
42モデル比較で判明!AIモデル選択がもたらす推論コスト86倍差の実態
Neonが42のAIモデルを対象に、サポートチケット100件の処理コストと品質を同時検証した。結果として、同じタスクでもモデル選択だけで単位作業あたりの推論コストが約86倍変わる実態が明らかになった。
実験では合成サポートチケットを各モデルに処理させ、合計コスト・合格率・処理時間の3軸でスコアを付けた。最安のGPT-5 Nanoは3分程度で処理を終え、コストパフォーマンスで突出した。一方、最高額のGPT-5.5 Proは100件の処理に8.34ドル、57分を要した。
AIエージェントが企業で本格稼働する時代、モデル選びはもはや精度だけで決める時代ではない。トークン消費量と推論コストを意識したトークンエコノミクスの視点が不可欠になる。この記事ではNeonの公開ベンチマークを基に、主要な発見とコスト試算を解説する。
AIエージェント時代に浮上するトークンエコノミクス

トークンとは、LLM(大規模言語モデル)がテキストを処理する際の最小単位だ。英語でおおよそ4文字、日本語では1文字から数文字が1トークンに相当する。AIのAPI料金はこのトークン数に応じて決まるため、同じタスクでもモデルによってトークン消費量が大きく異なる。
Neonの検証によると、エージェントが企業で担う業務が増えるほど、トークン消費は人件費に次ぐコスト項目に成長する見込みだ。Neonはこのコスト管理の概念を「トークンエコノミクス」と呼び、モデル選定の重要性を強調している。ソフトウェア企業ではエンジニアがコーディングエージェントを日常的に使うため、モデルの効率差がそのまま大きな費用差として顕在化する。
Neonの見解では、大企業ほどこの差は深刻になる。数百人のエンジニアを抱える企業では、月間の推論コスト差が数十万円から数百万円規模に達する。モデル選びを「カタログ価格だけで判断する」ことは、もはや現実的な選択ではなくなっている。
42モデルを同一タスクで検証した実験設計

サポートチケット100件という選定理由
Neonのチームは「現実世界の雑多な状況を反映する」タスクとして、合成サポートチケット100件の返信を各モデルに依頼した。チケットは請求、製品質問、セキュリティインシデント、アカウントアクセス、返金の5つのシナリオを持つ。それぞれに顧客のトーンが5種類(直接表現、緊急、不満、次のステップ要求、非技術者向け)用意され、合計20シナリオを構成する。
各モデルには同じシステムプロンプトとJSONレスポンス形式、アカウントコンテキスト、ポリシー注記が渡された。この設計により、モデル間で条件を完全に揃えたうえで、コストと品質を比較できる。
7項目の合格基準
Neonは「使える回答」と「使えない回答」を区別するため、7つのチェック項目を設定した。JSONが必須4フィールドで正しくパースできること、分類が期待カテゴリと一致すること、選択アクションがポリシーで許可されていること、エスカレーション判断が正しいこと、顧客返信が1語から120語であること、必須ポリシー用語が含まれること、禁止された約束や主張がないこと、である。
例えば請求系チケットでは「請求書を説明しstorageに言及する」ことが合格条件になり、勝手にクレジットを発行すると不合格になる。セキュリティ系では「適切にエスカレーションする」行動が必須で、「心配いりません」と返すだけでは失敗扱いだ。この基準が、LLMの単なる応答速度や流暢さではなく、実務で使える精度を測る分離線になっている。
実験は合成サポートチケットを使い、全モデルに同一条件でタスクを実行させた。合計コストと合格率、処理時間をそれぞれ計測している。
Neonブランチを活用した技術設計
ベンチマークの実行基盤にはNeonのブランチ機能が用いられた。ブランチとは、DB環境をgitブランチのように瞬間的に複製する仕組みだ。モデルごとに1つのNeonブランチを作成し、それぞれに専用のAI Gatewayホストを割り当てることで、モデルとエンドポイントの対応を明確に保った。
neon branches create \
--project-id "$PROJECT_ID" \
--parent "$PARENT_BRANCH" \
--name "model-gpt-5-nano" \
--no-compute--no-compute フラグは不要なPostgresコンピュートを起動せず、AI Gatewayのエンドポイントだけを使うための指定だ。各ブランチにはAI Gatewayホストが自動で付与され、mainブランチで作成したクレデンシャルが子ブランチにも適用される。これにより、42モデル分のインフラを極めて低コストで構築できた。
データ層はLakebase Postgresが担い、ベンチマーク実行記録、モデルスナップショット、推論結果を管理する。WebアプリはNext.js 15、React 19、TypeScriptで構築され、Rechartsで可視化、Tailwind CSSでスタイリング、Zodでスキーマ検証を行った。自動化はGitHub Actionsが担い、Vercelにデプロイされる。集計結果はJSONスナップショットとしてもコミットされ、レビュー可能な形で公開されている。
ベンチマークが明らかにした主要な結果

