
WordPressを構築する人材は誰なのか、市場縮小の実態
数字が物語る市場の縮図

まずは客観的な立場から現状を整理する。データはシェアの緩やかな縮小を示しているが、これは崩壊ではなく「選択されなくなる」局面への移行を意味する。
全ウェブサイトに占めるWordPressのシェアは、2024年の約43.6%をピークに、2026年6月時点で41.5%まで低下した。CMS市場に限っても、ピークの61.7%から59.3%へとダウンしている。だが、この数値を額面通り受け取るのは早計だ。絶対数ベースで見ればWordPressサイトの総数は依然として増加しており、シェア低下の主因は、ウェブ全体の成長スピードにWordPressの新規サイト獲得が追いついていない点にある。
つまり、既存ユーザーが脱出しているわけではない。リスクは「新しくサイトを作る人がどこから始めるか」という新規獲得市場に潜んでいる。WP Mayorの記事はこれを「維持率は堅いが、新規参入の指標が危険信号を灯している」と総括する。この見立ては、プラットフォームの将来を占う上で極めて重要だ。
シェア低下の構造的要因
シェア低下はWordPressの魅力が失われたというより、ウェブの主戦場とプレイヤーが多様化した結果だ。かつてはサイト構築のデファクトだったWordPressも、今やShopifyやSquarespaceといったホステッドプラットフォーム、SubstackやLinktreeのような単機能サービスと住み分ける局面に入った。WixとShopifyだけで、WordPressが失ったシェアとほぼ同規模の成長を示している。
これはWordPressの「万能性」が、一部の層にとっては「複雑性」として映り始めている証左でもある。ウェブ制作の民主化は確かに進んだが、その民主化を担うツールの主役が交代しつつあるのだ。
変わりゆく作り手の肖像

WordPressを支えるコア人材の年齢層は、確実に上がっている。この構造変化は、エコシステムの将来における最大の不安要素の一つだ。
2003年の誕生から20年以上が経過し、黎明期を支えた開発者やエージェンシー経営者の多くは40代から50代に差し掛かっている。WP Mayorの記事が参照する2023年の公式調査では、回答者の約半数が40歳以上であり、30歳未満は23%に過ぎなかった。この調査は英語圏のコアコミュニティに偏っているという限界はあるが、プロフェッショナル層の高齢化を如実に示している。
より広範な開発者コミュニティに目を向けても傾向は同じだ。Stack Overflowの調査では、35歳以上の開発者の割合が2019年の約4分の1から2025年には47%にまで上昇している。PHP自体の新規学習者も少なく、若年層の関心はJavaScriptやノーコードツール、あるいはWebflowやFramerといった直感的なサイトビルダーに流れている。
新興市場という希望と現実
反論として、インドやブラジル、インドネシアといった新興国での成長を挙げる声は根強い。実際、これらの地域の若年層がWordPressの新たな利用者層を形成している可能性は高い。WP Mayorの記事も「世界全体で見れば、新規ユーザーの中心年齢はむしろ若いかもしれない」と指摘する。
だが、問題はその層が「エコシステムの構築者」、すなわちプラグインを開発し、コミュニティを牽引し、WordPressの未来を形作る人材なのか、という点にある。現状、西側諸国を中心とした従来の強力なコントリビューター層の高齢化と、新たな才能の流入不足は、イノベーションの停滞に直結する構造的な弱点だ。
「WordPressを構築する方法」の終焉

