
84万超の検索分析が示すAI Overviewの行動変容
GoogleがAI Overviewの表示を拡大するなか、検索結果上でのユーザー行動が大きく変わり始めている。Search Engine Journalが公開した最新の調査レポートでは、約84.6万件の米国ユーザーの検索セッションをもとに、クリック前の画面内行動を詳しく分析した。
同レポートの著者Eric Van Buskirk氏によれば、AI Overviewが表示されるとユーザーはSERP上に長く留まり、検索結果を何度も確認し、比較し、そしてクリックの判断を慎重に行うようになるという。この変化は、単にランキング上位を狙うだけであったこれまでのSEO戦略に再考を迫る。
今回は、同調査から明らかになった4つの核心的な発見と、それが自社サイトやブランドにとって何を意味するのかを、わかりやすく整理する。
1. AI Overviewは検索意図に関係なくSERP滞在時間を延ばす

調査データと分析手法の概要
今回の調査は、ClickStream SolutionsがSurfer SEOから提供された匿名化クリックストリームデータを解析したものだ。対象は2026年2〜3月の米国ユーザー約84.6万セッション。1秒間隔で取得されたカーソル位置情報を用いて、ユーザーが検索結果ページ上でどこを読み、どこで止まり、どの程度スクロールしたかを追跡した。
分析において特に重要なのが「残留率(滞留率)」だ。検索結果が表示されてから3秒後、6秒後…21秒後の各時点で、どれだけのユーザーがまだ同一のSERP上でアクティブな状態にあったかを、情報検索、ローカル、ナビゲーショナル(ブランド名検索)、トランザクショナル(購入意図)、動画の5つの検索タイプに分けて比較している。
AI Overviewが行動差を消し去る
AI Overviewが表示されていない場合、検索意図によってSERPからの離脱スピードは大きく異なっていた。最も早く離脱するナビゲーショナル検索では、21秒後にSERP上に残っているユーザーはわずか12%。反対に、地図や口コミ情報が豊富なローカル検索では、32%がまだアクティブだった。
ところがAI Overviewが表示された途端、この差がほとんどなくなる。同じ21秒後でみると、どの検索タイプでも42%〜49%のユーザーがSERP上に留まっており、全タイプがきわめて似た行動パターンを示すようになる。つまり、AI Overviewがある状況では、ユーザーはもともとの検索意図によらず、一様に時間をかけて情報を読み込むモードに切り替わっているのだ。
※21秒経過時点でのSEPR残留率。AI Overviewの有無で行動差が縮小する。
2. ブランド名検索ユーザーが最も大きな影響を受ける

勝手に来ると思われていたユーザーが変わる
最も顕著な変化が起きたのは、ナビゲーショナル検索、つまりブランド名やサイト名を直接入力して来るユーザー層だ。従来であれば、こうしたユーザーは迷いなく目的のサイトへクリックするため、SERPからの離脱は非常に早く、21秒後の残留率はわずか12%だった。
しかしAI Overviewが表示されたケースでは、同じブランド名検索でも21秒後に46%がまだSERP上に残っている。彼らは単にサイトのURLを見つけるだけでなく、AI Overviewの要約や周辺の情報を読んだり、検索結果を比較したりしながら、クリックするまでにより多くの時間をかけている。
カーソル移動範囲の拡大が示す「探る」行動
カーソル移動の分析でも同様の傾向が確認された。AI Overviewがない場合、ブランド名検索ユーザーのカーソルは非常に狭い範囲に集中し、画面全体に対する移動範囲はわずか8%だった。これは、目的のリンクだけを素早く探す行動パターンを示している。
一方、AI Overviewがあるとカーソルは画面の27.5%にまで広がる。彼らは結果のスニペットをあちこち読み返し、AI Overview内のテキストも追いながら、より広い視点で判断していることがわかる。ブランドにとっては、これまでほぼ確実に得られていた直接流入が、検索結果の質と情報の明快さによって左右されるフェーズに移行しつつあると言える。
3. ユーザーは素早くクリックせず、比較しながら熟読する

