
EU一般製品安全規則(GPSR)の全貌とEC事業者の対応策
EU(欧州連合)向けに商品を販売する越境EC事業者にとって、2024年12月から本格適用された「一般製品安全規則(GPSR)」への対応は、もはや避けて通れない関門となっている。
従来のVAT(付加価値税)登録や通関手続きに加え、域内に拠点を持たない事業者に新たな義務が課せられることになった。この規則への違反は、AmazonやeBayといった販売プラットフォームから強制的に除外されるリスクに直結する。
本記事ではGPSRの全体像を紐解きながら、WooCommerceなど自社ECサイトを運営する事業者が今日から着手すべき実務対応を具体的に解説する。
GPSRの全体像と影響範囲

GPSR(General Product Safety Regulation)は、EU市場における消費者製品の安全性を確保するための包括的な法的枠組みだ。2001年に初版が発行されたのち、2024年12月に全面改訂版が施行された。
玩具や電子機器だけでなく生活用品全般が対象
ポイントとなるのは、この規則が玩具や電子機器といった特定分野向けではなく、既存の安全規制でカバーしきれていない広範な消費者製品に横断的に適用される点だ。具体的には、家庭用品、スポーツ用具、キッチン用品、ファッションアクセサリー、ライフスタイル雑貨など、EU域内で販売されるほぼすべての非食品系消費者製品が対象となる。
つまり、これまで製品安全規制の対象外だった商材を扱っていた事業者こそ、新たにGPSRの網にかかる可能性が高い。自社の商品が対象かどうかを判断するには、まず「消費者向けの非食品製品かどうか」を基準にするのが確実だ。
例:玩具安全指令、電子機器安全指令など
家庭用品、スポーツ用品、日用品なども対象
この比較で明らかなように、対象品目の拡大は越境EC事業者のリスク範囲を劇的に広げた。従来は安全規制を気にせず出品できていた商品が、今や適切な情報表示と責任者の指名なしには販売できなくなっている。
域外事業者を直撃する「責任者」指名義務

GPSR対応で最も大きなハードルとなるのが、EU域内に拠点を持つ「責任者(Responsible Person)」の選任義務だ。責任者は「責任経済事業者(Responsible Economic Operator)」と呼ばれることもある。
責任者に求められる役割と具体的な候補
EU域外の製造業者や販売事業者は、域内の誰かに製品安全の遵守について正式な責任を負わせなければならない。具体的な候補としては、輸入業者、正規代理店、フルフィルメント事業者、物流倉庫事業者、あるいはコンプライアンス専門の代行会社などが挙げられる。
この責任者の氏名または企業名、そして連絡先は、製品本体、パッケージ、または付属書類に必ず記載する必要がある。AmazonやeBayの商品ページ上でも、購入前にこの情報が表示されていなければならない。
従来、自国からの直送モデルに慣れ親しんできた越境事業者にとって、海外の法人や個人と責任委任契約を結ぶことは運営上の大きな負担となる。だが、GPSRにおいてこの手続きを回避する方法は存在しない。
ECサイト運営者が押さえるべき表示要件

GPSRでは、商品の安全性に関する情報を「購入前」にユーザーが確認できる状態にすることを求めている。物理的なパッケージへの表示だけでなく、ECサイトの商品ページ(リスティング)への明示が必須となる。
Amazon・eBay・自社ECすべてに適用される共通ルール
このルールは販売チャネルを問わない。Amazon、eBay、Etsyといったマーケットプレイスはもちろん、WooCommerceやShopifyで構築した自社ECサイトであっても、EUの消費者に販売する以上は同じ条件を満たす必要がある。
商品ページに記載すべき情報は、品目によって異なるが、一般的には以下の要素を含めることになる。製造者名とEU責任者の連絡先は最低限必須の項目だ。さらに、商品を一意に特定できるバッチ番号やシリアル番号、意図された使用目的、緊急時の安全警告、お手入れ方法なども、製品の性質に応じて求められる。
マーケットプレイスによる「門番」としての取り締まり