ウェブ制作の前提そのものが根本的に変化し、WordPressが前提としてきた「自分で積み上げる」モデルは、もはや唯一の選択肢ではなくなった。
かつてのように、サーバーを借り、CMSをインストールし、テーマを選び、プラグインを探し、セキュリティを自衛するという一連の体験は、多くの個人やスモールビジネスにとって、もはや過剰な負担でしかない。WP Mayorの記事が指摘する通り、ウェブの消費行動が「所有から利用へ」と移行する中で、この参入障壁の高さは深刻なコストとして認識されるようになった。
公開データが示す調査結果も興味深い。2026年1月の調査では、スモールビジネスの68%がソーシャルメディアと有料広告を成長の最大のドライバーと見なしていた。自社サイトは、かつての「最初の一歩」から「信頼性を担保する二の次の存在」へと役割を変えたのだ。
参入障壁という名のジレンマ
WordPressの柔軟性は、それを楽しめる人にとっては未だ最大の武器だ。しかし、スピードと簡便さを求める一般人にとって、WordPressが要求する「技術的なリテラシー」は、単なる面倒くささでしかない。最近のAIサイトビルダーがこれほど急速に支持を集めているのは、この「面倒くささ」をゼロにしたからに他ならない。
WP Mayorの記事は、この点について「いじくり回すことを楽しむ人が減ったとき、柔軟性はアドバンテージからコストに変わる」と明確に断じている。この変化は、WordPressがターゲットとすべき市場が「手間をかけてでも理想を追求する層」へと限定されつつあることを示唆している。
悪化するブランドパーセプション

構造的な問題に加え、WordPressにはイメージ面での逆風も吹いている。「遅い」「セキュリティが脆弱」というレッテルは、時に誤解を含みつつも、新規ユーザーの選択を阻害する強力な要因だ。
セキュリティに関して言えば、「WordPressコアに重大な脆弱性が多い」という認識は、データに基づくと不正確だ。Patchstackのレポートによれば、2025年に報告されたコアの脆弱性はわずか6件で、いずれも重要度は低かった。問題の91%はサードパーティ製プラグインに集中しており、脆弱性の公開から悪用開始までの時間は中央値で5時間にまで短縮されている。WP Mayorの著者はこの状況を「WordPressコアは安全だが、無数のプラグインで構成される現実のサイトは危険」と評する。
表示速度も同様の構図だ。Core Web Vitalsの合格率は改善傾向にあるものの、モバイルでの合格率は約45%と、Shopify(68〜75%)などに大きく水をあけられている。だが、これは技術的な限界というより、安価なホスティングや無秩序なプラグインの重ねがけによる「運用の問題」が大きい。WP Mayorの記事は「速度問題はWordPressというソフトウェアには不公平だが、典型的な導入実態には妥当な批判」と表現している。
「オープンソース」という逆説
今、オープンソースはAIブームによってかつてない隆盛を極めている。GitHub上では大規模なオープンソースAIプロジェクトが何十万ものスターを集め、コードを公開し合う文化が再び脚光を浴びている。WP Mayorの記事はここにこそ痛烈な皮肉があると指摘する。かつてオープンソースの大衆化を象徴したWordPressは、この新しい潮流から完全に取り残されているのだ。
新しい才能はWordPress.orgではなく、モダンなAIツールやJavaScriptフレームワークのリポジトリに集まっている。知名度はあっても、もはや「カッコよくない」プラットフォーム、それがWordPressの直面するイメージ上の課題だ。
AIが侵食する「すそ野」市場