静止時間と画面カバー率の相反する増加
AI Overviewが表示されると、一見矛盾する2つのカーソル行動が現れる。ひとつはカーソルが静止している時間の増加で、セッション全体の44%が静止状態になる(AI Overviewなしでは29%)。もうひとつは、カーソルがカバーする画面範囲の拡大で、ビューポートの83%にまで及ぶ(同66%)。
この組み合わせは、ユーザーが「走り読み」から「立ち止まって読む」モードに切り替わったことを示唆している。断片的に情報を拾うのではなく、ある箇所でじっくりテキストを読んだあと、別のエリアにカーソルを移動してまた読む、という行動が繰り返されているのだ。
逆スクロールの多発が証明する比較検討
さらに決定的なのがスクロールの逆走だ。調査では、ユーザーがSERPを下にスクロールしたあと、再び上に戻る「逆スクロール」の発生率と、全スクロール量に占める逆方向スクロールの割合を計測した。AI Overviewがない場合、逆スクロールを経験するユーザーは51%で、その際の戻り量は全スクロールの27%だった。
ところがAI Overviewがあると、逆スクロール発生率は59%に上昇し、さらに逆方向スクロールが全スクロールの47.5%を占めるまでになる。つまり画面を上下に行ったり来たりしながら、複数の検索結果やAI Overviewの情報を照合しているのだ。この行動は、単なる上から下への「眺め」ではなく、能動的な比較検討が行われている証拠と言える。
↑ 逆スクロール (全体の27%)
↑ 逆スクロール (約47.5%)
※逆スクロールの比率がほぼ半々になり、上下に行き来する比較行動が増えたことがわかる。
4. 検索結果スニペットに求められる「精査に耐える情報」

タイトルとメタディスクリプションの重みが増す
これまでの検索行動のモデルは「上位の結果をざっと見て、一番適当なものをクリックする」だった。しかしAI Overviewが登場したいま、ユーザーは複数の結果をじっくり読み比べ、ときにはスクロールを戻して再確認しながら、最も信頼できる情報を選ぼうとする。
この変化が意味するのは、単に上位表示されているだけでは不十分で、検索結果のスニペット(タイトルとメタディスクリプション)が極めて重要になるということだ。曖昧で具体性のないスニペットは、一瞬のスキャンならクリックを誘えても、比較検討の場面では競合の明確な説明に負けてしまう。
ブランドが今すぐ見直すべきポイント
調査レポートから導かれる実務上の示唆は明快だ。まず、自社の検索結果の表示内容を「パッと見の印象」だけでなく、「じっくり読んだときに納得感があるか」という視点で見直す必要がある。
具体的には、タイトルタグに検索意図を明確に反映させ、メタディスクリプションにはページの独自価値を端的に盛り込む。AI Overviewが表示されるクエリでは、ユーザーは15〜20秒かけて熟考してからクリックするケースも増えている。その時間を味方につけるために、スニペットを「選ばれる理由」を語る場として設計することが重要だ。
5. この記事のポイント
- AI Overviewが表示されると、ユーザーは検索意図にかかわらずSERPに長く留まり、結果を比較検討する行動が顕著になる
- ブランド名を直接入力するユーザーでも、AI OverviewがあるとSERPでの滞留時間が4倍近くに伸び、クリックの確実性が低下する
- カーソルの静止時間増加と画面カバー率の拡大、逆スクロールの多発は、ユーザーが「走り読み」から「熟読比較」へ移行した証拠
- 検索結果スニペット(タイトルとメタディスクリプション)の情報の明快さが、クリック獲得の成否を分ける最重要ファクターになる

・ 複数業界における17年間のデジタルビジネス開発経験
・ ウェブサイト開発のためのHTML、PHP、CSS、Java等の実用的知識
・ 15ヶ国語対応の多言語SaaSの開発経験
・ 17年間にも及ぶ、Eコマース長期運営経験
・ 幅広い業界でのSEO最適化の豊富な経験

AI OverviewのCTRが61%減少 クリック数は横ばいという新データ
AI Overview(旧SGE)に自社ページが引用されるとCTR(クリックスルーレート/表示回数に対するクリック率)が大きく下がる。Search Engine Journalが紹介したSeer Interactiveの分析によれば、2025年第4四半期にブランド引用ページのCTRが前期比61%減少した。ところがクリック数そのものはほとんど動いていない。
一見すると深刻な数字だが、ダッシュボードの数字をどう読み解くかで評価は変わる。CTRが下がったからといって、すぐに「検索パフォーマンスが落ちた」と判断するのは早計だ。547万クエリを対象にしたSeerの分析をもとに、数字の裏側にある構造を整理する。
Q4に起きた数字の動き

