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Beaver Builder共同創業者が語る、AI時代のページビルダーとWeb制作のリアル

Beaver Builder共同創業者が語る、AI時代のページビルダーとWeb制作のリアル

Beaver Builderは、今年でリリースから12年目を迎えるWordPress用ページビルダーだ。その共同創業者であるRobby McCullough氏が、WP Tavernのポッドキャスト「Jukebox」に出演した。 McCullough氏は、昨今のAIブームに最初から飛びつかなかった理由と、その静観期間を経て見えてきた「真に使えるAI」の形について語っている。

AIがコードを生成してWebサイトを構築する時代に、ドラッグ&ドロップでページを組み立てるツールには意味があるのか。McCullough氏の見解からは、編集や保守といった「作った後」の工程こそが、これからの差別化要因になるという示唆が得られる。Web制作の現場で起きている地殻変動と、そこに適応しようとするプロダクト開発の内側を見ていく。

ページビルダーがもたらした制作ハードルの低下

ページビルダーがもたらした制作ハードルの低下

Beaver Builderは2010年代前半、WordPressで本格的なWebサイトを作るにはHTMLやCSS、PHPの知識が必須だった時代に登場した。 McCullough氏は、番組ホストのNathan Wrigley氏との会話で「ページビルダーは、技術に詳しくないクライアントが自分でコンテンツを更新できる仕組みを作りたくて開発した」と振り返っている。

ノーコードの先駆けと「職人芸」の摩擦

登場当初、ページビルダーには強力な逆風があった。「本来のWordPressの作法ではない」という批判だ。 McCullough氏は最初に参加したWordCampで、「自分はテーマに直接コードを書ける。ページビルダーは不要だ」と言われた経験を明かしている。

この構図は現在の生成AIに対する反発とよく似ている。新しいツールが既存の「正しい」手法を置き換えるとき、必ず「職人芸」の喪失を惜しむ声が上がる。しかし、結果としてページビルダーはWordPressの市場シェアが40%を超える原動力のひとつになったと広く認識されている。

Gutenberg登場で一度は消えたかと思われた市場

その後、WordPress 5.0でブロックエディタ「Gutenberg」がコアに統合された。このときも「ページビルダーは不要になる」という予測が飛び交った。 McCullough氏は「もう数えきれないほど、『1年以内にページビルダーは終わる』と言われてきた」と笑う。 しかし、ビジュアル編集への需要はむしろ多様化し、Beaver Builderのような専用ツールは独自のポジションを保ち続けている。

Before(2010年代初頭)
HTML・CSS・PHP の知識が必須
専門の開発者でなければレイアウト変更すら困難だった
After(ページビルダー登場後)
ドラッグ&ドロップで視覚的に構築
クライアント自身が更新可能。開発者は戦略的業務に集中できる

上の比較図は、制作フローがどのように変化したかを示している。技術的負荷が下がったことで、Webサイト制作の主役は開発者から運用者へと広がった。

AIブームに飛びつかなかった戦略的判断

AIブームに飛びつかなかった戦略的判断

2023年から2024年にかけて、多くのSaaS企業がChatGPTのAPIをラップしただけの機能を「AI搭載」と謳い始めた。 McCullough氏はこの動きを「AIハイプ・トレイン」と呼び、Beaver Builderはそれに乗らなかったと明言している。 経営陣や株主向けに「AI対応」と謳う必要に迫られる大手とは異なり、自分たちにはそのプレッシャーがなかったからだ。

本質はAIラベルではなく「エージェント化」にある

McCullough氏が今、強い関心を寄せているのは、単なるテキスト生成ではない。 開発環境に深く組み込まれ、コードを理解して自律的にタスクを遂行する「エージェント型AI」だ。 彼はこの半年足らずで、会話だけで10以上のWebサイトを試作した経験を語っている。 「以前なら数週間かかっていた作業が瞬時に終わる」興奮がある一方で、これがWeb制作のプロセスを大きく変えると確信している。

静観期間がもたらした「待ち」のメリット

最初のブームで実装を見送ったことで、Beaver Builderは二つの利点を得た。 ひとつは、技術の成熟を待てたこと。 もうひとつは、ユーザーが本当に必要とするAI体験を設計する余裕が生まれたことだ。 McCullough氏は「最初の波に乗って見せかけのAI機能を追加していたら、今ごろ陳腐化していただろう」と振り返る。

2023年〜 初期AIラッシュ
GPTラッパー機能の乱立。見出し生成やテキスト補完が中心で、表面的な付加価値にとどまる。
2025年〜 エージェント型AIの台頭
コード生成、デザイン反復、サイト構築までを自律的に遂行。プロダクトの根幹を変える可能性を持つ。