WP Mayorの記事が最も深刻に捉えているのがこの問題だ。AIによるWebサイト構築の民主化は、WordPressが伝統的に得意としてきた「シンプルなサイト」の市場を根底から解体しつつある。
「サイトが欲しい」というニーズに対する解答は、もはやツールの習得ではない。LovableやCursor、Vercelのv0、WixのAIビルダーといったサービスは、ユーザーがやりたいことを自然言語で伝えれば、数分で動作するサイトを生成する。これらのツールは既に巨大なビジネスに成長しており、単なるバズワードではない。雇用主AIビルダーは、この流れが本物であることを証明している。
WP Mayorの記事は、AIの影響を「底上げ」と「天井上げ」の2つに分類する。すなわち、技術的でない人が簡単なサイトを作れるようにする底上げと、技術者がWordPressではなくCursorやAstroで高度なカスタムサイトを構築する天井上げだ。このうちWordPressにとって脅威なのは、市場規模が大きい前者の「底上げ」部分であり、これはWordPressがこれまで無意識に吸収してきた客層と完全に重なる。
プラグイン市場への波及
シンプルなサイトの需要が減退すれば、それを支えてきたプラグイン市場も連動して縮む。問い合わせフォーム、簡単なSEO対策、ギャラリー表示、ちょっとしたレイアウト変更。これまで無数のプラグインが提供してきたこれらの機能は、今やAIがその場で生成できるものだ。
WP Mayorの記事は、まだAIによるプラグイン収益減少を示す確定的なデータは存在しないと慎重に留保しつつも、「WordPressサイトでなくても済むようになったサイト群」を支えてきたプラグインこそが、エコシステムの中で最大のリスクに晒されている、という明確な見解を示している。これは、WordPressビジネスに携わる者なら誰しも直視すべき未来予測だろう。
プラグインゴールドラッシュの終焉

WP Mayorの記事が最も具体的に警鐘を鳴らすのが、プラグイン開発者の未来だ。AIによるコーディング支援は、プラグイン開発の参入障壁を劇的に下げた。2025年には12,713件のプラグインが新たに審査され、前年比で40%以上も急増した。WP Mayorはこれを「コードという防壁が消え去った状態」と表現する。
この状況下では、コードの機能だけが売りのプラグインに未来はない。誰でもAIを使えば、有料プラグインと同等の機能を一から構築できてしまうからだ。残るのは、コードだけでは再現できない「堀(Moat)」、すなわち、独自に蓄積したデータ、ライセンス認証やアップデート配信といったインフラ、あるいはユーザーからの信頼とブランド力である。
加速する寡占とデータの重要性
この変化を敏感に察知し、行動に移しているのが大手プラグイン企業だ。Awesome Motiveは多数のプラグインを買収し、そのデータと流通網を掌握することで巨大な堀を築いている。2026年5月にはLiquid WebがStellarWPブランドを統合し、傘下のプラグイン群を単一製品ラインに再編した。これらの動きは、企業価値の源泉が「コード」から「データと顧客基盤」へ完全にシフトしたことを示している。
WP Mayorの記事は、「AIは模倣者だけでなく、既存の勝者をも強力にする」と冷静な分析も加えている。すでに巨大なインストールベースを持つ企業は、AI機能を自社製品に迅速に組み込むことができるからだ。重要なのは、自身のビジネスがこの「バーベル」のどこに位置するのかを、今のうちに見極めておくことだろう。
ガバナンス不在が招く開発者離れ

