
Amazon FBM配送要件が厳格化、定時配達率90%維持が必須に
Amazon FBM販売者の配送要件が厳格化、定時配達率90%維持が必須に

Amazonが、自社で商品の発送を行うFBM(フルフィルメント・バイ・マーチャント)販売者に対する監視を強化している。ドイツでは定時配達率(OTDR)90%以上の維持が求められ、基準を下回った場合のペナルティも明確化された。イギリスでも同様の厳格化が進む。この動きはフランス、スペイン、イタリアにも波及しており、欧州のAmazonセラーにとって配送品質の向上が待ったなしの課題となっている。
日本国内でAmazon販売を展開する事業者にとっても、この欧州の政策変更は対岸の火事ではない。グローバルで足並みを揃えるAmazonのポリシーは、いずれ日本市場にも適用される可能性が高く、早めの対策が求められる。ここでは変更点の詳細と、販売者が取るべき具体的な対応策を解説する。
配送品質を担保する主体が販売者からAmazonへと移行しつつある状況を示している。FBM販売者は、単に発送するだけでなく、配送プロセス全体のパフォーマンスを数値で証明する責任を負うことになる。
OTDR 90%維持の義務化、その基準とペナルティの詳細

ドイツのAmazonセラー向け公式フォーラムで発表されたポリシー更新によると、FBM販売者は消費者向け注文において、定時配達率を90%以上に保つことが求められる。このOTDR(On-Time Delivery Rate)とは、顧客に約束した配達日までに商品が到着した注文の割合を指す。
消費者向け配送からB2B配送まで、段階的に強化
この要件は2026年9月1日から施行され、基準を満たせない場合、対象となる商品の出品が停止される可能性がある。さらに、FBM商品の新規出品自体ができなくなるリスクも示唆されている。
B2B取引、つまりAmazon Businessの注文についても同様の厳格化が予定されている。9月30日からは、企業向け配送の90%以上が、顧客の営業時間内に時間通り到着することが必須となる。このB2B配送指標が新たに導入され、10月30日からは基準未達の場合、企業向け出品の停止措置が取られる。この変更はイギリスのAmazon.co.ukセラーにもアナウンスされている。
このスケジュールから、Amazonが個人消費者向けと企業向けの両面で配送品質を底上げしようとする意図が明確に読み取れる。特に法人向けは、指定された営業時間内への配達が求められるため、配送業者の選定や在庫管理により一層の正確性が要求される。
イギリス市場でも監視が強化、猶予はここまで
イギリスでは、90%のOTDR要件自体は既に存在していた。しかし、これまでは形骸化していた側面があり、2026年9月からはより厳格に執行されることになる。移行期間は終わり、抜け道は塞がれつつある。
Amazonがドイツとイギリスという欧州最大の2市場で今回のルール変更を同時に進めることは、両市場でより正確な配送約束を表示し、セラーのコンバージョン率を高める狙いがあるというのが、Amazon自身の説明だ。
ハンドリングタイムの自動調整、販売者の甘えは許されない

配送要件の厳格化と並行して、ハンドリングタイムの設定ルールも大きく変わる。ハンドリングタイムとは、注文を受けてから商品を発送するまでの準備期間を指す。昨年も販売者間で議論を呼んだ問題だが、Amazonはここに再度メスを入れた。
デフォルトの2日間設定が1日へ自動短縮
2026年7月15日以降、アカウントのデフォルトのハンドリングタイムが2日間に設定されている場合、自動的に1日に短縮される。これまで多くのセラーが「念のため」と長めに設定していたバッファを、Amazonは認めなくなった。
実績ベースで自動調整される仕組み
さらに踏み込んだ施策として、9月1日からは自動ハンドリングタイム機能が本格的に稼働する。実際の発送実績よりも1日以上長くハンドリングタイムを設定している場合、その設定は30日後に自動的に短縮される。ステータス変更や再設定などの回避策は用をなさない。Amazonの説明を借りるなら「実際のパフォーマンスを反映した、より迅速な配送約束の提示を容易にする」ための仕組みだ。
このルール変更は、良心的なセラーにとっては強力な武器となる。配送品質の低い競合がふるい落とされることで、自社の「迅速な配送」という強みが際立つからだ。逆に、発送業務が属人的で安定しない事業者は、これまで以上に厳しい立場に置かれる。
FBM Ship+ との連動で配送体験はどう変わるか