GPSR対応の最前線に立つのがAmazonやeBayといったマーケットプレイスだ。これらのプラットフォームには、法令順守を確認する「ゲートキーパー」としての責任が課せられている。違反を放置すれば、プラットフォーム自体が罰金や営業許可への制裁を受ける可能性がある。
行政指導より先にくる「強制出品停止」の現実
実務上は、規制当局から直接連絡が来るよりも前に、マーケットプレイス側の自動チェックや定期監査によって出品が停止されるケースが急増している。特に、EU責任者の情報が未登録だったり、商品安全情報のセクションが空白だったりすると、システムが即座にリスティングを非表示にする仕組みだ。
これは小規模事業者にとって大きな痛手となる。行政からの警告や改善命令には数週間の猶予が与えられることも多いが、マーケットプレイスのアルゴリズムによる除外は即時かつ無慈悲だ。日々の売上の大部分を特定のモールに依存している事業者ほど、GPSR対応の遅れは事業継続の危機に直結する。
トレーサビリティと10年間の記録保管義務

GPSRのもう一つの柱が、サプライチェーン全体にわたるトレーサビリティ(追跡可能性)の強化だ。製品に問題が発覚した際、当局がその流通経路を遡り、迅速に市場から回収できる体制を構築することを目的としている。
技術文書とリスク評価の保管が必須
具体的には、各製品にロット番号やシリアル番号などの識別情報を付与し、サプライチェーン上で追跡できるようにする義務が生じる。加えて、製造者は最大10年間にわたり、技術文書やリスク評価を含む安全関連の文書を保管しなければならない。
数十から数百のSKU(在庫保管単位)を扱う事業者にとって、これは軽視できない運用作業だ。特にWooCommerceのような自社ECサイトでは、商品登録時のカスタムフィールドを活用し、追跡情報や文書ファイルへのリンクを体系的に管理する仕組みを構築することが望ましい。
商品ごとに識別番号(SKU、バッチ番号等)を付与
製造元からEU責任者までの流通経路を文書化
リスク評価書と安全試験レポートを保管(最大10年間)
この図が示すように、GPSR対策は単に「責任者を決めて終わり」ではなく、データの整備と長期的な文書保管を前提とした継続的なコンプライアンス業務であることを理解しておく必要がある。
事業者が今日から着手すべき3つの対応ステップ

ここまでGPSRの要求事項を整理してきたが、実際にEU向け販売を継続する事業者は、大きく分けて3つのアクションを取る必要がある。
対応ステップと優先順位の整理
- 適用範囲の確定:自社の取り扱い商品がGPSRの対象かを確定させる。ほとんどの非食品系消費者製品は対象となるため、例外を探すより「全商品が対象」という前提で動くのが安全だ。
- EU責任者の選任と表示反映:EU域内に拠点を持つ責任者を指名し、契約を締結する。そのうえで、商品ラベル、パッケージ、そしてECサイトの商品リスティングのすべてに責任者の連絡先を反映させる。WooCommerce利用者であれば、商品編集画面のカスタム属性や専用プラグインで管理する方法が現実的だ。
- 技術文書の整備と保管:各商品のリスク評価書、安全テストの結果、技術仕様書などを収集し、体系的に保管する仕組みを作る。クラウドストレージ上にSKU別のフォルダを設け、いつでも取り出せる状態にしておく必要がある。
これらの対応は、VAT(付加価値税)の登録や通関手続きと同様に、EU市場でビジネスを行うための「必要経費」として捉えるべき段階に入っている。市場参入前にGPSR対策を計画しておくことが、結果的に最もコストのかからない道だ。
この記事のポイント
- GPSRはEU向けの非食品消費者製品ほぼ全てに適用される包括的な安全規制である
- 域外事業者はEU域内に「責任者」を指名し、商品ページに連絡先を表示しなければならない
- マーケットプレイスによる取り締まりは厳格で、違反時は即時に出品停止となるリスクがある
- トレーサビリティ情報と安全文書を最大10年間保管する義務が生じる
- VAT登録と同様に、事業運営の前提コストとして事前準備を進める必要がある