WP Mayorの記事は、技術や市場の変化以上に深刻な問題として「プロジェクトのガバナンス」を挙げる。開発者がリスクを感じて去っていく最大の要因が、ここにあると断じている。
事の発端は、WordPressの共同創設者であるMatt Mullenweg氏が、ホスティング会社WP Engineを公の場で「WordPressのがん」と非難した2024年秋の出来事だ。WP Mayorの著者は、その後の一連の行為、すなわちWP Engineのアップデートサーバーアクセス遮断、ログイン時の「WP Engineと無関係である」という宣誓チェックボックスの設置、そして200万サイト以上で使われていたプラグインの無断フォークと乗っ取りを、「商標権の行使」の枠を超えた、統治機構の欠如を示すデモンストレーションだったと批判する。
連邦裁がAutomattic社に仮差し止め命令を出す事態にまで発展したこの騒動は、コミュニティに深い傷を残した。WP Mayorの記事は、これが単なる企業間紛争ではなく、優秀な開発者に対して「このプラットフォームに貢献する真のコスト」を知らしめる出来事だった、と厳しく指摘している。
構造的欠陥は何も変わっていない
WP Mayorの記事が最も憂慮するのは、問題の根本が2026年半ばの現在まで全く変わっていない点だ。WordPress.orgの配信インフラとプラグインディレクトリは、非営利財団ではなく、Mullenweg氏個人の資産であるという構造的な事実。そこには監視委員会も、コミュニティがリーダーの決定を覆すメカニズムも存在しない。
ガバナンス改革を主導したコミュニティリーダーのアカウントが停止され、代替リポジトリを目指したプロジェクトは出資者を得られず頓挫した。WP Mayorの記事は、この一連の出来事を「才能ある人々は皆、結論を出した。何かが変わるまでは、才能の流出は止まらない」と総括している。これは、WordPressの未来を左右する、極めて政治的な、しかし避けては通れない核心的な課題だ。
この記事のポイント
- WordPressの市場シェア低下は緩やかであり、エコシステムが崩壊しているわけではない。しかし、かつてのように「誰でも最初に選ぶツール」ではなくなりつつある。
- ユーザー層と開発者コミュニティの高齢化は深刻で、若い才能の流入不足が長期的な競争力を削いでいる。
- シンプルなサイト構築需要はAIに奪われつつあり、単機能プラグインの市場は決定的に縮小する公算が大きい。
- 生き残るには、コード以外の独自データや流通網といった「堀」が不可欠だ。ビジネスは二極化し、中間層は消える。
- プラットフォームのガバナンス問題は、今後もエコシステム最大の不安定要因であり続ける。その影響は技術的な課題よりも根深い。

・ 複数業界における17年間のデジタルビジネス開発経験
・ ウェブサイト開発のためのHTML、PHP、CSS、JavaScript等の実用的知識
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VoidZeroがCloudflareに参画、ビルドツールViteはオープンソースを維持
Vite、Vitest、Rolldown、OxcといったJavaScriptエコシステムの中核ツールを開発するVoidZeroが、Cloudflareに参画した。全チームメンバーがCloudflareに合流する大規模な動きだ。
この発表で最も強調されているのは、これらのプロジェクトがこれからもオープンソースであり続けるという点だ。ViteはMITライセンスを維持し、ベンダーに依存せず、コミュニティ主導で開発が進められる。この原則が揺らぐことはないとCloudflareは明言する。
背景には、AI時代のソフトウェア開発の変化と、フルスタック化するモダンアプリケーションの複雑さがある。Viteがエコシステム全体の共有基盤となった今、この参画はツールチェーンの未来を左右する重要な転換点だ。
VoidZeroのCloudflare参画の内容

オープンソースとベンダー中立の堅持
Cloudflareは、Viteや周辺ツールの独立性を何よりも優先するとしている。具体的な約束は以下の通りだ。
- Vite、Vitest、Rolldown、Oxc、Vite+は今後もMITライセンスのオープンソースであり続ける
- 特定のクラウドベンダーに依存しない設計を維持する。Viteで構築したアプリケーションは、どこでも動作し続ける
- ロードマップはViteチームとコミュニティが引き続き主導し、公開の場で開発される
- Evan You氏をはじめとするVoidZeroチームが、プロジェクトのリーダーシップを継続する
- Cloudflareはこれらのプロジェクトにエンジニアリングリソースを投入するが、方向性を自社向けに曲げることはしない
Cloudflareのブログ記事では、このコミットメントを「言葉ではなく、日々の開発支援とプロジェクト運営で証明していく」と表現している。年初にAstroがCloudflareに参画した際と同様の、独立性を尊重するモデルだ。
100万ドルのViteエコシステム基金
この参画に伴い、CloudflareはViteエコシステム基金として100万ドルを拠出する。この基金はViteのコアチームによって管理され、メンテナーやコントリビューターへの支援に充てられる。
「ViteはVoidZeroやCloudflareよりも大きな存在だ」とCloudflareは述べており、エコシステムを支える無数の開発者を巻き込む意図が明確に示された。オープンソースの持続可能性を金銭面から支える、具体的な施策である。
この比較から分かるように、今回の参画はエコシステムの信頼を損なわないための設計が徹底されている。Viteが多くのフレームワークに採用されている共有基盤だからこそ、中立性の維持は絶対条件となる。
AIが変えたビルドツールの役割

