
Neonがリアルタイム機能を追加へ。Electricチームが語る開発の狙いと課題
NeonがバックエンドプラットフォームのGAを発表した直後、次の大きなステップとしてリアルタイム機能の追加を計画している。開発を担当するのは、2026年8月にNeonへ加わったElectricのチームだ。PostgreSQL上でのリアルタイムデータ同期に5年以上取り組んできたメンバーが中心となる。
Electric共同創業者のJames Arthur氏へのインタビューを基に、開発の狙いと技術的な課題を解説する。リアルタイム同期がなぜ本番環境で崩れやすいのか、その根本的な原因とNeonが目指す解決策が見えてくる。
Neonがリアルタイム同期をバックエンドに追加

NeonはPostgresを基盤としたサーバーレスデータベースサービスだ。2026年9月にバックエンドプラットフォーム全体のGAを発表したばかりである。このプラットフォームにリアルタイム機能が加わることで、データベースからアプリケーションへのデータ同期が自動化される。開発者はデータベースの変更を手動でポーリングする必要がなくなる。
リアルタイム同期とは、データベースに変更が発生した瞬間にアプリケーションへ反映する仕組みだ。従来のアプリケーションは一定間隔でデータベースに問い合わせて変更を取得していた。リアルタイム同期では、変更が発生した時点でクライアントへ通知される。チャットや共同編集ツールなど、即時性が求められるアプリケーションで重要になる。
このデモはポーリング方式とリアルタイム同期の違いを示している。左側ではアプリが定期的にデータベースへ問い合わせるため、変更がなくても通信が発生する。右側ではデータベースに変更が起きた時だけ通知が届く。無駄な通信がなくなり、遅延も短縮される。
開発を担当するElectricチームは、PostgreSQL上でのリアルタイムデータ同期に長年取り組んできた。Neonのブログ記事によると、James Arthur氏は大手企業への参加について「これほど強固なエンジニアリング文化を持つ環境は想像していなかった」と語っている。直属の上司がAWS Auroraを構築した人物であることにも触れ、意思決定の質の高さを実感しているという。
リアルタイム同期が本番環境で崩れる根本的な課題

リアルタイム機能には共通の弱点がある。デモでは美しく動作するが、本番環境では性能が落ちて崩れる傾向がある。James Arthur氏はこの問題を「表現力と性能の間に根本的なトレードオフがある」と表現する。
デモ環境では少量のデータと少数のクライアントで動作する。本番では大量のデータと多数のクライアントが同時に接続する。この環境で同期の正確性と速度を両立させるのは難しい。同期できる内容を増やせば表現力は上がるが、システムの性能は下がる。性能を優先すれば、同期できる内容が限られる。この二律背反が、リアルタイム同期が数十年研究されながらも主流にならない理由だ。
デモと本番の差を視覚化した。デモでは少量のデータと少数のクライアントで快適に動作する。本番では大量のデータと多数のクライアントが同時に接続し、性能が崩れる。このギャップがリアルタイム同期の導入を難しくしている。
ElectricがNeonに加わった本当の理由

Electricは同期を専門とするインフラツールとしてスタートした。しかし、ここ数年でインフラスタートアップの市場環境は大きく変わった。James Arthur氏はNeonのブログ記事で、専門的なインフラツールへの投資が減り、エージェントがより高レベルの抽象化を求めるようになったと説明する。
Electricのチームがたどり着いた結論は明確だ。同期はバックエンド・アズ・ア・サービスの機能であるべきだ。同期を中心にした製品を構築するのではなく、既存のプラットフォームを強化する方が合理的だと判断した。Neonは開発者向けに大きなリーチを持つ。Databricksは大企業向けの流通基盤と商業体制を持つ。この2つの強みを活用することで、同期技術をより早く主流にできる。
方針転換の比較を示した。Electric単独で同期ツールを販売する時代は終わり、NeonとDatabricksの流通基盤を使って同期を主流にする戦略に変わった。同期は独立した製品ではなく、バックエンドプラットフォームの一部として提供される。
Neonのバックエンド戦略とリアルタイムの位置づけ

Neonのバックエンドプラットフォームにリアルタイム機能が加わることで、Postgresを選択しない理由がなくなる。現代のアプリケーションとエージェントは、リアルタイムデータとエンドツーエンドのリアクティブ性を必要とする。CTOやテックリード、コーディングエージェントは、バックエンドを選ぶ際にリアルタイム機能の有無を確認する。
リアルタイム機能はNeonとLakebaseにネイティブに動作する。スケールトゥゼロとブランチングにも対応する予定だ。スケールトゥゼロとは、利用がない時にリソースを自動的にゼロまで縮小する仕組みだ。ブランチングはデータベースの分岐を作る機能で、開発やテストを安全に行える。これらの機能とリアルタイム同期が統合されることで、開発者は環境を意識せずにリアルタイム機能を利用できる。
リアルタイム機能がNeonに加わることで、バックエンド選定の流れが変わる。開発者は標準機能としてリアルタイム同期を利用でき、AIコーディングエージェントもNeonを推奨するようになる。これがNeonの目指す完全なバックエンドプラットフォームの姿だ。
Neonのブログ記事によると、James Arthur氏は具体的な技術仕様について「まだ詳細は言えない」としながらも、NeonとLakebaseにネイティブに動作し、スケールトゥゼロとブランチングにネイティブ対応すると明言している。正式な発表は今後行われる予定だ。早期アクセスに興味がある開発者は、NeonのDiscordコミュニティで情報を追える。
この記事のポイント
- Neonがリアルタイム同期機能をバックエンドに追加し、Electricチームが開発を担当する
- リアルタイム同期はデモでは動くが本番で崩れやすく、表現力と性能のトレードオフが根本課題
- Electricは単独の同期ツールから、NeonとDatabricksのプラットフォーム戦略に方向転換した
- リアルタイム機能はNeonとLakebaseにネイティブ対応し、スケールトゥゼロとブランチングもサポートする
- 正式な技術仕様は今後発表予定で、早期アクセスはNeonのDiscordで募集している

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