10月のインプレッション急増がCTRを押し下げた
2025年9月時点で、AI Overview内にブランド引用されたページのインプレッション数は1,580万回、クリック数は398,798回、CTRは2.52%だった。これが10月になるとインプレッションが3,310万回へと倍増する。一方でクリック数は400,271回と微増にとどまり、CTRは1.21%に半減した。
CTRが急落した原因は、クリック自体が減ったわけではない。インプレッションの伸びがクリックの伸びを大きく上回ったことで、計算上のCTRが割り算の結果として下がったにすぎない。Search Engine Journalの記事でも「これはパフォーマンスの崩壊ではなく、クリックより速くインプレッションが成長したことによる数学的な問題だ」と指摘されている。
11月は別のパターン
11月になると傾向が変わる。インプレッションは3,950万回へさらに増えたが、クリック数は301,783回に減少し、CTRは0.76%まで落ち込んだ。インプレッションが増えているのにクリックが減る。10月とは異なる動きだ。
Seerのデータではこの原因を特定できていない。Search Consoleのデータを月ごとに分けて分析することの重要性がここにある。四半期でまとめて「CTR61%減」とだけ見ると、10月の数学的要因と11月の実質的なクリック減が混ざってしまう。
CTR低下に隠れた2つの解釈

Seerの分析が明確に切り分けられなかった点がある。10月のインプレッション急増が「GoogleがAI Overviewを表示するクエリを増やしたから」なのか、「各ブランドがSEO施策で引用を獲得したから」なのかは、集計データだけでは判断できない。
前者なら、検索結果の表示形式が変わっただけで、自社の実力とは関係ないノイズだ。後者なら、SEOの成果として素直に評価できる。多くのサイト運営者はこのどちらかに直面しているはずだ。ダッシュボードのインプレッション増加をどう読むかは、アカウント単位でクエリを掘り下げないとわからない。
CTRが下がったときに確認すべきは、同じ期間のインプレッション数だ。インプレッションが増えているなら、表示機会自体は拡大している。クリック数が横ばいか微増であれば、問題の本質はCTRの低下ではなく、表示回数あたりのクリック効率が薄まったという話になる。
これまでのAI Overview CTR研究との整合性

AI Overview表示時のクリック率は軒並み低い
AI Overviewが表示されるとオーガニック検索結果のCTRが下がることは、複数の調査で報告されている。Ahrefsが1億4,600万件の検索結果を分析した調査では、AI Overviewの表示トリガー率が20.5%に達し、特に情報検索や質問形式のクエリで高いとされた。
ドイツで実施されたSISTRIXの分析では、AI Overview表示時に検索順位1位のCTRが59%低下した。Pew Researchの調査でも、米国ユーザーのクリック率はAI Overview表示時に8%、非表示時は15%だった。AI Overviewが上位を占有することで、その下にある従来の検索結果へのクリックが奪われる構造は、国やクエリタイプを問わず共通している。
引用の有無がクリック効率を左右する
Seerのデータでは、AI Overview内でブランド引用されたページは、引用されていないページよりインプレッションあたりのクリック数が約120%多い。AI Overviewに自社ページが表示されること自体には、一定のクリック獲得効果がある。
ただし、AI Overviewが表示されない通常の検索結果と比べると、引用ページのクリック効率は38%低い。引用は「ないよりはマシ」だが、かつての1位表示の代替にはなっていない。Search Engine Journalはこの点を「引用は助けになるが、以前の順位を取り戻すものではない」と総括している。
実務にどう活かすか

AI Overview関連のCTR低下に直面したとき、まず確認すべきはクリック数の絶対値だ。CTRが下がっていても、クリック数が維持または微増しているなら、それは表示機会の拡大に伴う希釈であり、検索パフォーマンスの低下ではない。
Seerが指摘しているように、ベンチマークはあくまで傾向を示す参考値であり、自社データの実数を見るのが基本になる。インプレッションとクリックの増減を月単位で分解し、CTRだけを追わない分析習慣が求められる。
また、2025年12月から2026年2月にかけてAI Overview表示時のオーガニックCTRが1.3%から2.4%へ上昇したというデータもある。ただしSeerはこれを「回復というより横ばいへの落ち着き」と評価しており、2か月分のデータで先行きを予測するのは避けるべきだとしている。
この記事のポイント
- AI Overviewのブランド引用ページCTRはQ4で61%減少したが、クリック数はほぼ横ばい
- 10月はインプレッション急増による数学的CTR低下、11月は実質的なクリック減と原因が異なる
- インプレッション増がGoogleの仕様変更か自社SEOの成果かは、アカウント単位の分析が必要
- CTRだけを見ず、インプレッションとクリックの絶対数を月別に追うことが実務では重要

・ 複数業界における17年間のデジタルビジネス開発経験
・ ウェブサイト開発のためのHTML、PHP、CSS、Java等の実用的知識
・ 15ヶ国語対応の多言語SaaSの開発経験
・ 17年間にも及ぶ、Eコマース長期運営経験
・ 幅広い業界でのSEO最適化の豊富な経験