この図は、AIの「見せかけ」と「本質」の違いを時系列で示している。ビジネス視点では、後者の波に合わせてプロダクトを進化させることが競争力を左右する。

AI時代にこそ浮かび上がる「編集」と「保守」の価値

AI時代にこそ浮かび上がる「編集」と「保守」の価値

McCullough氏は、AIによるサイト構築が普及しても、ビジュアル編集ツールの役割はむしろ重要性を増すと見ている。その理由は「作った後」にこそ本当の手間がかかるからだ。

プロンプト一発で終わらないWebサイト運用

ポッドキャストの中でWrigley氏は、AIが生成したランディングページを「クリスマス仕様に一部だけ変更する」ような場面を想定した。 こうした部分的な更新は、新しいプロンプトで一から再生成するより、視覚的な編集画面で該当箇所を直接操作するほうが圧倒的に効率が良い。 McCullough氏も「AIがサイトを作り、人間が編集する」という分業モデルに強く共感している。

Beaver Builderが目指す「AIファースト編集」

開発チームは現在、二つのアプローチでAI統合を実験中だ。 一つ目は、ローカルで生成したHTMLページをドラッグ&ドロップでBeaver Builderに取り込む機能。 二つ目は、編集中のセクション(たとえば価格表)に対してチャットで修正を依頼できるエージェント型ツールだ。 McCullough氏は「まだ実験段階」と前置きしつつも、これらの機能がプロダクトの将来像を大きく変える可能性を示唆した。

新たな制作フローイメージ
AIがサイトを生成 Beaver Builderに取り込み 人間が視覚編集で微調整
※AIエージェントを使い、編集中のページ内で部分的な修正も行う(実験中)

このフロー図は、AIとページビルダーが対立するのではなく、補完し合う関係になることを示している。 McCullough氏は「コードもマークアップも、将来のバージョンではより表に出していく」と述べており、開発者がAIの出力結果を直接確認・調整できる透明性を重視する姿勢だ。

変化の加速が生むビジネス上の不安と楽観

変化の加速が生むビジネス上の不安と楽観

AIの進化は、プロダクトビジネスにただならぬプレッシャーをもたらす。 McCullough氏も例外ではない。 しかし彼は「根拠のない楽観主義」こそが12年間生き残れた理由だと語る。

過去にもあった「消滅予測」

ページビルダー業界は過去に何度も「終わった」と言われてきた。 Gutenbergの登場時しかり、AIの登場時しかり。 しかし、WordPressサイトの圧倒的な数が一夜にして別のプラットフォームに移行することは現実的ではない。 McCullough氏は「2126年になってもWordPressはどこかで動いているだろう」とジョークを交えつつ、当面はレガシーサイトの保守需要が膨大に残ると指摘する。

新しいツールを学び直す機会として捉える

注目すべきは、McCullough氏自身がエージェント型AIを使う中で、最新のCSSやフレックスボックス、グリッドレイアウトの知識を再習得しているという点だ。 「AIが書いたコードを見て、自分の手でいじる。それが最高の学習体験になっている」と彼は言う。 ツールに使われるのではなく、ツールから学ぶという姿勢が、変化の波を乗りこなす鍵なのかもしれない。

「人間らしさ」とコミュニティへの回帰

「人間らしさ」とコミュニティへの回帰

技術の話に終始するかと思われた対談は、終盤にかけて「人間同士のつながり」へと焦点を移した。 ここには、AI時代を生きるプロダクト開発者としての本音がにじむ。

AIエージェントとの対話で失われるもの

McCullough氏は、チャットAIがあまりにも有能で、「人と共同作業をしている感覚」を模倣してしまうことに懸念を示した。 在宅勤務で一人きりになる時間が長いと、つい人間よりAIに話しかける頻度が増える。 「このままだと、本当に人とコラボレーションする機会を失ってしまう」という危機感は、技術者としてだけでなく、ひとりの父親としての実感でもある。

WordCampと地域コミュニティの再興を望む声

対談の最後で、McCullough氏はWordPressのオフラインイベントの衰退を惜しんだ。 世界中のWordCampで顔を合わせ、初めて会う相手と食事や飲みに行く体験は、仕事の枠を超えた財産だった。 彼は「AIが進化すればするほど、ああいう場が恋しくなる」と述べ、テクノロジーが人を遠ざけるのではなく、人と人を結びつける方向に使われることを願っている。

この記事のポイント

  • Beaver Builderは初期AIブームに乗らず、技術の成熟を待つ戦略を選んだ。その結果、エージェント型AIという本質的な波に集中できている
  • AIがサイトを一瞬で作れるようになっても、部分的な編集や保守にはビジュアルツールが不可欠だ。制作より「編集」の時代へ移行しつつある
  • McCullough氏はAIを「学習手段」としても評価しており、生成されたコードを自ら触ることで新しいCSS技術を習得している
  • AIの進化はビジネスに不安をもたらすが、WordPressの圧倒的な普及率がしばらくの間はレガシーサイトの保守需要を支え続ける
  • 便利なAIとの対話が増えるほど、人とのリアルな共同作業やWordCampのようなコミュニティの価値が再認識されている