エージェントがツールチェーンを回す時代
Cloudflareのブログ記事は、Viteの驚異的な普及の背景にAIの存在があると分析する。現在Viteの週間ダウンロード数は約1億2900万回、Cloudflare Viteプラグイン(@cloudflare/vite-plugin)は約1400万回に達している。これはVite本体のダウンロード数の10%を超える規模だ。
この急成長を牽引しているのが、AIコーディングエージェントだ。開発者だけが使っていた開発サーバーやリンター、フォーマッターを、今やAIエージェントが常時利用している。彼らはプロジェクトのスキャフォールディングから開発サーバーの起動、エラー解析、テスト実行までを自動で行う。
エージェントにとって重要なのは、高速なフィードバックループだ。ビルドが速く、テストが速く、エラーが明確で、CLIの挙動が一貫していること。VoidZeroのツールチェーン(Vitest、Rolldown、Oxc、Oxlint、Oxfmt)は、まさにこの要件に最適化されている。それぞれのカテゴリで最速クラスの性能を持ち、エージェントが何度も繰り返し実行してもストレスが少ない。
この図は、AIエージェントがコード生成からテスト、リント、修正までのサイクルを高速に回す様子を表している。各ツールの応答速度がエージェントの生産性に直結するため、VoidZeroのツールチェーンが選ばれる理由が明確になる。
フルスタック化するViteとVoidの知見

ビルドツールを超えた役割
モダンなアプリケーションは、単なる静的ファイルのバンドルでは完結しない。サーバーサイドレンダリング、API、バックグラウンドジョブ、キュー、データベース、オブジェクトストレージ、リアルタイム通信、認証、そしてAIエージェントの統合までが必要になる。
Viteはこれに対応するため、ビルドツールからフルスタックアプリケーションの基盤へと進化しつつある。Cloudflareはこの流れを加速させるために、Vite本体にプロバイダ非依存の抽象化レイヤーを追加していく方針だ。バックエンド、API、エージェント、デプロイメントのためのフックをVite側に用意し、各クラウドベンダーがそれを実装する形を目指している。
すでにVoidZeroが実験していた「Void」プラットフォームの知見が、この方向性を後押ししている。VoidはVite向けのデプロイメントプラットフォームとして設計され、モダンアプリのライフサイクル全体を一つのツールチェーンで統一する試みだった。Cloudflareは将来的にこのVoidプラットフォームをオープンソース化し、誰でも独自のプラットフォームをVite上に構築できるようにする計画も示している。
Workerd統合による開発体験の向上
CloudflareとViteの協業は2024年のVite Environment APIから始まっている。このAPIによって、Viteの開発サーバーはNode.js以外のランタイムでもサーバーコードを実行できるようになった。
Cloudflare Viteプラグインを使用すると、vite devの実行時にサーバーコードがWorkerd(Cloudflare Workersのオープンソースランタイム)上で動作する。Durable Objects、D1、KV、R2、Workers AI、エージェントなど、本番環境と同じランタイムモデルがローカルで再現される。開発環境が本番の劣化版だった時代は、このAPIによって終わりを迎えつつある。
この図が示すように、Environment APIの導入前後で開発体験は大きく変わった。ローカル環境と本番環境のランタイムが一致することで、デプロイ後の予期せぬエラーが激減する。
CloudflareがVite基盤に移行する意味

