
Prisma Compute vs Vercel、料金比較でわかるコスト差の全容
TypeScriptアプリのホスティング先を選ぶとき、Prisma ComputeとVercelが候補に挙がる。両者とも従量課金でゼロスケールするため、アイドル時のコストはかからない。だが料金単価と課金項目の設計思想が異なり、同じ負荷でも請求額に2倍以上の開きが出るケースがある。Prisma Computeはパブリックベータ中で現在無料、ここで示す料金は将来の本番適用が予定されている参考値だ。
本記事ではPrisma Blogが2026年7月1日に公開した料金比較をもとに、各メーターの単価差、20Mリクエストの実ワークロード試算、そしてなぜ同じ負荷で請求が変わるのかを掘り下げる。Vercelの価格にまつわる開発者の声も紹介し、自社のアプリに当てはめるときの判断材料を提供する。
料金体系の基本比較

両サービスともリクエスト数、メモリ消費、CPU時間、外向き帯域を課金対象とするが、単価には明確な差がある。Prisma Computeの価格はベータ版後の予定値であり、変更の可能性がある点に注意が必要だ。
リクエスト単価ではVercelが優位だが、サーバーワークの大半を占めるメモリとCPU、そして帯域ではPrisma Computeが大幅に低い単価を提示している。さらに開発者シートやエッジリクエストといったワークフローコストがPrismaには存在しない点が、後々の請求に大きく響く。
実ワークロードでのコスト試算

月間2000万リクエスト、常時2GBメモリ使用、実CPU 300vCPU時間、外向きトラフィック2TB、開発者1名という条件で両者を比較する。Vercel Proには1TBの帯域無料枠が含まれる点を織り込んだ試算だ。
メモリ (1460 GB時) $8.76
CPU (300時間) $19.20
外向き帯域 (2TB) $50.00
シート (1名) $0.00
合計 ~$98
メモリ (1460 GB時) $15.48
CPU (300時間) $38.40
外向き帯域 (2TB中1TB無料扱い) $150.00
シート (1名) $20.00
合計 ~$236
この試算ではエッジリクエストを除外し、開発者1名で固定している。実際にはチーム人数が増えるほどVercelのシート料金が積み上がり、格差はさらに拡大する。一方で外向き帯域がごく小さく、リクエスト単価の差が支配的になるシナリオでは両者の総額は接近する。
料金差を生む構造的要因

なぜ同じ負荷でこれほどの差がつくのか。理由は課金モデルの設計思想とアーキテクチャの2軸に集約される。
ワークとワークフローの分離
ホスティング料金は「アプリが稼働中に行う実作業(ワーク)」と「デプロイやプレビューなど開発プロセス(ワークフロー)」に分けられる。Prisma Computeはリクエスト、メモリ、CPU、帯域というワークのみに課金し、開発者シートやエッジリクエストといったワークフロー項目は一切請求しない。Vercelはワークに加え、シート料金とエッジリクエストをワークフローとして課金する。
Prisma Compute 課金
Vercel 課金
Prisma Compute 無料
Vercel 課金
Prisma Blogの著者Martin Janse van Rensburg氏は、AIエージェントがコードの変更→テスト→プレビューを繰り返す開発スタイルでは、Vercelのワークフロー課金が急速に膨らむリスクを指摘している。一方PrismaではデプロイのたびにイミュータブルなバージョンとプレビューURLが作られるが、それらに追加料金は発生しない。
データベース隣接配置によるエグレス抑制
Prisma Computeのアーキテクチャ上の特徴として、Prisma Postgresと同じインフラ上で動作する点が挙げられる。通常、アプリケーションサーバーとデータベースが別ベンダーや別リージョンにある場合、両者間の通信が外向き帯域として課金対象になる。Prisma Computeはデータベースとの通信が同一基盤内で完結するため、こうした隠れエグレスコストが発生しない。
アプリ-DB間通信が外向き帯域として課金
同一基盤内で通信が完結。エグレスコストなし
データベースとの通信量が多いアプリほど、この差は請求額に明確に現れる。大量のクエリを発行するAPIサーバーなどでは、Vercel+外部DB構成のエグレス費用が無視できなくなる。
開発者の声と注意点

VercelのFluid Computeは適合するワークロードでは大幅な削減効果を発揮する。リンク短縮サービスdub.coの創業者Steven Tey氏は、Xで「Vercelの利用タブが壊れたのかと思った」と述べ、Fluid有効化後に請求が50%減少したと報告している。
しかし、一部の開発者からは予想外の料金跳ね上がりに関する声も上がっている。Redditのr/nextjsスレッドでは、あるCTOがフロントエンドのみのNext.jsアプリの月額請求が「100ドル未満から800ドル超」に急増し、Cloudflare Workersへ移行後は「同じトラフィックで20ドル未満」になったと述べた。同スレッドでは「Vercelのフロントエンドは素晴らしく安いが、バックエンドは高すぎる」という見方や、Deployment Protection Exceptionsで150ドル請求された事例も共有されている。
Fluid Computeを有効化 → 請求が50%減少
フロントエンドのみのNext.jsアプリ → 月$100未満→$800超に急増
Cloudflare Workers移行後 → 同トラフィックで$20未満
Prisma Computeはパブリックベータの段階であり、実際の課金が始まっていないため、利用者からの本格的なフィードバックはまだない。Prisma Blogの著者は、フィードバックが集まり次第、この比較記事を更新する意向を示している。
この記事のポイント
- Vercelはリクエスト単価で優位だが、メモリ、CPU、帯域ではPrisma Computeが大幅に安い予定価格を提示している
- 月間2000万リクエストの試算ではPrisma Computeが約98ドル、Vercel Proが約236ドルと2.4倍の開きがあった
- 請求差の主因はワークフロー課金(シート料金、エッジリクエスト)とデータベース隣接によるエグレス抑制
- VercelのFluid Computeは適切なワークロードで削減効果を発揮する一方、トラフィックに比例しない請求急増の事例も報告されている
- Prisma Computeはまだベータ版であり、本番利用のフィードバックを踏まえた判断が今後必要になる

・ 複数業界における17年間のデジタルビジネス開発経験
・ ウェブサイト開発のためのHTML、PHP、CSS、JavaScript等の実用的知識
・ 15ヶ国語対応の多言語SaaSの開発経験
・ 17年間にも及ぶ、Eコマース長期運営経験
・ 幅広い業界でのSEO最適化の豊富な経験