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AllegroがOpenAIと提携。欧州ECのAI活用戦略と日本市場への示唆
ポーランドのECプラットフォームAllegroが、ChatGPTで知られるOpenAIとの提携を発表した。この提携により、AllegroはOpenAIの先端AI技術へアクセスし、ECに特化した新たなAIソリューションを共同開発する。同時期に、販売者向けAIアシスタントのパイロット版も導入済みだ。
ECプラットフォームとAI企業の直接提携は、欧州市場で急速に進むAI実装競争の新段階を示している。ZalandoやAmazon、bol.comも同様のAIアシスタントを導入しており、Allegroの動きは「後追い」ではなく「標準化」を主導する狙いがあると見られる。本記事では提携の詳細と、日本のEC事業者が読み取るべきポイントを解説する。
重要なポイントは3つある。第1にプラットフォーム主導でAIを「売り手」と「買い手」双方に実装する流れが加速していること。第2にOpenAIとの提携が単なるAPI利用ではなく、EC特化モデルの共同開発を含むこと。第3にこの動きが欧州EC市場の「AI標準」を形成しつつあることだ。
AllegroとOpenAIの提携内容

・汎用AIのAPI利用(ChatGPT等)
・機能ごとに個別開発
・OpenAIの新モデルへの早期アクセス
・導入支援と最適化のサポート
Ecommerce News EUの記事によると、この提携にはECユースケース向けAIの共同設計・テスト・展開が含まれる。Allegroが掲げる目標は「買い物体験の簡素化」「販売者支援」「マーケティング効果の向上」「新製品開発の加速」の4点だ。
単なるAPI利用を超えた関係
一般的な企業のAI活用は、OpenAIやGoogleの提供するAPIを自社サービスに組み込む形が多い。今回の提携が異なるのは、ECに特化したAIモデルやユースケースを「共同で設計・開発」する点だ。AllegroはOpenAIの最新モデルや新機能に優先的にアクセスできる立場を得ることになる。
これは、汎用AIをEC向けにチューニングするだけでなく、ECプラットフォームが蓄積する購買データ・出品データ・行動ログを基にした独自AIの開発が可能になることを意味する。Allegroが欧州EC市場で先行者優位を築くための戦略的投資と見てよい。
AllegroのAI戦略と販売者向けアシスタント

Allegroは以前からAI投資を積極化してきた。モバイルアプリにはバーチャルショッピングアシスタントを導入し、ZalandoのAIファッションアシスタントやAmazonの類似機能と並ぶ水準を目指している。さらにGoogleともブラウザ内のインテリジェントショッピングアシスタントで協業中だ。
販売者向けAIアシスタントの機能
2026年5月初旬、Allegroはラスベガスで販売パートナー向けAIアシスタントを発表した。このツールはリアルタイムのインサイト提供、質問応答、品質スコアの解説、改善点の特定を行う。現在パイロットフェーズを終了し、まもなく本格提供が始まる。
2. 販売品質スコアの解説
3. 改善ポイントの自動特定
4. 出品最適化(予定)
5. 価格戦略支援(予定)
6. 物流サポート(予定)
今後の追加機能として、出品の最適化、価格設定、物流サポートが挙げられている。ECの売り手が日常的に直面する「価格競争」「在庫管理」「品質維持」という3大課題に対して、AIが直接的な解決策を提示する世界が近づいている。
購入者向けAIアシスタントとの両面展開
AllegroのAI戦略の特徴は「売り手」と「買い手」の両面にAIを実装している点だ。モバイルアプリのバーチャルショッピングアシスタントは購入者の商品検索や比較を支援し、販売者向けアシスタントは出品と運営を効率化する。この両面展開により、プラットフォーム全体の取引効率を高める設計になっている。
日本のECモールでもAIチャットボットの導入は進んでいるが、多くはカスタマーサポートの自動化にとどまる。Allegroのアプローチは「売上向上」と「運営効率化」に直結するAI活用であり、よりビジネスインパクトの大きい設計といえる。
欧州EC市場における競争構図

AllegroはポーランドのEC市場で最大手であり、自らを「ポーランド経済のフライホイール(弾み車)」と位置づけている。スロベニアやクロアチアの子会社を売却して財務をスリム化する一方、国際展開も継続中だ。4.2百万人の海外顧客を持つ。
Amazonとの対抗軸としてのAI
注目すべきは、Amazonがポーランドに50億ユーロ超の投資を発表している点だ。世界的なEC巨人が地元市場に本格攻勢をかける中、Allegroが選んだ対抗策が「OpenAIとの提携」と「AIによる差別化」だった。価格や物流網でAmazonと正面から戦うのではなく、AIによる販売者支援と買い物体験の質で独自の地位を築く戦略だ。
▶ 物流インフラの拡充
▶ 世界的ブランド力
▶ 販売者向けAIアシスタント
▶ 地元市場への深い理解
この構図は日本のEC事業者にとっても示唆に富む。大手モールや海外プラットフォームとの競争において、AIを活用した運営効率化や顧客体験の向上は、資金力や物流網の差を埋める有力な手段になり得る。
日本のEC事業者への実践的示唆