コストと合格率の対照的な顔ぶれ
Neonの検証で最安を記録したのはGPT-5 Nanoだった。単位あたりの使用可能コストが全モデル中最も低く、処理時間も約3分と高速だった。コストと速度を両立する「バランス型」と言える。最速はLlama 3.1 8B Instructで1分18秒だったが、合格率は100件中34件と低く、速度だけで判断すると実務には耐えない。
一方、最高額はGPT-5.5 Proで、100件の処理に8.34ドルかかり、所要時間も57分と群を抜いて遅かった。トークンを最も消費したのはQwen3.5 122B-A10Bで、合格率も100件中35件と振るわない。合格率の最高はGPT-5.3 Codexで、100件中82件を一発合格した。
主要な結果はコストと合格率の両面で性格が異なる。消費トークンはQwen3.5 122B-A10Bが最多で、合格は100件中35件にとどまった。この組み合わせは「カタログ価格が低くても実際のユニットコストは高い」というトークンエコノミクスの落とし穴をよく示す。
更新で追加された新モデル
Neonは初期公開後に3モデルを追加し、ベンチマークは45モデルに拡大された。GPT-6 Astra、Claude Fable 5.1、GLM-5.3 Flashである。主要ランキングに大きな変動はなかったが、GPT-6 Astraは100件中67件合格で45モデル中28位、コストは45モデル中40位と、話題の水準からは控えめな結果だった。
モデル選択で推論コストが86倍変わる

GPT-5.6 SolとClaude Fable 5の直接比較
NeonはOpenAIとAnthropicの現行フラッグシップ同士も直接比較した。合格率はGPT-5.6 Solが69件、Claude Fable 5が68件とほぼ互角だった。しかしコストはSolが34,663トークンで0.535ドル、Fableが57,010トークンで1.59ドルと、単位あたり約3倍の差がついた。所要時間もFableが2.3倍長い。
GPT-5.6 SolとClaude Fable 5は合格率でほぼ並んだが、単位作業あたりのコストではSolが3倍優位という結果になった。モデル選定で精度以外の要素が重要な理由がここにある。
企業規模別のコスト試算
Neonはこの結果を現実の企業規模に当てはめた。エンジニア1人が1日あたり100万トークンのエージェントタスクを1件実行する前提で、月間トークン消費を推計した。入力8割、出力2割、キャッシュや割引なしという保守的条件だ。
その結果、モデルにLlama 3.1 8B Instruct(3番目に安い)を選ぶか、Claude Fable 5(3番目に高い)を選ぶかで、50人のエンジニア規模なら月間1万8千ドルの差が生まれた。500人規模なら18万8千ドル、つまり約86倍の価格差になる。同じ仕事を同じ精度でこなすなら、この差は純粋な利益になる。
ただしNeonはこの試算を「モデル選びだけの話ではない」と補足する。合格率や処理時間、出力品質も含めた総合評価が必要で、単純に安いモデルを選ぶことが正解とは限らないことを認めている。あくまで「選択が巨大なコスト差を生む」という示唆が核心だ。
オープンウェイトとプロプライエタリの比較

中央値で見たコスト差
オープンウェイトモデルとは、モデルの重みが公開されて誰でも検証・再利用できるタイプを指す。一方、プロプライエタリモデルは重みが非公開で、API経由でのみ利用できる。Neonのベンチマークでは、オープンウェイトモデル11種のコスト中央値が約0.022ドル、プロプライエタリ31種の中央値が約0.281ドルだった。約12.7倍の開きがある。
合格率の中央値はプロプライエタリが69%、オープンウェイトが61%だった。この差は比較的小さく、用途次第ではオープンウェイトの選択が現実的になる場面が多い。使用可能トークンあたりのトークン数も、オープンウェイトが552個(中央値)、プロプライエタリが925個だった。
個別モデルのばらつき
ただし中央値だけ見ると危険だとNeonは警告する。Llama 3.1 8B Instructは高速で安価だが合格率が最低レベル、Qwen3.5 122B-A10Bはカタログ価格が低いのにトークン消費が最多、Gemma 3 12Bは低コストと合格率64%を両立した。個別の特性がまちまちなため、一律に「オープンウェイトが安い」と決めつけるのは誤りだ。
このばらつきこそが、Neonが公開したインタラクティブなベンチマークの価値だ。モデルのカタログ価格ではなく、実際のワークロードで何が起きるかを自分の目で確認できる。Neonはこのベンチマークを最新モデルで継続更新する方針を示している。
この記事のポイント
- Neonが42から45のAIモデルを対象に、サポートチケット100件の処理コストと品質を同一条件で検証した
- 最安はGPT-5 Nanoで約3分で処理、最高額はGPT-5.5 Proで8.34ドル、57分を要した
- 合格率はGPT-5.3 Codexが82件で最高、Llama 3.1 8B Instructは34件で最低だった
- モデル選択だけで推論コストが約86倍変わり、500人規模なら月間18万8千ドルの差になる
- カタログ価格が安くてもトークン消費が多いモデルがあり、実測評価が重要である

・ 複数業界における17年間のデジタルビジネス開発経験
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・ 17年間にも及ぶ、Eコマース長期運営経験
・ 幅広い業界でのSEO最適化の豊富な経験
