
Googleが商品カルーセルを欧州で削除、EC事業者の有機的流入が激減
Googleが2026年9月、欧州経済領域(EEA)で商品カルーセルの表示をほぼ全廃した。EC事業者がGoogle検索からオーガニックで顧客を獲得する主要経路が突然消えた形だ。
オランダの分析プラットフォームProductriseの計測では、EEA圏内の商品カルーセル表示回数は90〜100%減少している。英国や米国では変化がない。この変更は欧州のEC事業者だけに影響する。
デジタル市場法(DMA)への対応が理由で、Googleは29年の歴史で最大の検索品質低下と述べる。この記事では、変更の実態、EC事業者への影響、そして取るべき具体的な対策を解説する。
商品カルーセル消失の実態

商品カルーセルとは何か
商品カルーセルとは、Google検索で商品名を入力した際に検索結果の上部に表示される横並びの商品一覧だ。商品画像、商品名、価格、ショップ名が一目で確認でき、ユーザーは検索結果から直接商品ページへ遷移できる。EC事業者にとっては、Google Merchant Centerに商品情報を登録するだけでオーガニック流入を得られる重要な表示だった。
このデモは検索結果の表示変化を示している。商品カルーセルが消え、ショップリストに置き換わった。
90〜100%という減少幅
Productriseは数千件の検索クエリを毎日追跡している。同社の計測によると、ドイツ、フランス、オランダ、ベルギー、スウェーデンの5カ国で商品カルーセルの表示回数が90〜100%減少した。Productrise創設者のHugo Huijer氏は「わずか数日で90〜100%の減少が見られる。一方、英国、米国、オーストラリアなどEEA圏外では変化がない」とEcommerce News Europeに語っている。
EEAはEU加盟27カ国にノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインを加えた30カ国で構成される。対象となるのはこの30カ国に限られ、日本を含むEEA圏外の検索結果では従来通り商品カルーセルが表示される。
DMA(デジタル市場法)遵守が理由

DMAの概要とGoogleの判断
DMA(Digital Markets Act / デジタル市場法)は、巨大プラットフォーム企業による市場支配を規制するEU法だ。2022年に成立し、Google、Apple、Meta、Amazon、Microsoftのような「ゲートキーパー」と指定された企業に対し、自社サービスを競合より有利に扱うことを禁じている。
Googleは、商品カルーセルがDMAの「自己優遇の禁止」条項に抵触する可能性があると判断した。商品カルーセルはGoogle Shoppingという自社サービスへの誘導を促進する機能であり、競合する価格比較サイトやアグリゲーターを不利にする。この判断に基づき、EEA圏内では商品カルーセルを削除し、代わりにショップ名とアグリゲーターのリストを表示する方式に切り替えた。
Shoppingタブの消滅
ドイツの業界プラットフォームSEO SüdwestのKristian Kunz氏によると、GoogleのタブナビゲーションからShoppingタブも削除された。「その他」メニューにも表示されず、残っているのはGoogle Shopping Ads(有料広告)のみだ。Googleは今回の変更について「29年の歴史で最大の検索品質低下」と述べている。これは同社の主張であり、DMA対応がいかに抜本的な変更であるかを示す言葉だ。
ここで重要なのは、変更の対象が「オーガニック表示」に限定されている点だ。Google Shopping Adsは有料広告であり、DMAの規制対象外としてEEA圏内でも引き続き表示される。Googleにとって広告収入は維持される構造となっている。
EC事業者への影響を読み解く