Allegroの事例はポーランドという特定市場の話だが、抽出できる教訓は国境を越える。以下では日本のEC事業者、特にWooCommerceを使った自社ECサイト運営者が今から取り組める施策を整理する。
AIアシスタントは「売り手支援」から始める
Allegroが最初に注力したのは販売者向けAIアシスタントだった。購入者向けのバーチャルアシスタントは導入コストが高く、精度への要求も厳しい。一方、販売者向けの「品質スコア解説」や「出品最適化提案」は、比較的導入ハードルが低く、売上への直接効果を測定しやすい。
WooCommerceサイト運営者であれば、以下のような段階的アプローチが現実的だ。まず商品説明文のAI生成、次に在庫切れ予測や価格最適化の自動提案、最終的にカスタマーサポートのAI化へと広げていく。重要なのは「一度に完璧を目指さない」ことだ。
プラットフォーム選定におけるAI視点
AllegroがOpenAIと直接提携した背景には、プラットフォーム事業者として「AIを外部委託するのではなく、自社の競争力の源泉として内製化する」という判断がある。自社ECサイトを運営する事業者も、カートシステムやホスティングサービスを選ぶ際に「AI機能の拡張性」を評価軸に加えるべき段階だ。
WooCommerceはオープンソースであり、OpenAI APIやGoogle AIとの連携プラグインがすでに多数提供されている。Shopifyなどのクローズドプラットフォームと比較すると、AI連携の自由度という点で優位性がある。この柔軟性を活かせるかどうかが、中規模EC事業者の今後の差別化要素になる。
ECとAIの今後 5年で何が起きるか

AllegroのCEOであるMarcin Kuśmierz氏は、Ecommerce News EUの記事によると「AIはECの運営方法を根本的に変革している」「我々のアプローチが欧州の次世代商業サービスの新標準を打ち立てると確信している」と述べている。この発言は単なるビジョン表明ではなく、実際にOpenAIとの提携と販売者向けAIアシスタントの導入で実行に移されている点が重要だ。
AIネイティブなECプラットフォームの台頭
今後5年で想定される変化はこうだ。商品検索はキーワードから自然言語対話へ移行し、価格設定はAIによる動的最適化が標準になる。在庫管理は需要予測AIが担い、カスタマーサポートの一次対応は完全自動化される。AllegroとOpenAIの提携は、こうした変化を「プラットフォーム標準機能」として実装しようとする試みだ。
価格 → 手動調整
在庫 → ルールベース発注
サポート → 有人チャット
価格 → AI動的最適化
在庫 → 需要予測AI
サポート → 完全自動化
日本のEC事業者がこの波に乗るために必要なのは、大規模投資ではない。まずは既存のWooCommerceサイトにAIプラグインを1つ導入し、商品説明の自動生成やレコメンドのAI化を試すことだ。小さな成功体験を積みながら、AIネイティブな運営体制へ徐々に移行するアプローチが現実的だ。
越境ECにおけるAIの役割
Allegroが海外展開を継続している点も見逃せない。AIアシスタントは言語の壁を低減し、海外市場への出品最適化を支援する。日本のEC事業者が越境ECを検討する際、AIによる翻訳・ローカライズ・価格最適化・カスタマーサポートは、これまで以上に強力な武器になる。
WooCommerceの多言語対応プラグインとAI翻訳を組み合わせれば、中小企業でも多言語ECサイトの運営は技術的に十分可能だ。Allegroの事例は、AIが大企業だけでなく、地域のプラットフォームや中小事業者にも競争力をもたらすことを示している。
この記事のポイント
- AllegroとOpenAIの提携はEC特化型AIの共同開発を含む、単なるAPI利用を超えた関係
- 販売者向けAIアシスタントがパイロット完了、リアルタイムインサイトや品質スコア解説を提供
- Amazonの50億ユーロ投資に対抗する差別化戦略としてAIを位置づけ
- WooCommerce運営者はAIプラグインから段階的に導入可能、オープンソースの柔軟性が強み
- 今後5年でEC運営の主要領域がAIネイティブへ移行、越境ECの障壁もAIが低減