CLI統合とcfコマンドの未来
Cloudflareは自社ツールの方向性を「Viteに合わせる」と明確に宣言している。最近テクニカルプレビューが公開された新しい統合CLI「cf」は、Viteを基盤として設計される。
このCLIの目指す姿は、ViteのエルゴノミクスをそのままCloudflareプラットフォーム全体に拡張することだ。cf devはvite devのスーパーセットとして動作し、同じ速度、同じホットモジュールリプレースメント、同じプラグインモデルを持ちながら、必要に応じてCloudflareのランタイムとバインディングを利用できる。cf buildはViteプロジェクトをネイティブに理解し、cf deployはViteアプリのデプロイをシンプルにする。
すでにCloudflareのダッシュボード自体がVite上に構築されており、OxlintはCloudflareのコードベースで「数日分のエンジニアリング時間を節約している」と報告されている。Astroチームのエージェントハーネスフレームワーク「Flue」もVite基盤に移行中だ。Cloudflare自身がViteをドッグフーディングし、その価値を内部で証明している。
短期的な影響と長期的な展望
短期的には、Viteユーザーにとって何も変わらない。Vite、Vitest、Rolldown、Oxc、Vite+は引き続きリリースされ、VoidZeroチームがこれらを主導する。Cloudflare Viteプラグインも改善が続き、Environment APIもCloudflare以外のランタイムを含めて進化していく。
長期的には、CloudflareのCLIがVite上に完全に統合される。Viteにはフルスタックアプリとエージェントのためのプロバイダ非依存のプリミティブが追加され、あらゆるプラットフォームで利用可能になる。そしてVoidプラットフォームがオープンソース化され、誰でもViteとCloudflareの上に独自のプラットフォームを構築できるようになる。
この計画が実現すれば、ViteはJavaScriptエコシステムの単なるビルドツールから、アプリケーション開発全体を支える普遍的な基盤へと進化する。Cloudflareのインフラは、その基盤の上で最も統合された選択肢の一つとして位置づけられることになる。
この記事のポイント
- VoidZeroの全メンバーがCloudflareに参画。ViteやVitestなどのツールはMITライセンスのままでベンダー中立を維持する
- CloudflareはViteエコシステム基金として100万ドルを拠出し、コミュニティ主導の開発を資金面から支援する
- Viteの週間ダウンロード数1億2900万回の背景には、AIエージェントによる高速フィードバックループ需要がある
- Environment APIにより、ローカル開発環境でも本番と同じWorkerdランタイムが使用可能になった
- Cloudflareの新CLI「cf」はViteを基盤に統合され、全プラットフォームで一貫した開発体験を提供する計画だ

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WordPressエコシステムの未来は「信頼」で決まる——Zach Stepekが語る2026年のパートナーシップ論
WordPressサイトの構築と運用は、単独の企業や個人の力だけで成り立っているわけではない。その背後には、エージェンシー(制作会社)、プロダクト企業(テーマ・プラグイン開発者)、ホスティング(インフラ提供者)という3つの層が複雑に絡み合ったエコシステムが存在する。
2026年3月、WP TavernのポッドキャストでZach Stepekがこのエコシステムの現状と未来について語った。彼は自身のキャリアを振り返りながら、現在のWordPress界隈で進行する「短期的利益」と「長期的信頼」のせめぎ合いを指摘する。経済的不確実性が高まる中、パートナーシップの在り方は転換点を迎えている。
この記事では、Stepekの見解を基に、WordPressエコシステムを支えるパートナーシップの本質と、持続可能な成長のために必要な考え方を解説する。
WordPressエコシステムを構成する3つの層