中小事業者と大手の明暗
この変更の影響は事業規模によって異なる。中小規模のEC事業者は、オーガニック検索からの商品ページへの直接流入が大幅に減る。商品カルーセルは商品名、価格、画像を直接検索結果に表示していたため、ユーザーがクリックする前に商品情報を確認し、そのまま商品ページに遷移できた。この経路が絶たれたことで、商品個別ページへの流入は激減する。
このデモは流入経路の変化を示している。直接流入から間接流入へと質が変わった。
一方、大手小売業者にはプラスに働く面もある。ブランド認知度が高い大手は、ユーザーが直接サイト名やブランド名を検索する「ブランド検索」からの流入が増える可能性がある。Hugo Huijer氏も「多くの企業が戦略の基盤としてきた機能が消えた」と指摘しつつ、この変化を「オーガニック可視性の根本的な転換」と表現している。
Google Merchant Centerの価値低下
Google Merchant Centerへの商品登録の価値も大きく下がった。従来は登録した商品情報が商品カルーセルやGoogle Shoppingタブに表示されていたが、これらのオーガニック表示が消えた今、Merchant Centerへの登録は商品広告(Google Shopping Ads)を出稿する場合を除き、オーガニック流入を生まない。Kunz氏は「SEO for productsも、少なくともGoogle Shoppingに直接関係する施策に関しては重要性が低下した」と述べている。
EEA圏内のEC事業者が取るべき対策

カテゴリーページのSEO強化が最優先
Productriseは、商品カルーセルの代替としてカテゴリーページがオーガニック検索で重要性を増すと予測している。カテゴリーページとは、「ランニングシューズ」「ワイヤレスイヤホン」のような商品群をまとめたページだ。商品個別ページではなく、カテゴリーページが検索結果の上位に表示される可能性が高まる。カテゴリーページのタイトル、メタディスクリプション、コンテンツ、内部リンクを最適化する必要がある。
WooCommerceを使っているECサイトの場合、カテゴリーページの構造は比較的最適化しやすい。WooCommerceの商品カテゴリーはアーカイブページとして自動生成されるため、カテゴリーの説明文、タイトル、メタ情報を設定するだけで基本的なSEO対策ができる。さらに商品カテゴリーごとに固有のコンテンツを追加することで、検索エンジンからの評価を高められる。例えば「ランニングシューズ 選び方」のような購買ガイド記事をカテゴリーページに組み込むと効果的だ。
ショッピング広告と価格比較サイトの活用
オーガニック表示が消えたことで、有料広告の価値が相対的に高まった。Google Shopping AdsはEEA圏内でも引き続き表示されるため、予算に余裕がある事業者はショッピング広告への投資を増やすことを検討すべきだ。広告費は増えるが、商品カルーセルが消えたことで競合の有機的な露出も減少しており、広告のクリック率や費用対効果が改善する可能性がある。
同時に、価格比較サイトやアグリゲーターへの掲載を強化することも有効だ。Googleが表示するショップリストには、価格比較サイトやアグリゲーターが並ぶ。これらのサイトに商品を掲載することで、間接的にGoogle検索からの流入を確保できる。手数料は発生するが、オーガニック流入が激減した現状では、顧客獲得コストとして捉える必要がある。
このデモはEC事業者が取るべき対策を4つのステップで示している。優先順位の高い順に並んでいる。
ブランド検索の強化と分散戦略
四つ目に、ブランド検索の強化がある。ユーザーが「ショップ名+商品名」で検索した際に、自社サイトが確実に上位表示されるようにする。Googleが商品カルーセルを削除しても、ブランド検索には影響がないためだ。ブランドの認知度を高めるためのコンテンツマーケティング、SNS活用、メールマーケティングにも投資すべきだ。特定のプラットフォームに依存しすぎない「分散戦略」が、今回のような突然の仕様変更への備えとなる。
この記事のポイント
- GoogleがEEA圏内で商品カルーセルを削除、表示回数は90〜100%減少した
- DMA(デジタル市場法)対応のためで、Shoppingタブも消滅した
- カテゴリーページのSEO強化が今後の最重要課題となる
- Google Shopping Adsと価格比較サイトへの掲載が代替流入手段として浮上する
- 中小EC事業者は直接流入の減少で打撃を受け、大手はブランド検索で恩恵を受ける可能性がある