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フランス当局調査、輸入製品75%がEU規則違反。EC事業者のリスクと対策
フランスの消費者保護当局DGCCRF(競争・消費・不正抑止総局)が発表した調査で、主要オンラインプラットフォームから輸入された製品の75%がEUの基準を満たしていなかったことが明らかになった。しかも46%は違反にとどまらず危険と判定されている。越境ECに取り組む事業者にとって、これは看過できない数字だ。
2025年に7つの海外オンラインマーケットプレイスから購入した600点以上の製品を分析した結果で、調査規模は前年の3倍に拡大された。2024年の欧州市場当局による調査では、SheinやAliExpress、Temuの製品の85%から95%がEU規則に違反していた。違反率の高止まりは、個別の問題ではなく構造的な課題であることを示している。
この記事では、フランス当局の調査結果の詳細と、EC事業者が越境販売で直面するコンプライアンスリスク、そして今後の対策について解説する。
調査の概要と違反率の実態

DGCCRFが2025年に実施した調査は、7つの海外オンラインマーケットプレイスから購入した600点以上の製品を対象としている。調査規模は前年比で3倍に増加しており、欧州の規制当局が越境ECの監視を急速に強化していることがわかる。
結果は衝撃的だ。分析された製品の75%がEU規則に適合せず、さらに46%は違反かつ危険と判定された。つまり、輸入製品のおよそ2つに1つが消費者の安全を脅かす可能性があるという計算になる。EC事業者であれば、自社の取り扱い商品がこの中に含まれていないか、真剣に確認すべき段階だ。
全電気製品が違反、子供向け製品も深刻
カテゴリー別に見ると、状況はさらに深刻さを増す。ヘアケア機器などの電気製品は、テストされた全製品が違反だった。しかも約4分の3が感電や火災のリスクを理由に危険と判定されている。
子供向け製品、宝石類、衣料品でも広範な違反が見つかった。窒息リスクや過剰な化学物質含有が主な問題として指摘されている。ECサイト運営者にとって、これらのカテゴリーを扱う際のリスク管理は喫緊の課題だ。
違反がビジネスモデルの一部になっている構造的問題
DGCCRFの記者会見で、ある当局者は「違反率が70%から75%に達する場合、それはもはや例外ではなく、ビジネスモデルの一部だ」と発言したとReutersが報じている。これは単なる失敗事例ではなく、低価格と迅速な販売を優先するあまり、安全基準を軽視する商習慣が常態化しているという指摘だ。
この発言は越境ECの構造的な問題を浮き彫りにしている。規制対応にコストをかけないことが、価格競争力を生み出す仕組みになっているのだ。適切なコンプライアンス対応を行う事業者が不公平な競争にさらされている現状とも言える。
この図が示すように、安全基準の検証プロセスを組み込むかどうかで、違反リスクに大きな差が生まれる。コストはかかるが、長期的に見れば罰金や販売停止のリスクを回避する投資と考えられる。
デジタルサービス法(DSA)による制裁リスク

フランス当局は調査結果を欧州委員会と共有すると発表した。これにより、対象となったプラットフォームには、EUデジタルサービス法(Digital Services Act、以下DSA)に基づき、全世界売上高の最大6%の制裁金が科される可能性がある。
DSAは2022年に成立したEUの包括的なデジタル規制だ。オンラインプラットフォームに対して、違法・危険な製品の流通防止を義務付けており、違反した場合の罰則は極めて重い。全世界売上高の6%という数字は、大規模プラットフォームにとって数十億ユーロ規模の負担になりうる。
欧州委員会はすでにShein、Temu、AliExpressに対する調査を進めている。今回のフランスの調査結果は、これらの調査を加速させる可能性がある。EC事業者がこれらのプラットフォームを通じて販売している場合、プラットフォーム側の対応変更による影響を事前に想定しておく必要があるだろう。
プラットフォーム事業者だけの問題ではない
DSAの制裁は主にプラットフォーム運営者に向けられるが、実際に商品を供給している出品者も無関係ではない。プラットフォームが規制対応を強化すれば、違反商品の出品停止やアカウント閉鎖といった措置が増えることが予想される。
また、WooCommerceなどを使って自社ECサイトを運営している事業者の場合、直接的にDSAの規制対象となるケースもある。EU域内向けに販売しているなら、プラットフォームの有無にかかわらず、製品安全規則の遵守は必須だ。
WooCommerce事業者が今すぐ取るべき対策

