
Amazon Bedrock AgentCoreにランタイムインスタンス発表、本番AIエージェント向け永続コンピューティング
AWSは2026年8月6日、Amazon Bedrock AgentCoreに新たな計算オプション「ランタイムインスタンス」を追加した。AIエージェントのプロトタイプを本番環境に移行する際、長時間の状態維持やマルチエージェント協調、GPUアクセスといった要求に応える、永続的なマネージドインフラだ。
従来のAgentCore Runtimeでは、マイクロVM上で最大8時間のステートフルな呼び出しが可能だったが、日をまたぐワークフローやOSレベルへの直接アクセスが必要なシナリオには限界があった。ランタイムインスタンスは、14日間のセッション永続化とEC2ベースのフルマネージド環境を提供し、本格的なエージェント運用基盤を実現する。
ランタイムインスタンスが解決する本番運用の3つの課題

AIエージェントをプロダクションに投入するとき、開発者はインフラの壁にぶつかる。ランタイムインスタンスはその3つの主要な課題を解消する。
長時間の状態維持とセッション永続化
通常のサーバーレス実行環境では、処理が終わるとメモリやストレージが破棄される。エージェントが数時間〜数日にわたる複数ステップのワークフローを扱う場合、途中結果を外部ストレージに退避させるなどの手間が生まれる。ランタイムインスタンスでは、最大14日間の共有セッションストレージが標準で提供される。セッションは停止・再開が可能で、アイドル期間のコストを抑えながら、必要なときに前回の状態から処理を再開できる。
マルチエージェントの同一ホスト協調
現実の複雑なタスクは、コード生成・レビュー・テスト・デプロイといった複数の専門エージェントが連携して初めて完結する。ランタイムインスタンスでは、複数のエージェントを同一のEC2ホストにデプロイし、共有ファイルシステムを介して直接データをやり取りできる。API呼び出しやネットワーク越しのストレージを挟むオーバーヘッドがなく、シームレスな協調が可能だ。
GPUとOSへの直接アクセス
画像認識や動画解析、重い数値計算を伴うエージェントはGPUを必要とする。ランタイムインスタンスはGPUアクセラレーテッドなインスタンスタイプに対応し、OSレベルへのアクセスも提供する。コードのコンパイル、セキュリティスキャン、GUI自動操作など、コンテナだけでは実現しにくいタスクをエージェントに任せられる。
コードライターとレビュアーの連携を実際に見る

公式デモでは、自然言語でPythonコードを生成する「コードライターエージェント」と、生成されたコードのバグやスタイルをレビューする「コードレビュアーエージェント」を同じランタイムインスタンス上にデプロイし、協調動作させる手順が紹介された。
このデモのポイントは、2つのエージェントが完全に独立したアプリケーションでありながら、セッションIDで紐づく共有ディレクトリを経由してファイルをやり取りする点にある。外部APIを呼び出すことなく、同一ホストのファイルシステム上で完結するため、レイテンシが極めて小さい。
/tmp/agentcore-session/{session_id}/code.py に書き込む各エージェントはStrands Agentsフレームワークと好みのモデル(デモではClaude Sonnet)を使い、単一のPythonファイルに @app.entrypoint デコレータを付けるだけで実装できる。パッケージングもzipまたはコンテナイメージで済み、インフラ管理の負担は大きく軽減される。
セットアップから初回実行までの流れ

ランタイムインスタンスの利用は、大きく3つのステップで完了する。AWSマネジメントコンソールを使う場合の手順を簡潔にまとめた。
- 容量プロバイダの作成 、 エージェントが稼働するEC2インスタンスのスペックとネットワークを定義する。OS(ARM64またはx86_64)、インスタンスタイプ、VPC、サブネット、セキュリティグループを設定。ストレージはgp3ボリュームがデフォルトで用意される。
- ランタイムの作成とエージェントのデプロイ 、 コンピュートタイプに「Instances」を選び、先ほど作成した容量プロバイダを紐づける。エージェントのコードをzipでアップロードし、ランタイム(Python 3.11〜3.14)とエントリポイントを指定。IAMロールもコンソールが自動生成する。
- エージェントの呼び出しと協調 、 デプロイ完了後、コンソールの「Runtime playground」からテスト用のJSONペイロードを送信できる。セッションIDを明示的に指定し、同じIDで別のエージェントを呼び出せば、両者が同一の共有ストレージを使ってシームレスに連携する。
容量プロバイダは一度作成するとOSやインスタンスタイプの変更ができない。本番用と検証用を分けるなど、事前の設計が求められる。
主要スペックと料金モデル

- 対応OS 、 Linux(ARM64、x86_64)。Windowsは現時点ではサポート外
- セッション持続 、 最大14日間。停止・再開が可能で、アイドル中のコスト削減に有効
- ランタイム 、 Python 3.11〜3.14(ネイティブコードに対応)。コンテナイメージのデプロイもサポート
- GPU 、 対応インスタンスタイプを選択すれば、GPUを使った推論や計算が可能
- 統合 、 既存のAgentCore API、IAM、監視機能と完全互換。マイクロVMとのハイブリッド構成も取れる
- 料金 、 使用したEC2インスタンスの標準料金に、AgentCoreオーケストレーションの管理手数料が加算される
- リージョン 、 米国東部(オハイオ、バージニア北部)、米国西部(オレゴン)、アジアパシフィック(ムンバイ、シンガポール、シドニー、東京)、欧州(フランクフルト、アイルランド)
マイクロVMベースの従来のAgentCore Runtimeとランタイムインスタンスは、同じAPIセットで併用できる。軽量なオーケストレーターエージェントをマイクロVM側に置き、重い処理や永続状態が必要なワーカーエージェントをインスタンス側に委譲するハイブリッド構成が、現実的なアーキテクチャパターンとして紹介されている。
始め方と最初の一歩

ランタイムインスタンスを試すには、Amazon Bedrock AgentCoreのドキュメントに掲載されているランタイムインスタンスの公式ガイドを参照し、容量プロバイダの作成から始めるのが近道だ。コンソールの左ナビゲーションから「Runtime」→「Capacity providers」を選び、今回紹介した手順に沿って設定すれば、最初のエージェントデプロイまで数分で到達できる。
この記事のポイント
- ランタイムインスタンスは、最大14日間のセッション永続化とEC2ベースのマネージド環境を提供するAgentCore新オプション
- 同一ホスト上でのマルチエージェントファイル共有により、APIを介さないシームレスな協調が可能
- GPUインスタンスやOS直接アクセスが必要な高度なエージェントワークロードに対応
- 従来のマイクロVMと組み合わせたハイブリッド構成で、軽量なオーケストレーションと重いバックエンド処理を分離できる

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