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Google、匿名化検索データを競合と共有へ EUのDMA決定の全容
EUの欧州委員会が2026年7月16日、Googleに対して2つの拘束力のある決定を下した。検索データを匿名化した上で競合他社と共有すること、そしてAndroidの一部機能を競合AIアシスタントに開放することだ。いずれもデジタル市場法(DMA)に基づく措置である。
この決定の影響は検索エンジンにとどまらない。AIチャットボットも対象に含まれており、検索とAIが融合しつつある現在の状況において、今後の競争環境を左右する転換点となる可能性が高い。
DMAに基づく2つの決定の全体像

今回の決定は、欧州委員会が2026年4月に公開協議を経て暫定的な見解を示していたものを最終化した形だ。2つの柱で構成されている。
- 検索データの共有義務。Googleの検索結果に関するクエリ、クリック、閲覧、ランキング位置の匿名化データを、公正かつ非差別的な条件で競合に提供すること
- AndroidのAI相互運用性の確保。競合AIアシスタントが音声起動やアプリ内操作を実行できるよう、OSレベルの機能を開放すること
違反時の罰金を伴う独占禁止法の案件とは異なり、DMAに基づく今回の措置は構造的な是正を目的とする。欧州委員会は、Googleの現在のデータ共有の取り組みは不十分だと明確に指摘している。
この図で示した通り、データ共有の枠組みが整うことで、競合検索エンジンやAIチャットボットはGoogleが長年かけて蓄積してきた規模の検索インタラクションデータを活用できるようになる。
検索データ共有の具体的な仕組みと対象範囲

共有されるデータの内容
共有対象となるのは、Google検索の無料・有料を問わずすべての検索結果から生成される匿名化データである。具体的には以下の情報が含まれる。
- 検索クエリ(ユーザーが入力した検索語句)
- メタデータ(使用言語、デバイスの種類)
- 表示されたURL一覧
- ユーザーのクリックや閲覧といったインタラクション情報
- 検索結果内での表示位置(ランキング)
一方で、Googleのランキングアルゴリズムそのものは共有対象外だ。また個人を特定できる情報(アカウント詳細、検索履歴、タイムスタンプ、極端に稀または長大なクエリ)は除外される。
利用資格と審査プロセス
このデータを利用できるのは誰でもない。欧州委員会が定めた要件を満たす必要がある。
- EU圏内で月間5万人以上のユーザーを持つこと
- 2年以上の事業運営実績があること。新規参入企業の場合は投資実績による代替審査を受けること
- セキュリティ審査と独立監査を通過すること
これらの条件をクリアした事業者のみが、Googleとライセンス契約を結びデータの提供を受けることができる。データ価格は市場レートではなくコスト回収ベースで算定される。
AIチャットボットについても、DMA上でオンライン検索エンジンと見なされるものは利用資格がある。ただしデータの用途は、自社の検索・ランキングシステムの改善に限定され、汎用AIモデルの学習やGoogleの検索結果の複製には使用できない。
AI検索時代におけるデータの重要性

この決定が単なる検索エンジン間の競争を超えた意味を持つのは、AIチャットボットが回答を生成する仕組みと深く関わるからだ。
グラウンディングと検索データ
AIチャットボットが正確な回答を返すためには「グラウンディング(事実確認のための根拠付け)」と呼ばれるプロセスが欠かせない。最新のWebデータを参照し、回答の確からしさを検証する仕組みだ。
Googleは自社のAIに対して「FastSearch」というシステムでグラウンディングを行っている。これはGoogle自身の検索ランキング信号に依存する仕組みであり、当然ながら競合には提供されていなかった。
今回の決定で共有される匿名化データ(クエリ、クリック、閲覧、結果位置)は、競合各社が独自の情報検索・ランキングシステムを構築するための材料となる。グラウンディングもこの用途の一つとして認められている。
検索トラフィックへの影響は限定的か
短期的に見れば、Webサイト運営者が感じるトラフィックへの影響は限定的だろう。SE Rankingのデータによると、2026年1月時点で全AIプラットフォームを合わせた紹介トラフィックは、世界のインターネットトラフィック全体の約0.24%に過ぎない。
データへのアクセスが改善されれば競合エンジンやチャットボットの開発が進む可能性はあるが、それだけでユーザーの検索行動が一気に変わるわけではない。重要なのは、このデータを実際に製品開発に活かせるかどうかだ。
AndroidのAIアシスタント開放