これらのパフォーマンス要件の厳格化は、Amazonが昨年後半にドイツ、イギリス、フランス、スペイン、イタリアの5カ国で導入したFBM Ship+プログラムと密接に連動している。FBM Ship+は販売者がより迅速な配送オプションを提供するためのプログラムで、高速配送にかかるコストの一部をキャッシュバックする仕組みを備えている。Amazonはこのプログラムを「史上最も速く、かつ手頃な配送」と謳っている。
表面的には「配送の改善」だが、実態はAmazonプライムや企業購買担当者の期待値にFBM販売者を近づけるための構造改革だ。FBA(フルフィルメント・バイ・Amazon)に匹敵する配送スピードと信頼性を、自社発送でも実現せよというプラットフォームからの強い要求と解釈できる。
FBM Ship+のキャッシュバック制度は、こうした厳しい要求に対する飴として機能する。しかし、OTDR 90%維持という厳格な基準をクリアできなければ、そもそもプログラムの恩恵を受ける土台にも乗れない。
販売者が今すぐ取るべき3つの対策
欧州のルール変更を踏まえ、日本のAmazonセラーが準備すべきことを整理する。今のうちに対応を進めておけば、ポリシー変更が日本に上陸した際にスムーズに対応できる。
- 配送キャリアのパフォーマンスを可視化する。OTDR 90%を下回る原因の多くは、配送業者の遅延だ。複数キャリアの配達実績を比較し、信頼性の高いパートナーに絞り込む必要がある。
- ハンドリングタイムの実態を把握し、1日発送を標準化する。現在2日以上に設定している場合、自動調整の対象となる。在庫管理と出荷業務のフローを見直し、遅くとも翌営業日には発送できる体制を整える。
- 自社ECサイトとの二重管理を避ける。Amazonの在庫連動アプリやマルチチャネル管理ツールを活用し、販売機会を逃さず、かつオーバーセリングによる配送遅延を防ぐ仕組みを構築する。
自社ECサイトにおける「配送品質」の捉え方

Amazonだけの話ではない。この厳格化の波は、顧客の配送に対する期待値そのものを引き上げる。Amazonで「翌日配達が当たり前」という体験をした顧客が、あなたの自社ECサイトで買い物をした時、「配送が遅い」と感じれば二度と戻ってこない可能性がある。
WooCommerceなどで自社ECを運営している事業者は、カート落ち対策として配送スピードとコストのバランスを再考すべきだ。具体的には、一定金額以上の購入で送料無料かつ翌日配送を確約する、配送ステータスを自動通知するプラグインを導入するといった施策が有効になる。Amazonの基準は、もはや業界のデファクトスタンダードになりつつある。
この記事のポイント
- FBM販売者の定時配達率(OTDR)が90%以上必須となり、基準未達で出品停止の可能性
- 2026年9月1日から施行、B2B注文へも同様の厳格化が段階的に拡大
- ハンドリングタイムは実績を基に自動調整され、販売者による水増し設定が不可能に
- 配送品質の改善はコンバージョン率向上に直結するが、基準を下回れば販売権を失うリスクも
- 自社ECサイトでもAmazon並の配送体験が求められる時代へ、早急な業務フロー見直しが必要

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easyGroupが配送市場に参入、easyCourierでEC事業者に新たな選択肢
easyGroupがラストマイル配送市場に参入した。easyJetで知られる同社は、キプロスの現地物流企業Svelta Courierを買収し「easyCourier」としてリブランドする。欧州全域への展開を見据えた動きで、EC事業者にとって配送手段の選択肢が広がる可能性がある。
今回の発表に先立ち、easyGroupはオンラインマーケットプレイス「easyShop」の立ち上げも発表している。物流と販売チャネルの両面から欧州EC市場への足場を固める戦略だ。本記事では、easyCourierのサービス内容とEC事業者への影響を整理する。
easyGroupが配送市場に参入した背景

easyGroupは同名のブランドファミリーを展開し、航空会社easyJetを中核に据えてきた。近年はブランドの拡張を進めており、2026年6月初旬にはオンラインマーケットプレイスeasyShopの発表、同月中旬にはeasyCourierの立ち上げを公表している。
オンラインマーケットプレイス「easyShop」との連動
easyShopは、イギリスのマーケットプレイス事業者OnBuyのテクノロジーを基盤に構築されている。OnBuyはすでに欧州21カ国でマーケットプレイスを運営しており、そのテクノロジーを他ブランドにライセンス提供するモデルを持つ。easyShopもこれに倣い、純粋なマーケットプレイスとして出店パートナーと競合しない運営方針を掲げる。
販売の場を確保した上で、配送網を自前で整えるのが今回のeasyCourier構想だ。欧州EC市場において「販売プラットフォーム」と「ラストマイル配送」を一気通貫で提供しようとする狙いが読み取れる。
easyCourierの具体的なサービス内容

