定し、結果を1つのストリームにまとめ直す。ルーターは垂直方向にも水平方向にも拡張できるため、単一ルーターがボトルネックになることはない。
シャードグループと接続プーリング
シャードはシャードグループにまとめられる。異なるテーブルやワークロードを異なるシャードセットに配置できる。各シャードには構成プロファイルがあり、インスタンスサイズ、レプリカ数、ストレージ、Postgresパラメータ、拡張機能を個別に設定できる。
接続プーリングではサイドカーが各Postgresインスタンスの横で動く。Nekiはルーター側とPostgres側の両方の接続を制御するため、プールサイズを各インスタンスの実際の処理能力に合わせて調整できる。PgBouncerを単純に前に置くより精度が高い。
コントロールプレーン
コントロールプレーンは全ノードの健全性を監視する。計画的なスイッチオーバーと予期しないフェイルオーバーを実行し、リシャーディング、スキーマ変更、バージョンアップグレードのワークフローを調整する。データトポロジーはJSON設定としてルーターにキャッシュされ、すべてのクエリプランで参照される。
既存の分散Postgresアプローチとの比較

急速に成長するPostgresデータベースには複数の問題がある。テーブルが大きくなりすぎてバキュームやインデックス作成がトラフィックに影響する。バックアップに数時間かかり、接続数に制限があり、スキーマ変更にメンテナンスウィンドウが必要になる。トランザクションラップアラウンドも対応が必要な課題だ。
アプリケーションレベルシャーディングの課題
アプリケーションレベルシャーディングでは、ルーティングをコードに埋め込むことになる。アプリケーションがシャードキーを意識し、どのシャードに接続するかを自前で管理する必要がある。追加のライブラリや複雑なロジックがコードに混ざり、保守が難しくなる。
Postgres互換分散DBの課題
Postgres互換をうたう分散データベースも存在するが、いくつかの妥協を強いられる。シャードキーが隠され、拡張機能が使えなくなり、複雑さとレイテンシが増加する。問題が起きた時のデバッグも困難になる。
Nekiのアプローチ
Nekiは「Postgresに固執する。回避策を使わない。偽装しない。逸脱しない」という原則で設計された。各シャードに本物のPostgresを配置し、ルーターが通信を仲介する。これにより拡張機能もSQLサポートも性能も、通常のPostgresと同じ挙動を保てる。
オンラインワークフロー

従来はメンテナンスウィンドウを設定して行っていた作業が、Nekiでは組み込みワークフローとして実行される。ワークフローは新しいターゲットノードをプロビジョニングし、レプリケーションで追いつかせ、トラフィックを切り替え、古いノードを破棄する。すべてアプリケーションが使うのと同じpsql接続から実行できる。
スキーマ変更とバージョンアップグレード
スキーマ変更はオンラインで実行される。トラフィックに影響を与えず、ダウンタイムなしでテーブル定義を変更できる。バージョンアップグレードも同様の仕組みで、新しいバージョンのノードを作成し、レプリケーションで同期させてから切り替える。ゼロダウンタイムのアップグレードが実現する。
リシャーディングとフェイルオーバー
リシャーディングもワークフローとして実行される。既存のクラスターに対して実行し、データを新しいシャード構成に移行する。計画的なフェイルオーバーと予期しないフェイルオーバーの両方に対応し、コントロールプレーンが正常性を監視しながら自動で切り替えを行う。
NekiにはPlanetScaleの既存機能も含まれる。Insights、スキーマレコメンデーション、ブランチ、MCPなどの機能が利用できる。
プラットフォームプレビューの注意点

プラットフォームプレビュー期間中は、本番ワークロードにNekiを使用してはならない。製品はまだ変更中であり、一部の変更は互換性を壊す可能性がある。
プレビュー期間中のフィードバックはサポートチケットまたはDiscordで受け付けている。大規模なPostgresクラスターを持つチームは、プライベートデモを依頼することもできる。スキーマやクエリパターンを分析してもらい、シャーディング方法について具体的な提案を受けられる。
Nekiを試すには、PlanetScaleにサインインし、プラットフォームプレビューにオプトインして、Nekiクラスターを作成する。公式ドキュメントでアーキテクチャの詳細やシャーディング方法を確認できる。
この記事のポイント
- Nekiは各シャードに本物のPostgresを動かす分散サービスである
- ルーターがPostgresワイヤープロトコルを解釈し、分散クエリを処理する
- スキーマ変更やリシャーディングなどの運用作業はオンラインで実行できる
- 既存のドライバーとORMが接続文字列を変えるだけで使える
- プラットフォームプレビュー期間中は本番運用に使わないこと

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