Zach Stepekは、成功するWordPressサイトの背後には常に3つの主要なプレイヤーが存在すると説明する。これらは独立しているのではなく、ケルトの結び目のように複雑に絡み合い、互いに依存し合っている。
1. エージェンシー/個人事業主
クライアントの要望を聞き、実際にサイトを構築・管理する実行者だ。フリーランスの開発者から大規模な制作会社まで、その規模は多様である。彼らはクライアントと最も近い位置にあり、具体的な課題と要件を把握している。
2. プロダクト企業
WordPressを拡張するテーマやプラグインを開発・提供する企業を指す。Gravity FormsやKadence Themeなどが該当する。彼らの提供するソフトウェアがなければ、多くの高度な機能を実現できない。オープンソースのプラグインを提供し、コミュニティに還元している企業も多い。
3. ホスティング/インフラ
サイトが動作する土台となるサーバーやネットワークを提供する層だ。Stepekはこれを「小売店の立地」に例える。安価で制限の多い共有ホスティングは人通りの少ない路地裏の店舗のようなものだ。一方、高パフォーマンスで信頼性の高いマネージドホスティングは、ニューヨークのマディソン通りやシカゴのミラクルマイルのような一等地に相当する。
特にEコマースサイトでは、この「立地」が収益に直結する。大量のトラフィックを捌けずにサイトがダウンすることは、客足が途絶えるのと同じだ。Stepekは自身の経験として、感謝祭のアメリカンフットボール中継で紹介された非営利団体のWooCommerceサイトが、たった14件の注文処理でサーバーがクラッシュした事例を挙げている。メールスプールがメモリを食い尽くしたことが原因だった。
「取引」から「信頼」へ——パートナーシップの質的変化

Stepekは、WordPress界隈のパートナーシップを「取引型」と「価値観共有型」の2つに分類する。近年、前者が増加していることに懸念を示す。
取引型パートナーシップの限界
取引型パートナーシップは、短期的な収益(ROI)を最優先する。例えば、ホスティング会社がエージェンシーに対して、自社サービスを紹介する見返りに高額のアフィリエイト報酬を支払う関係がこれに当たる。この関係は、金銭的インセンティブが続く限りしか維持されない。
Stepekは、このような関係を「リンゴの木からリンゴを収穫する行為」に例える。すべての実を収穫した後、木そのものの世話をしなければ、次の収穫は期待できない。パートナーを単なる「ロゴ集め」や収益の「項目」として扱うことは、関係の脆さを増すだけだ。
価値観共有型パートナーシップの重要性
これに対し、価値観共有型パートナーシップは「森を育てる」ことに似ているとStepekは言う。互いのビジネスを理解し、成功を願い、長期的な視点で関係を構築する。収益は、このような健全な関係を築いた結果として後からついてくるものだ。
具体例として、Fueled(10up)が開発したElasticPressや、WebDevStudiosがリリースしたTheme Switcher Proを挙げている。これらは、自社の顧客課題を解決するために開発されたツールが、そのままオープンソースとしてコミュニティに還元されたケースだ。コミュニティからのフィードバックやコントリビューションが製品をさらに改善するという好循環が生まれている。
Stepekは、ホスティング企業にも同様の「良き管理者」としての役割が求められると主張する。自社のパートナープログラムを通じて、エージェンシーとプロダクト企業が出会い、互いの成功に投資できる場を提供するのだ。このような「関係性の資本」の蓄積こそが、エコシステム全体の強靭さを決定する。
2026年の現実——経済的圧力と「恐怖」がもたらす短絡思考