easyCourierは、キプロス国内でSvelta Courierとして稼働していた既存の配送ネットワークと技術システムを引き継ぎ、easyGroupの国際的なブランド力と組み合わせる形でスタートする。
当日配送とEC特化のサービス設計
キプロス国内では、緊急荷物を対象とした当日エクスプレス配送を提供する。主な顧客層はEC事業者と個人発送の利用者だ。「速度と安全性を維持しながら、多様な物流需要に対応する柔軟なクーリエサービス群」と同社は説明している。
EC事業者にとって、ラストマイル配送の品質は売上とリピート率に直結する。同日配送が可能なキャリアの存在は、顧客満足度を左右する要素だ。WooCommerceなどのプラットフォームで越境ECを展開する事業者にとって、キプロスを起点とした欧州域内の配送ネットワークが整備されるかどうかは注目点である。
上図のように、easyCourierが欧州全域にネットワークを拡大すれば、越境EC事業者の配送管理は大幅に簡素化される。複数キャリアの契約や追跡番号の突合といった運用負荷が減り、カスタマーサポートの品質向上にもつながる。
欧州展開の展望とEC事業者への影響

easyGroupは、キプロスでのeasyCourier立ち上げを足がかりに、欧州他国への展開を計画している。具体的な進出スケジュールは明らかにされていないが、easyShopの稼働と同時期に配送ネットワークを整えるシナリオが考えられる。
easyShopとのシナジー効果
easyShopは2026年後半に欧州21カ国でローンチ予定で、すでにブランドや小売事業者の登録受付を開始している。マーケットプレイスとクーリエサービスが同一ブランドで提供されることで、出店事業者は販売から配送まで一貫したサービス設計が可能になる。
WooCommerceで独自のECサイトを運営する事業者にとっても、easyCourierが配送キャリアの選択肢に加わることはメリットとなる。特に欧州市場への進出を検討している事業者は、今後のサービス展開を注視すべきだ。
中小規模EC事業者が得られる利点
大規模な物流ネットワークを持たない中小のEC事業者にとって、easyCourierのような大手ブランドのクーリエサービスは、配送品質の底上げに寄与する。配送遅延や荷物の紛失リスクが低減され、顧客満足度の向上が見込める。
また、easyGroupのブランド認知度は高いため、配送通知にeasyCourierの名称が使われることで、購入者に信頼感を与える副次効果も期待できる。
WooCommerce事業者が取るべき準備

easyCourierが日本から直接利用できるかは未確定だが、欧州市場への越境ECを展開するWooCommerce事業者は、以下の準備を進めておくことが望ましい。
- 欧州各国の配送ゾーン設定をWooCommerceで確認し、新キャリア追加時の動作をテストしておく
- 配送クラスや料金テーブルを柔軟に変更できるよう、汎用的な設定に整備する
- オンラインマーケットプレイスeasyShopの出店条件を情報収集し、複数チャネル戦略の選択肢として検討する
- 欧州域内の返品・交換フローを想定した運用マニュアルを整備する
配送キャリアを切り替える際に見落とされがちなのが、配送ステータスの自動連携だ。WooCommerceのWebhookやREST APIを用いて、キャリア側の追跡情報をサイトに自動反映する仕組みを構築しておくと、顧客対応の手間を大幅に減らせる。
この記事のポイント
- easyGroupがeasyCourierを立ち上げ、キプロスのSvelta Courierをリブランドしてラストマイル配送に参入した
- オンラインマーケットプレイスeasyShopとの連動により、販売から配送まで一貫したサービス提供を目指している
- 欧州全域への配送ネットワーク拡大が計画されており、越境EC事業者にとって新たな配送選択肢となる可能性がある
- WooCommerce事業者は配送ゾーン設定やキャリア連携の準備を進めておくことで、サービス開始時にスムーズな対応が可能になる

・ 複数業界における17年間のデジタルビジネス開発経験
・ ウェブサイト開発のためのHTML、PHP、CSS、JavaScript等の実用的知識
・ 15ヶ国語対応の多言語SaaSの開発経験
・ 17年間にも及ぶ、Eコマース長期運営経験
・ 幅広い業界でのSEO最適化の豊富な経験