越境ECに取り組むWooCommerce事業者にとって、今回の調査結果は対岸の火事ではない。EU市場で継続的に販売するために、以下の対策を段階的に実施することを推奨する。
これらのステップは一見すると手間に感じるかもしれない。しかし、罰金や販売停止措置を受けた場合の損失に比べれば、予防的な投資として十分に割に合うはずだ。
WooCommerceの機能を活用したコンプライアンス表示
WooCommerceでは、商品ページに追加情報タブを設けたり、カスタムフィールドを使って認証情報を表示したりできる。たとえば、CEマーキングの画像や適合宣言書へのリンクを商品ページに組み込めば、消費者の信頼獲得にもつながる。
また、WooCommerceの出荷先制限機能を使い、EU域内への配送時にのみ警告文を表示するといった柔軟な対応も可能だ。越境ECを本格化させる前に、こうした細かな設定を見直す価値は大きい。
越境ECのコンプライアンス、待ったなしの状況

フランス当局の調査が示したのは、越境ECにおける製品安全規制の執行が本格化しているという現実だ。2024年の調査で85%から95%、2025年調査で75%という高い違反率が継続していることから、規制当局の目は今後さらに厳しくなると見て間違いない。
DGCCRFの当局者が述べた「もはや例外ではなくビジネスモデルの一部」という言葉は重い。低価格を武器にする越境ECのビジネスモデルそのものが、規制の網にかかりつつある。早い段階でコンプライアンス体制を整えた事業者が、長期的に生き残る可能性が高いと言えるだろう。
WooCommerce事業者は、小規模だから規制の対象外とは考えないほうがいい。EUの消費者保護法制は事業規模を問わず適用される。自社の取り扱い商品カテゴリーに応じたリスク評価と、サプライチェーンの見直しを今すぐ始めることを強く推奨する。
この記事のポイント
- フランス当局の調査で輸入製品の75%がEU規則違反、46%は危険と判定された
- 電気製品は全品が違反、子供向け製品でも窒息リスクや化学物質の問題が深刻化している
- デジタルサービス法(DSA)に基づき、プラットフォームに全世界売上高の最大6%の制裁金が科される可能性がある
- WooCommerce事業者はサプライヤー調査、第三者試験、商品ページでの認証表示を段階的に実施すべきだ
- 越境ECのコンプライアンス対応は待ったなし、早期対策が長期的な競争力につながる

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TemuとSheinの規制違反が生む不公平競争、ドイツ経済損失は年間24億ユーロ
調査結果が示す消費者心理は、価格だけでは説明できない。規制の有無によるコスト差がプラットフォーム間の構造的な優位性を生み、国内事業者の足を引っ張っているのが実態だ。
規制コンプライアンスの格差が生む不公正

TemuとSheinが批判される核心は、製品の安全性や環境規制への対応不足にある。EU市場で販売される商品には、CEマーキングやREACH規則、包装廃棄物指令など、消費者と環境を守るための厳格なルールが適用される。国内事業者はこれらの順守に多大なコストを割いている。
HDEの調査によれば、ドイツのオンライン販売事業者の90%が「規制対応の負担が重い、あるいは非常に重い」と感じている。一方、TemuやSheinはこのコストを回避、あるいは軽視することで圧倒的な価格競争力を実現している。同額の製品でも、国内事業者は安全試験やリサイクル登録、適切な表示義務に対応しなければ販売できない。
EU域外から直接消費者に届く小口貨物は税関の検査が追いつかず、規制違反が見過ごされるケースが後を絶たない。フランスでは最近実施された抜き打ち検査で、輸入された商品の最大75%がEU基準を満たしていなかったと報告されている。
ここで問題なのは、自由競争そのものではない。競争は市場の活力だが、同じ土俵に立っていなければ公正な競争とは呼べない。規制対応に真面目に取り組む事業者ほど不利になる構造は、経済全体の歪みを拡大させる。
雇用喪失は小売業だけで2万8300人

