
Amazon RedshiftにGraviton搭載のRGインスタンス登場、データレイククエリエンジンも統合
Amazon Redshiftに新しいインスタンスファミリー「RG」が追加された。AWSのArmベースプロセッサ「Graviton」を採用し、データウェアハウスのワークロード処理を従来のRA3インスタンスと比較して最大2.2倍高速化する。vCPUあたりの価格は30%引き下げられ、分析コストの大幅な圧縮が見込める。
さらに、このRGインスタンスではデータレイクへのSQLクエリ実行機能がクラスタノードに統合された。Apache Icebergテーブルへのクエリは最大2.4倍、Apache Parquetへのクエリは最大1.5倍高速化している。これまで別途必要だったRedshift Spectrumと、1TBあたり5ドルのスキャン料金が不要になる点も見逃せない。
BI(ビジネスインテリジェンス)ダッシュボードやAIエージェントによる大規模なクエリ実行が日常化する中、今回の刷新はパフォーマンスとコストの両立をこれまで以上に高い水準で実現するものだ。
RGインスタンスの概要と主要な性能向上

このデモは従来のRA3構成と新RG構成の違いを視覚化したものだ。RGインスタンスではデータレイククエリ機能が完全に統合され、外部のSpectrum層に依存しないアーキテクチャに変わっている。
Gravitonプロセッサがもたらす価格性能比の改善
RGインスタンスの中核にあるのは、AWSが設計したArmアーキテクチャのカスタムプロセッサ「Graviton」だ。x86系のチップと比べて電力効率が高く、同じ電力あたりの処理量を引き上げられる特徴がある。AWSのサービスにおけるGraviton採用はEC2やRDSなどで既に広がっており、Redshiftでもその恩恵を受けられるようになった。
具体的なインスタンスタイプとしては、エントリー向けの rg.xlarge(4vCPU、32GBメモリ)と、本番ワークロード向けの rg.4xlarge(16vCPU、128GBメモリ)が用意された。従来の ra3.xlplus から rg.xlarge への移行では、vCPU数とメモリ容量は同等だが処理性能自体が大きく向上する。一方、ra3.4xlarge から rg.4xlarge への移行ではvCPU数が12から16へ約1.33倍、メモリも96GBから128GBへと拡張され、単純なスペック面でも上積みがある。
AWS News Blogの記事によれば、これらの新インスタンスはデータウェアハウス処理でRA3比最大2.2倍の性能を達成しているという。企業が日常的に利用するBIダッシュボードの応答速度や、ETL処理のバッチジョブ実行時間が大幅に短縮される計算だ。
データレイククエリエンジン統合の実質的な意味

RGインスタンスで最も構造的な変化が起きたのは、データレイククエリの実行方式だ。これまではS3に置かれたデータレイクに対してSQLで分析する際、Redshift Spectrumという別のサービス層を経由する必要があった。このSpectrum層はクラスタの外部で動作するため、VPCの境界を越えたデータのやり取りが発生し、1TBあたり約5ドルの追加スキャン料金が積み上がる仕組みだった。
Spectrumが不要になったことで変わる運用とコスト
RGインスタンスでは、データレイクへのクエリをクラスタ上のノードで直接実行する。Spectrum層を経由しないため、クエリがVPCの内側に留まり、IAMロールも既存のものをそのまま使える。セキュリティ境界がシンプルになるだけでなく、データレイク利用時の通信レイテンシも低減する。
コスト面では、Spectrumのスキャン料金がゼロになる影響が大きい。例えば月間10TBのデータレイクをスキャンするワークロードの場合、Spectrumだけで月50ドルの追加コストが発生していた。RGインスタンスへの移行後は、このコストが完全に消える。データレイク分析の規模が大きい企業ほど、削減額は積み上がる計算だ。
既存の外部テーブルやスキーマ定義、クエリ構文はそのまま動作するため、アプリケーションコードの修正は不要だ。移行に伴う手間を最小限に抑えつつ、性能向上とコスト削減の両方を手に入れられる設計になっている。
AIエージェント時代を見据えた設計思想

