
Gemini Omni登場、マルチモーダル動画生成の新時代
Google DeepMindは2026年5月17日、新たなマルチモーダル生成AIモデル「Gemini Omni」を発表した。テキスト、画像、音声、動画といったあらゆる形式の入力を組み合わせ、高品質な動画を生成・編集できる点が最大の特徴だ。
ファーストモデルとなる「Gemini Omni Flash」は、発表と同時にGeminiアプリ、Google Flow、YouTube Shortsで提供が開始された。自然言語による会話形式での動画編集や、現実世界の物理法則を反映したリアルな映像生成が可能になっている。
この記事では、Gemini Omniが従来の動画生成AIと何が異なるのか、具体的な機能とその仕組み、そしてコンテンツ制作の現場にもたらす変化について解説する。
上の概念図にあるように、Gemini Omniの最大の進化はインプットの柔軟性にある。テキストプロンプトだけでなく、画像や音声、既存の動画そのものを「参照素材」として組み合わせ、そこからまったく新しい映像を生み出せるのだ。DeepMindの記事によれば、将来的には画像や音声の出力にも対応する予定だという。
自然言語で動画を編集する新体験

Gemini Omniが提供する最も画期的な機能のひとつが、会話形式による動画編集だ。従来の動画編集は、タイムライン上でクリップを切り貼りし、エフェクトを重ねる作業の連続だった。Omniでは、編集内容を自然言語で指示するだけで、AIが映像を理解して変更を加える。
DeepMindの発表によれば、Omniは過去の指示内容を記憶し、編集のたびに映像全体の一貫性を維持する。登場人物の見た目や物理法則、シーンの流れが破綻しない。これは単なる「映像の切り貼り」ではなく、AIが映像の文脈を理解しているからこそ実現するものだ。
映像の一部を変更、または一変させる「トランスフォーム」
Omniは、映像内の特定のオブジェクトだけを変更する、あるいはシーン全体をガラリと変えることができる。DeepMindのデモでは、「彫刻をバブル材質に変える」というプロンプトで、彫刻だけが泡状に変化する映像が紹介されている。
この機能は、例えば商品紹介動画の背景だけを差し替えたい、プロモーション映像の季節感を変更したいといった実務ニーズに直結する。撮影済みの映像を素材として、新たなクリエイティブの出発点にできるのだ。
アクションを再構築し、予想外の映像を生成
撮影済みの動画に対して「このシーンで起こっていることを変えてほしい」と指示するだけで、Omniは映像内のアクションそのものを再構築する。新しいキャラクターの追加も、光が音楽に同期して灯るような複雑な演出も可能だ。
発表資料には「手が鏡に触れた瞬間、鏡が美しい液体のように波打つ」というプロンプト例が掲載されている。こうした物理法則に基づく映像表現は、従来の動画生成AIでは難しかった領域だ。
複数ターンにわたる動画の洗練
Omniの編集は、1回の指示で終わらない。環境の変更、アングルの切り替え、スタイルの変更、特定のディテール調整といった指示を段階的に重ねることで、映像を徐々に洗練させていける。DeepMindは「バイオリニストの演奏動画」を例に、環境変更→バイオリンを透明化→肩越しのアングル変更という一連の編集を示している。
この「対話的な編集の積み重ね」は、ディレクターが編集者に指示を出す感覚に近い。クリエイティブの方向性を言葉で伝え、結果を見ながら微調整するワークフローが、AIによって実現しつつある。
世界知識が映像にリアルな文脈を与える

Gemini Omniのもうひとつの核は、Google DeepMindが「世界知識(world knowledge)」と呼ぶ能力だ。Omniは単に見た目がリアルなシーンを構築するだけでなく、「次に何が起こるべきか」を推論する。物理法則、歴史的事実、科学的知識、文化的文脈を踏まえた映像生成が、単なるフォトリアルを超えた説得力のあるストーリーテリングを可能にする。
より正確な物理演算の再現
Omniは重力、運動エネルギー、流体力学といった物理法則の直感的な理解が従来よりも改善されているという。DeepMindが示した「ビー玉が高速でカラクリ装置の上を転がる連続ショット」のプロンプト例では、ビー玉の動きが物理的に破綻しない映像が生成された。
動画制作の現場では、物理演算が破綻した映像は視聴者に違和感を与え、説得力を損なう。特に製品の動作デモや、教育用の科学解説動画では、物理的正確さが信頼性に直結する。Omniのこの改善は、商用・教育コンテンツの品質を引き上げる要素だ。
知識と創造性の融合
Omniはパターンマッチングを超えたレベルで、言語と映像、意味を結びつける。DeepMindの例として挙げられた「AからZまでの珍しいアイテムを各文字ごとに表示する動画」では、カピバラ(C)、ディスコグローブ(D)、ラバランプ(L)といった具合に、各文字に対応するアイテムをAIが自律的に選定し、映像化している。
これは「指示された映像を生成する」というより、「概念を理解した上で映像化する」という質的に異なる能力だ。クリエイターがアイデアを言葉で伝えれば、AIがそれを映像的な表現に落とし込んでくれる。企画段階でのモックアップ作成や、プレゼンテーション用のビジュアル資料作成が大幅に効率化する可能性がある。
複雑な概念を視覚化する説明動画の生成
Omniは短いプロンプトから、複雑な概念をわかりやすく解説する説明動画を生成できる。DeepMindの例では、タンパク質の折り畳み(プロテインフォールディング)を、すべて粘土で作られたクレイメーション(粘土アニメ)風の映像で解説したデモが紹介された。
「複雑なトピックを短時間で視覚化できる」という点は、教育コンテンツや企業の研修資料、製品のオンボーディング動画など、幅広い用途に応用できる。特にスタートアップや中小企業にとって、高品質な説明動画を低コストで制作できる可能性は大きい。
あらゆる組み合わせから動画を生成する力

