
GoogleがFAQリッチリザルト廃止、AhrefsがスキーマのAI引用価値を否定
2026年5月、スキーママークアップの価値に冷や水を浴びせる二つの動きが重なった。GoogleはFAQリッチリザルトを廃止し、Ahrefsは構造化データがAI引用を増やさないとするレポートを公開した。
この連続パンチは、SERPでの視認性向上とAI引用獲得というスキーマの二大セールスポイントを直撃する。本記事では、今回の動きが持つ意味と、データが示すスキーマの未来像を掘り下げていく。
Googleがスキーマ特典を絞り込んだ5年間

FAQリッチリザルト廃止の最終決定
2026年5月12日、GoogleはFAQページ向けの構造化データを正式に廃止した。FAQリッチリザルトは検索結果上に質問と回答を展開表示する機能で、多くのサイトがクリック率向上のために導入してきた。Googleはこの廃止について「検索結果を簡素化し、ユーザーにとって本当に価値のある情報だけを表示するため」と説明している。
この決定は突然ではない。2023年8月にはFAQリッチリザルトの表示対象を政府機関や医療サイトなどの権威的サイトに限定していた。その時点で、一般的な商業サイトやブログでのFAQ表示はすでに停止されていた。今回の完全廃止は、その延長線上にある最終決定といえる。
GoogleのJohn Mueller氏はReddit上で「マークアップの種類は登場と消滅を繰り返すが、ごく一部の重要なものだけは残り続ける」とコメントしている。これはスキーマ全般を否定する発言ではないが、特定のリッチリザルトを戦略の柱に据えることのリスクを暗に示している。
可視的報酬のパターン
過去5年間の動きを振り返ると、明確なパターンが浮かび上がる。新しい構造化データが導入される。SEO業界がその使い方を検証し、広く導入する。数年のうちにGoogleがその表示特典を縮小または廃止する。そして業界は次の新しいスキーマタイプに注目を移す。
重要なのは、マークアップ自体が無効になるわけではない点だ。Googleのシステムは引き続きFAQ構造化データを読み取り、ページ内容の理解に活用する。しかし検索結果上での目に見える特典、つまりリッチリザルト表示という形での直接的なSEO効果は消滅した。
Ahrefsレポートが示したAI引用とスキーマの関係

1,885ページのA/B比較から見えたもの
Ahrefsは2026年5月16日、構造化データとAI引用の関係を検証した大規模レポートを公開した。調査対象はJSON-LD形式のスキーマを追加した1,885のウェブページ。各ページに対し、スキーマを追加しなかった同条件のコントロールページを用意し、Google AI Overviews、Google AI Mode、ChatGPTの3つのAIシステムで引用数の変化を計測した。
結果は次のとおりだ。
- Google AI Modeで引用が2.4%増加
- ChatGPTで引用が2.2%増加
- Google AI Overviewsで引用が4.6%減少
AI ModeとChatGPTの増加率は統計的な誤差の範囲内であり、スキーマの効果とは言い切れない数値だった。AI Overviewsの減少は統計的に有意だったが、Ahrefs自身が「この減少をスキーマが原因と断定することはできない」と慎重な見解を示している。
データが明かさなかった二つの前提
この調査結果を読む上で、二つの前提を見逃してはならない。
第一に、調査対象の全ページはスキーマ追加前からすでにAI Overviewsで100件以上の引用を獲得していた。つまり、これらのページはAIシステムによって十分にクロールされ、認識され、引用されていた。まだAIに認識されていないページでスキーマがクローリングやインデックス登録を助ける可能性は、このデータでは検証されていない。
第二に、この調査では全スキーマタイプを一括りにしている。Article、FAQ、Product、HowTo、Organizationなど種類の異なるスキーマがまとめて「スキーマあり」とラベル付けされた。タイプ別の効果は未検証であり、特定の種類で引用増加が起きる可能性は否定されていない。
Ahrefsのコンテンツマーケティング責任者であるRyan Law氏はLinkedIn上で「スキーママークアップを追加すればAI検索での引用が増えるか?おそらくノーだ」と端的に総括した。Law氏は「スキーマはAI引用を改善する魔法の解決策ではない」とも付け加えている。
業界内で広がった議論の温度感

「FAQスキーマはAI訓練用だった」という仮説
今回のFAQリッチリザルト廃止に対して、業界内ではさまざまな見解が飛び交った。なかでも注目されたのが、Marie Haynes ConsultingのMarie Haynes氏が提示した仮説だ。
Haynes氏は「GoogleはAIを訓練するためにFAQデータが必要だったので、リッチリザルトという形でインセンティブを与えた。そして今、もうそのデータは不要になった」という見方を示した。この説はGoogle自身によって確認されたものではないが、FAQスキーマ導入から廃止までのタイムラインを説明する一つの解釈として、多くの実務者の関心を集めた。
GEO業界への波紋
SEOの専門家であるLily Ray氏(Amsive社、SEO・AIサーチ担当VP)はLinkedIn上で「FAQスキーマはGEOにとって重要」というフレーズが約16万8000ページで使われていることを指摘し、「SEOでスパム可能なものは必ずスパムされる」と述べた。Ray氏は2019年にFAQスキーマが初めて導入された際のMoz記事でこのサイクルを予見していた。
Yoastの創業者であるJoost de Valk氏は、この事態を「GEO業界は初期SEOの歴史を高速で再現している」と表現し、「FAQスキーマの廃止はそのサイクルが再起動した最初の具体的な証拠だ」と自身のブログで述べた。de Valk氏はSchema.orgに対して、FAQSectionという新しいタイプを提案するissueも提出している。これは「このページにFAQセクションがある」という情報と「このページ自体がFAQである」という情報を構造的に分離するための提案だ。
データが答えられなかった問い