今回のRGインスタンス投入の背景には、AIエージェントによるデータウェアハウス利用の急増がある。自律的に目標を追求するAIエージェントは、人間のアナリストとは比較にならない頻度でクエリを発行する。AWS News BlogのChanny Yun氏は、AIエージェントのクエリ量が「典型的な人間の利用規模を矮小化する」と表現している。
大量の低レイテンシSQLクエリを安定的に処理するには、1クエリあたりのコストを大幅に下げつつ、応答速度も維持しなければならない。vCPU単価で30%のコストダウンを実現しつつ、処理そのものを高速化したRGインスタンスは、まさにこの要求に応える製品だと言える。2026年3月に発表された新規クエリの最大7倍高速化と組み合わせることで、AIエージェントがリアルタイムにデータを参照しながら判断するワークロードにも耐えうる基盤が整った。
移行手順と現在の利用可能リージョン

RGインスタンスへの移行は、AWSマネジメントコンソール、CLI、APIのいずれからでも実行できる。データレイククエリエンジンはデフォルトで有効化されており、クラスタ作成後すぐに統合環境を利用できる。
移行パスは大きく2つある。1つ目は弾力的なリサイズで、互換性のある構成であれば10〜15分のダウンタイムでインプレース移行が完了する。2つ目はスナップショットと復元で、既存のRA3クラスタからスナップショットを取得し、RGインスタンスの新規クラスタとして復元する方法だ。移行時に構成を変更したい場合に適している。
2026年5月時点で、RGインスタンスは以下のAWSリージョンで利用可能だ。米国東部(バージニア北部、オハイオ)、米国西部(北カリフォルニア、オレゴン)、アジアパシフィック(香港、ハイデラバード、ジャカルタ、マレーシア、メルボルン、ムンバイ、大阪、ソウル、シンガポール、シドニー、台湾、東京)、カナダ(中部)、欧州(フランクフルト、アイルランド、ミラノ、ロンドン、パリ、スペイン、ストックホルム)、南米(サンパウロ)と、主要リージョンをほぼ網羅している。東京リージョンも含まれているため、国内のワークロードにも即座に適用可能だ。
実務者が押さえるべき導入判断のポイント

RGインスタンスは確かに魅力的だが、導入にあたってはいくつか確認すべき点がある。まず、オンデマンドインスタンスとリザーブドインスタンスの両方が提供されているため、長期的な利用が見込めるならリザーブドインスタンスによるコスト最適化を検討したい。AWS料金計算ツールで自社のワークロードパターンに基づいたシミュレーションを行うのが確実だ。
次に、Spectrumに依存していた既存のETLパイプラインや外部ツールとの統合に問題がないか、事前に検証環境でテストすることを推奨する。クエリ構文や外部テーブル定義は互換性が保たれているが、パフォーマンス特性が変わるため、実行計画の変化によって一部のクエリで想定外の挙動が生じる可能性はゼロではない。
最後に、データレイクとデータウェアハウスの両方を1つのインスタンスファミリーで処理できるようになったことで、アーキテクチャの簡素化と運用負荷の低減が見込める。特にデータレイクの分析規模が拡大傾向にある企業や、AIエージェントの本格導入を検討しているチームにとって、RGインスタンスへの早期移行は競争力の源泉になりうる。
この記事のポイント
- RGインスタンスはGraviton搭載によりRA3比最大2.2倍の性能とvCPU単価30%削減を両立
- データレイククエリエンジンが統合され、Spectrumと1TBあたり5ドルのスキャン料金が不要に
- Apache Icebergで最大2.4倍、Parquetで最大1.5倍のクエリ高速化を達成
- BIダッシュボードやAIエージェントによる大量クエリを低コストで処理できる基盤が整った
- 移行は弾力的リサイズまたはスナップショット復元で対応、既存クエリの修正は不要

・ 複数業界における17年間のデジタルビジネス開発経験
・ ウェブサイト開発のためのHTML、PHP、CSS、Java等の実用的知識
・ 15ヶ国語対応の多言語SaaSの開発経験
・ 17年間にも及ぶ、Eコマース長期運営経験
・ 幅広い業界でのSEO最適化の豊富な経験