では、なぜ価値観共有型のパートナーシップが難しくなっているのか。Stepekは、2026年現在のマクロ経済環境と業界固有の課題に原因を見出す。
投資家のプレッシャーとオープンソース精神の衝突
多くのWordPress関連企業がベンチャーキャピタルなどの外部資金を受け入れている。投資家の関心は往々にして短期的な投資回収率(ROI)に向けられる。この「取引」のみを重視する論理は、相互依存と協調を基盤とするオープンソースコミュニティの在り方と根本的に相容れない、とStepekは指摘する。
ホスティング業界を襲うコスト増の波
さらに、ホスティング業界には具体的なコスト圧力が迫っている。大規模言語モデル(LLM)などの需要急増によるサーバー部品(GPU、メモリなど)の不足だ。Stepekはデータセンターで目撃した光景を語る。AI企業のサーバーラックは非常に高温になるため、その周辺だけが極端に冷やされていたという。
このようなハードウェア需要の高まりは、部品コストの上昇を招き、最終的にはホスティングサービスの原価を押し上げる。月額3ドルのような安価な共有ホスティングのビジネスモデルは、根本から揺らぎ始めている可能性がある。
コミュニティ活動の縮小
こうした不確実性は、企業のコミュニティへの関与にも影響を与えている。WordCampや大規模テックカンファレンスのスポンサーリストを見ると、参加企業数は減少傾向にある。多くのホスティング企業が、従業員の海外出張を今年は控えるとStepekは聞いている。経費削減のあおりだ。
「恐怖が最初に犠牲にするのは、『忍耐』だ」とStepekは言う。長期的なパートナーシップの育成には時間がかかる。しかし、経済的恐怖が蔓延する環境下では、この「待つこと」が最初に切り捨てられる対象となる。
持続可能なエコシステムのために——「信頼」を測定可能な資産に

短期的な収益圧力が強まる中で、オープンソースのWordPressエコシステムを維持・成長させるにはどうすればよいか。Stepekは、無形の「信頼」や「評判」を、より可視化し、評価可能なものにしていく必要性を説く。
収益以外の成功指標
企業の成功を測る指標は月間経常収益(MRR)や年間経常収益(ARR)だけではない。Stepekは、以下のような「シグナル」にも注目すべきだと提案する。
- チーム間の信頼度
- パートナー同士が能動的に協業する頻度
- パートナーシップの結果、顧客がより良い成果を上げているか
これらは直接的な収益には表れにくいが、長期的なビジネスの安定性と成長可能性を左右する重要な要素だ。関係性の資本(Relationship Equity)は、収益に先立って築かれるものだ。
コントリビューションの「見える化」
また、企業がWordPressコアやコミュニティに対して行う貢献(コントリビューション)を、何らかの形で認識・評価する仕組みの重要性が高まっている。かつては、企業が従業員にコア開発の時間を与えることは、暗黙の「善行」として認識されていた。しかし、すべてが数値化され、説明責任が求められる現在、このような無形の貢献は「スプレッドシートに載らない」活動として軽視されがちだ。
貢献時間の追跡、貢献者バッジの付与、公開された謝辞など、企業のコミュニティへの関与を「見える化」する取り組みは、企業が長期的な視点を持っていることの証左となり得る。これは、単なる慈善活動ではなく、エコシステムという「共通の土台」への投資であるという認識が広まる必要がある。
コミュニティの監視役としての役割
Stepekは最後に、WordPressコミュニティ自身の力にも言及する。コミュニティは、利益のみを追求し、還元を怠る企業に対して非常に厳しい目を向ける。このコミュニティの「評判」こそが、企業の長期的なブランド価値を大きく左右する力を持つ。短期的な思考はブランドの資本を毀損するが、長期的な思考はそれを築き上げる。
「信頼こそが最も耐久性のある資産だ」というStepekの言葉は、変化の時代における不変の原則を示している。
この記事のポイント
- WordPressエコシステムは、エージェンシー、プロダクト企業、ホスティングの3層が相互依存することで成り立っている。
- 短期的な「取引」を重視するパートナーシップが増える一方、長期的な「信頼」に基づく協力関係がエコシステムの持続可能性には不可欠だ。
- 2026年の経済的圧力(投資家のROI要求、ホスティングコスト増)が、企業の短絡的思考を助長している。
- 収益以外の指標(信頼度、協業頻度、顧客成果)でパートナーシップの成功を測る視点が必要である。
- 企業のコミュニティ貢献を「見える化」し、エコシステム全体への投資として評価する文化が重要となる。
出典
- WP Tavern 「#210 – Zach Stepek on the Interconnected WordPress Ecosystem, Partnerships and Trust」(2026年3月25日)

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