Gemini Omniのインプットの柔軟性を示す機能として、DeepMindは「複数形式の参照入力」を強調している。画像、テキスト、動画、音声のいずれかを「参照素材」として与えることで、それらをブレンドしたひとつの映像を生成できる。
現時点で音声入力は「声」による参照のみサポートされているが、DeepMindは他の形式の音声入力にも順次対応していく方針だ。画像からキャラクターの外見を、動画から動きのパターンを、音声からリズムやトーンを取り込むといった複合的な制作が可能になる。
画像・音声・動画を「参照」して統一された映像を出力
DeepMindの発表では、3つの異なる素材(画像、動画、音声)を組み合わせて「SF映画風の映像」を生成する例が示された。画像でシーンのスタイルを、動画でカメラワークやエフェクトを、音声で映像のリズムをコントロールできる。
別の例では、人物のイラストとウォークサイクルの動画を組み合わせて、歩きながらリアルな実写映像に変化していく映像を生成している。これらは、クリエイターが持つ複数の素材アセットをAIが「調和」させてひとつの作品に仕上げるという、新しい制作フローを示唆する。
スタイル、動き、エフェクトを自在に適用
参照素材を使うことで、映像のスタイル、動き、エフェクトを細かくコントロールできる。プロンプトだけで指示する場合と比べて、参照素材があることで「こういう感じ」というニュアンスをAIに正確に伝えやすくなる。
「スケートボードにアニメーションのモーションエフェクトを追加する」という例では、撮影済みの映像とAIによるエフェクト生成がシームレスに融合した。実写とCGの境界線が曖昧になっている現在、Omniは実写素材を出発点に、AIによる拡張を重ねるというハイブリッドな制作スタイルを加速させるだろう。
自分のアバターで動画を制作、そして責任ある開発

Google DeepMindは、AIの責任ある開発と利用のためのポリシーを明確にしている。その一環として提供されるのが「Avatars」機能だ。これは自分の声と姿をデジタル化したアバターを作成し、そのアバターを使って動画を生成できるというもの。
デジタルアバター機能
アバター機能を使うと、生成された動画はユーザー自身の声と姿を反映したものになる。これはパーソナライズされたコンテンツ制作を可能にする一方、なりすましや悪用のリスクもはらむ。DeepMindは、音声や発話を伴う動画編集機能については、テストを重ねた上で責任ある形での提供方法を模索している段階だとしている。
SynthIDによる電子透かしとコンテンツの透明性
Omniで生成されたすべての動画には、人間の目では認識できないSynthIDのデジタル透かしが埋め込まれる。これにより、GeminiアプリやChrome、Google検索を通じて、その動画がAIによって生成されたものであることを簡単に検証できる。
AIによるコンテンツ生成が一般化するにつれ、その真正性を担保する仕組みの重要性は高まっている。動画メディアの信頼性に関わるこの取り組みは、プラットフォームとしてのGoogleの姿勢を示すものだ。Web制作者やマーケターにとっては、配信する映像コンテンツの透明性を確保する手段として注目に値する。
Gemini Omniの利用を開始するには

現在提供されているのは「Gemini Omni Flash」モデルで、Google AI Plus、Pro、Ultraの各プラン加入者がGeminiアプリとGoogle Flowで利用できる。また今週より、YouTube ShortsとYouTube Create Appでは無償で提供が開始される予定だ。
今後数週間以内には、API経由で開発者やエンタープライズ顧客にも提供が拡大される。これにより、既存の制作ワークフローやサービスにOmniの動画生成機能を組み込んだアプリケーションの登場が期待される。
この記事のポイント
- Gemini Omniはテキスト・画像・音声・動画の組み合わせ入力に対応した動画生成AIで、最初のモデル「Flash」が提供開始された
- 自然言語による会話形式で動画を編集でき、複数ターンの指示で映像を段階的に洗練できる
- 物理法則や世界知識に基づいたリアルで一貫性のある映像生成が可能になった
- 生成動画にはSynthIDの電子透かしが埋め込まれ、コンテンツの透明性が確保される
- API提供により、今後のサービス連携や制作フローへの組み込みが加速する見込みだ

・ 複数業界における17年間のデジタルビジネス開発経験
・ ウェブサイト開発のためのHTML、PHP、CSS、Java等の実用的知識
・ 15ヶ国語対応の多言語SaaSの開発経験
・ 17年間にも及ぶ、Eコマース長期運営経験
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