■ スキーマタイプ別の効果(Article/Product/FAQを個別検証していない)
■ 30日を超える長期的効果
■ Bing/Copilot/Perplexity/Claude での挙動
■ JavaScript経由で注入したスキーマの効果
検証されていない経路
Ahrefsの計測対象はGoogle AI Overviews、AI Mode、ChatGPTの3システムに限られる。BingやCopilot、Perplexity、Claudeなど他のAI検索システムがスキーマをどのように扱うかは未検証だ。これらのシステムはGoogleとは異なるクローリングやパースの仕組みを持つ可能性がある。
また、searchVIU(2025年)の実験では、5つのAIシステムがページを直接取得する段階で、表示テキスト(HTML)を参照し、JSON-LDやMicrodata、RDFaなどの隠されたマークアップは使用していなかったと報告されている。これは取得段階に限った話であり、インデックス登録やエンティティ理解の段階でスキーマが役立つ可能性を否定するものではない。
計測期間とタイプ混在の問題
Ahrefsの調査期間は30日間である。スキーマ追加の効果がさらに長期間かけて現れる可能性や、スキーマ追加と同時に行われた他のページ変更の影響を分離できていない点も、解釈上の注意が必要だ。
GoogleはFAQスキーマの廃止告知の中で、構造化データを「ページをよりよく理解する」ために使い続けると述べている。この「よりよく理解する」という表現が具体的に何を指し、どのような測定可能な結果につながるのかは、現時点では明らかになっていない。エンティティ理解やソース選定への間接的な影響を測定したデータは、まだ誰も公表していない。
SEO実務者がいま取るべき戦略

■ 「スキーマを追加すればAI引用が増える」というGEOの売り文句はデータで裏付けられていない
■ Organization、Person、Article スキーマ → エンティティ記述としての価値は残る
■ 見出し構造の明確化、本文での直接的な回答提示 → AI引用に効く可能性が高い
特定スキーマへの過度な依存を避ける
まず確認すべきは、今回のFAQリッチリザルト廃止がスキーマ全体の否定ではないという点だ。Product、Review、Event、Videoといった一部の構造化データは、引き続きアクティブなリッチリザルト機能をサポートしている。Organization、Person、Articleマークアップも、エンティティやコンテンツの記述手段として価値を持ち続ける。
問題は、特定のスキーマタイプを戦略の柱にしてしまうことだ。過去5年間のパターンが示すように、Googleは普及したマークアップの表示特典を段階的に縮小する傾向がある。スキーマは検索エンジンにとっての「水道管」であり、一度敷設すれば特定の蛇口(リッチリザルト)が閉まっても、別の形で水(データ)を運び続ける可能性は残る。
AI引用を狙うならHTML構造を見直す
searchVIUの調査が示したのは、AIシステムがページ取得時にJSON-LDではなく表示テキスト(可視HTML)を参照しているという事実だ。この結果は、AI引用を増やすためにはスキーマよりもコンテンツ自体の構造が重要である可能性を示唆する。
具体的には、見出しを階層的に整理すること、質問に対して本文中で直接的な回答を示すこと、情報を明確なセクションに分けること、といった基本的なコンテンツ設計が、マークアップよりもAI引用に効くかもしれない。スキーマの導入を否定するデータではないが、スキーマだけでAI引用が増えるという期待はデータで裏付けられなかった。
この記事のポイント
- Googleは2026年5月にFAQリッチリザルトを完全廃止し、可視的スキーマ特典の縮小傾向が続いている
- Ahrefsの調査(1,885ページ)では、JSON-LD追加によるAI引用の増加は統計的に確認されなかった
- GEO業界で広がった「スキーマでAI引用が増える」という売り文句は、データによる裏付けを欠いている
- ProductやOrganizationなどリッチリザルトが現役のスキーマタイプは引き続き価値を持つ
- AI引用を狙うなら、スキーマ以上にHTML構造の明確化と本文での直接回答が重要になる可能性が高い

・ 複数業界における17年間のデジタルビジネス開発経験
・ ウェブサイト開発のためのHTML、PHP、CSS、Java等の実用的知識
・ 15ヶ国語対応の多言語SaaSの開発経験
・ 17年間にも及ぶ、Eコマース長期運営経験
・ 幅広い業界でのSEO最適化の豊富な経験