HDEの発表によると、TemuとSheinの台頭によってドイツ国内で4万件以上の雇用が失われた計算になる。このうち小売業だけでも2万8300人にのぼる。
ドイツ経済研究所のエコノミスト、Marco Trenz氏はheise onlineの取材に対し、「TemuとSheinが存在しなければ、購入の大部分はドイツの小売店で行われていた。その場合、より多くの従業員が必要になる」と説明している。毎日ドイツ国内に配送される46万個の小包の多くが、本来は国内店舗のレジを通っていたかもしれない需要だ。
雇用の喪失は単に職を失うという直接的なダメージだけでなく、地域経済の活力を奪う。実店舗は賃料を支払い、地域のサービス業を利用し、人を雇うことで街の経済を循環させる。EC事業者であっても、国内に拠点を置く事業者はこうした循環の一部だ。対して、越境プラットフォームの物流拠点や雇用は主に中国国内にあり、ドイツ国内への波及効果は極めて薄い。
1日に46万個の小包が届くという数字は、消費者に支持されている証拠でもある。だが、その支持の背景に規制回避による価格優位性があるならば、政策対応を検討しなければ小売業の雇用はさらに縮小するだろう。
税収でも年間4.2億ユーロの逸失

雇用だけでなく、税収面でも影響は深刻だ。調査では、連邦・州・地方自治体を合わせて年間約4億2000万ユーロの税収が失われていると推計されている。Trenz氏は「TemuやSheinではなく、ドイツの実店舗で購入されていれば、所得税、営業税、法人税も支払われていただろう」と指摘する。
越境ECの税制上のグレーゾーンは、以前から指摘されてきた。EUは2021年にVAT(付加価値税)の電子商取引ルールを改正し、域外事業者にも課税を義務付ける仕組みを導入した。だが実効性は限定的で、低価格を前面に出すプラットフォームでは、適正な関税や付加価値税が申告されないケースが後を絶たない。
事業者が国内で得た利益から納める法人税や営業税は、そもそも域外事業者にはほとんど期待できない。国内事業者は売上の一定割合をこうした税として納め、さらに従業員の源泉所得税も負担する。この税負担の非対称性が、価格競争に直接影響している。
税収の逸失は道路や教育、医療といった公共サービスに跳ね返る。最終的に不利益を被るのは、消費者でもあるドイツ国民自身だ。
業界団体が求める政策対応と今後の展望

HDEのAlexander von Preen会長は声明で次のように述べたと報じられている。「現在のデータは事態の深刻さを明確に示している。TemuとSheinによる大規模な規制違反は、小売業とドイツ経済全体に甚大な損害を与えている。政策立案者が長年の不作為の後に、ついに断固とした具体的な行動を取らなければ、ドイツのビジネス立地としての未来は暗い。どうしても効果がないなら、このような大規模な違反は停止されるべきだ。競争は良いものだが、公正でなければならない」
HDEは税関に対して取り締まり圧力の強化を求めている。具体的には、フランスですでに実施された輸入小包への的を絞った検査の強化をモデルとして挙げている。
EC事業者にとって、この問題は対岸の火事ではない。公正な競争環境が損なわれれば、規制を順守する事業者ほど不利になるという構造は、日本を含むあらゆる市場で再現される可能性がある。WooCommerceで構築した自社ECサイトを運営する事業者も、価格競争だけでなく、商品の安全性や環境対応といった「信頼の可視化」で差別化することが、これまで以上に重要になる。
この記事のポイント
- TemuとSheinの不公正競争により、ドイツ経済に年間24億ユーロの付加価値損失が発生している
- 国内小売事業者の90%が規制対応に重い負担を感じる中、越境プラットフォームは規制コストを回避し価格競争力を獲得している
- 小売業で2万8300人を含む計4万件以上の雇用喪失と、4.2億ユーロの税収逸失が推計されている
- HDEはフランス型の税関抜き打ち検査強化を求め、公正な競争環境の回復を訴えている

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