
Salesforce Winter ’27、マーケターが押さえるべき10の変更点
SalesforceのWinter ’27リリースにおける主要アップデートが公開された。マーケティング担当者に影響が大きい変更点は10項目あり、Agentforceによるキャンペーン自動化からボット調整済みクリック率まで幅広い。本記事では、ECやB2Bのマーケティング運用に関わる担当者向けに、各アップデートの実務的な意味を整理する。
Winter ’27は2026年8月下旬にプレビューサンドボックスへ展開され、本番環境へのリリースは9月4日、10月2日、10月9日の週末に段階的に行われる。Salesforceによると、全機能の一般提供は10月12日を予定している。組織が利用するインスタンスや製品によって更新日は異なるため、自社のリリーススケジュールを確認しておきたい。
Agentforceがキャンペーン運用を自動化する

Winter ’27で最も注目されるのは、Agentforce関連の新機能だ。マーケティング担当者の日々の業務を自動化するエージェントが複数追加された。特に影響が大きいのが、キャンペーン作成とリード育成を担う2つのエージェントである。
キャンペーン作成エージェントの実務インパクト
Salesforceは戦略立案からコンテンツ作成までを自動化するキャンペーン作成エージェントと、大量のリード獲得・育成に特化したエージェントを投入した。これまで単一の戦略をメール、SMS、ランディングページなど複数チャネルに展開する作業は、ツール間を行き来する煩雑なオペレーションになりがちだった。エージェントが一連の作業を引き受けることで、担当者は承認と戦略判断に集中できる。
このデモはキャンペーン運用の変化を概念的に示したものだ。実際のAgentforceはメールやSMS、ランディングページ向けのコンテンツを自動生成し、人間の承認を経て配信する。営業部門とマーケティング部門の往復が減ることで、キャンペーン立ち上げのスピードが大きく変わる。
メールに返信できる双方向エージェント
もう一つの注目機能は、マーケティングメールへの返信にAgentforceがリアルタイムで応答する「双方向メール」だ。従来のマーケティングメールは一方的な配信が基本で、見込み客が返信しても未対応のまま放置されることがあった。新機能ではエージェントが自動応答し、必要に応じてオムニチャネル受信箱を通じて人間の担当者へ引き継ぐ。購買意欲が高いタイミングで会話を始められる点が重要だ。
データ基盤と配信品質を強化する変更点

マーケティング成果の土台となるのが、データの正確さと配信の到達性だ。Winter ’27ではこの領域に複数の改善が入った。
メール到達性をリアルタイムで監視
Marketing Cloud NextとAccount Engagementのユーザー向けに、配信ボトルネックをリアルタイムで検出し、即座に解消するツールが追加された。これまで配信問題はキャンペーン終了後に発覚することが多く、ドメイン評価を傷つけてから対策するケースが少なくなかった。新機能は配信前に問題を検知し、対策を促す。
配信到達性はすべてのキャンペーン投資の前提になる。メールが届かない状態でクリエイティブやセグメントを改善しても成果には結びつかない。今回の変更で、配信インフラの健全性を維持しやすくなった。
重複プロフィールを減らすID解決ルールの拡張
データ品質の面では、ID解決ルールが拡張された。あいまいな名前表記を正規化し、メールアドレスや電話番号、住所を組み合わせて同一人物を判定するデフォルトのマッチングルールが追加されている。重複プロフィールはオーディエンス数を歪め、同じ相手に重複メッセージを送るコストを生む。プロフィール統合の精度が上がることで、セグメント設計やAIモデルの学習データが健全になる。
マーケティング運用をAIで効率化する

Winter ’27では、日常的な管理業務を自然言語で操作できる仕組みも拡充された。マーケティングオペレーション担当者の負荷を下げる変更だ。
MCPサーバーに40個の新ツール
Marketing Cloud EngagementのMCP(Model Context Protocol)サーバーに40個のツールが追加された。AIアシスタントがオートメーションの管理、コンテンツフォルダの整理、レコード操作などを実行できるようになる。これまではプラットフォーム管理やクエリ作成に専門知識が必要で、熟練スタッフの工数を毎週のように消費していた。自然言語で指示できる範囲が広がることで、経験豊富な人材はアーキテクチャ設計や戦略立案に集中できる。
このフローはMCPツールを活用した運用の一例である。実際にはMarketing Cloud Engagementの管理画面からAIアシスタントに指示を出し、裏側でMCPサーバーが対応するツールを呼び出す形になる。
コンテンツの再利用とパーソナライズ
チャネル横断コンテンツの管理も改善された。スクリプトベースのパーソナライズ、再利用可能な動的コンテンツブロック、一元管理できるブランドセンターが追加される。メール、SMS、ランディングページごとに似たメッセージ資産を作り直す運用は、コンテンツ負債とブランド不統一を生みやすい。一元化された資産を使えば、キャンペーン立ち上げが速くなり、すべての顧客接点でパーソナライズを一貫して適用できる。
レポートとプライバシー管理の精緻化

マーケティング成果を正しく測るための変更も入った。ボットによるクリックの除外と、トラッキングの細かい制御が主なポイントだ。
ボット調整済みクリック率
B2B Analytics for Marketersに加えて、クリック率レポートに自動ボットフィルタリングが導入された。セキュリティスキャナーなどの自動アクセスがクリック数を水増しすると、実際の見込み客がどのキャンペーンに反応したか分からなくなる。ボットを除外したクリーンなレポートにより、予算配分や最適化の判断を実際のオーディエンスデータに基づいて行える。
開封・クリック追跡の細かい制御
ビジネスユニット単位で、開封、リンククリック、高度な指標のトラッキングを個別にオン・オフできるようになった。地域ごとのコンプライアンス要件や社内のリスク許容度に合わせて、データ収集の範囲を調整しやすくなる。法務・コンプライアンス部門との連携がスムーズになり、顧客との長期的な信頼構築にもつながる。
このデモは設定の自由度を示す概念図である。実際には管理画面のトグルで各指標のトラッキングを個別に切り替える。
その他の管理機能アップデート

上記10項目以外にも、管理面のアップデートが複数含まれている。組織の構成によっては影響が大きいものもあるため、簡単に触れておく。
- 電話番号を非表示にしているユーザー向けのWhatsAppメッセージングサポート
- 複数アカウントのMarketing Cloudを単一のData Cloudインスタンスに接続するWhatsApp向け機能
- ユニークなクーポンコードと事前設定済みの小売ジャーニートリガー
- Journey Builderの判定スプリットに関する診断ログ
- 一括削除とコンテンツ整理ワークスペースの強化
- セキュリティダッシュボード、クライアントシークレット管理、フィッシング耐性認証
- プライバシー監査向けのデータ拡張アクセスログ
- Automation Studioにおける大文字小文字を区別しないファイル名トークン
Winter ’27にはセキュリティ関連のアップグレードも含まれている。管理チームは自社の設定に影響がないか、リリースノートの確認を推奨する。
この記事のポイント
- Agentforceがキャンペーン作成からメール返信までを自動化し、担当者は戦略に集中できる
- 配信到達性のリアルタイム監視とID解決ルールの拡張で、マーケティングの基盤が強化された
- MCPサーバーのツール追加により、自然言語での管理業務が拡大した
- ボット調整済みクリック率と細かいトラッキング制御で、レポート精度とプライバシー対応が両立する
- Winter ’27の一般提供は2026年10月12日を予定しており、組織ごとのリリース日程を確認する必要がある

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