2つ目の決定はAndroidに関するものだ。GoogleはOSレベルの機能を競合AIアシスタントに開放する義務を負う。
- ユーザーが「Hey Google」のような音声コマンドで競合アシスタントを起動できるようにすること
- 競合アシスタントがアプリ内で動作し、タクシーの予約や返信文の作成といった操作を実行できるようにすること
Google自身のGeminiアシスタントはすでにこのレベルのアクセス権を持っている。今回の決定はこの非対称性を是正するものだ。
主な機能の実装期限は次期メジャーリリースのAndroid 18、遅くとも2027年8月1日までとされている。複数のアシスタントが異なるウェイクワードで同時応答できる機能にはさらに1年の猶予が与えられ、2028年8月1日が期限となる。
Googleの反応とプライバシーをめぐる議論

Googleは両方の決定に反対の立場をとっている。Alphabetのグローバル問題担当プレジデントであるKent Walker氏は公式ブログで、「数百万人の欧州市民にとって不可欠なプライバシーとセキュリティの防御線を損なうリスクがある」と表明した。
同氏はまた、GoogleがDMAの目的に沿った解決策を繰り返し提案してきたことも強調している。検索データの共有については、適切な匿名化やユーザーの知識・同意なしに、欧州の検索データが見知らぬ企業に開示されることへの懸念を示した。
これに対し欧州委員会は、匿名化のプロセスが多層的な技術処理と契約上の保護措置で構成されており、内部および外部のプライバシー専門家の関与のもとで開発されていると説明する。Googleはデータ共有前にサイバーセキュリティやデータ保護の基準に基づいて申請者を審査できる。独立したテストで保護措置が不十分と判明した場合は、措置の見直しも可能だ。
今後の展開とスケジュール

2026年後半は、Googleがデータセットの整備と提供条件の策定に費やす期間となる。価格提案の期限は遅くとも2027年1月だ。各事業者はライセンス契約と価格合意を経て、それぞれのスケジュールでデータ提供を受けることになる。
Android側の主な変更は2027年8月1日、複数アシスタントの同時音声起動は2028年8月1日が期限だ。欧州委員会はこれらの措置を2年ごとに見直し、匿名化が不十分と判断されれば再検討を行うとしている。
この決定が実際に検索エンジンやAIチャットボットの多様化を促すかどうかは、資格審査を通過する事業者の顔ぶれと、提供されたデータをどれだけ製品開発に活かせるかにかかっている。すぐに目に見える変化はないが、中長期的には検索とAIの競争環境を変える可能性を秘めた決定と言えるだろう。
この記事のポイント
- EU欧州委員会がDMAに基づき、Googleに匿名化検索データの共有とAndroidのAIアシスタント開放を義務付ける決定を下した
- 共有対象はクエリ・クリック・閲覧・結果位置のデータで、ランキングアルゴリズム自体は対象外。AIチャットボットも利用資格あり
- Googleはプライバシーとセキュリティへの懸念を表明しているが、欧州委員会は多層的な匿名化と審査プロセスで対応
- 短期的な影響は限定的だが、中長期的には検索とAIの競争環境に変化をもたらす可能性がある

・ 複数業界における17年間のデジタルビジネス開発経験
・ ウェブサイト開発のためのHTML、PHP、CSS、JavaScript等の実用的知識
・ 15ヶ国語対応の多言語SaaSの開発経験
・ 17年間にも及ぶ、Eコマース長期運営経験
・ 幅広い業界でのSEO最適化の豊富な経験
