
GPT 5.6 Sol、Terra、LunaがAI Gatewayで利用可能に
GPT 5.6の3モデルがAI Gatewayで利用可能に

OpenAIの最新モデルシリーズ「GPT 5.6」が、VercelのAI Gatewayで限定的なプレビュー提供を開始した。Sol・Terra・Lunaの3モデルが揃い、いずれもコーディングや生物学、サイバーセキュリティといったエージェント的なタスクで従来世代より強化されている。トークン効率も向上しており、同等の処理をより少ないコストで実行できるのが特徴だ。
AI Gatewayは複数のAIプロバイダに統一APIでアクセスできるサービスで、利用状況の追跡やコスト管理、リトライやフェイルオーバー、パフォーマンス最適化を一手に引き受ける。今回の追加により、開発者はコードを変更せずに最新のGPTモデルへ移行できるルーティング機能も利用可能になった。
GPT 5.6 Sol・Terra・Lunaの違い

モデル指定はAI SDKでopenai/gpt-5.6-solのようにスラッグを渡すだけだ。用途や予算に応じて切り替えやすい設計になっている。
コードを触らずにモデルを切り替えるルーティングルール

AI Gatewayのルーティングルール機能を使うと、既存のコードを一切変更せずにモデルを差し替えられる。たとえばopenai/gpt-5.5で動いているアプリケーションを、コマンド1行でopenai/gpt-5.6-solへ振り向けることが可能だ。
rewriteルールを設定するだけで、アプリコードに手を入れず最新モデルへ移行できる。ルーティングルールはモデルのA/Bテストや段階的なロールアウトにも活用できる。本番環境でいきなり全トラフィックを新モデルに向けるのではなく、一部だけ振り分けて様子を見る運用も現実的だ。
AI Gatewayの料金体系とその他の機能

AI Gatewayはプロバイダの利用料金に上乗せせず、推論に対するプラットフォーム手数料も請求しない。BYOK(Bring Your Own Key)で自身のAPIキーを持ち込んだ場合でも同様に手数料は発生しないため、コストを厳密に管理したいチームにとっては安心できる設計だ。
利用状況の可視化と制御に役立つ機能も充実している。主なものは以下のとおりだ。
- カスタムレポートでチームやプロジェクト単位の利用状況を把握できる
- ゼロデータ保持(ZDR)に対応し、機密性の高いプロンプトの取り扱いも安心
- APIキー単位で予算上限を設定し、予期せぬコスト超過を防ぐ
- ルーティングルールでモデル切り替えやフェイルオーバーを自動化する
実際の開発フローに組み込む際の注意点
GPT 5.6シリーズは限定的なプレビュー提供の段階にある。本番環境で全面的に切り替える前に、モデルプレイグラウンドで動作を検証し、期待する出力品質やレイテンシが得られるか確認することを推奨する。特にエージェント的な使い方をする場合、従来モデルとはプロンプトの最適な書き方が変わる可能性もある。
また、Terraは「前世代と同等性能・半額」というコストメリットが明確だが、SolとLunaはユースケースによって費用対効果が大きく変わる。まずは低コストのLunaでプロトタイプを作り、本格的なタスクではSolに切り替えるといった段階的な活用が現実的な戦略になるだろう。
この記事のポイント
- GPT 5.6のSol・Terra・LunaがAI Gatewayで限定プレビュー提供を開始
- Terraは前世代と同等の性能を半額で提供するコストパフォーマンスが最大の魅力
- ルーティングルールによりコード変更なしでモデルを切り替え可能
- AI Gatewayはプロバイダ料金に上乗せせず、BYOKでも手数料なし

・ 複数業界における17年間のデジタルビジネス開発経験
・ ウェブサイト開発のためのHTML、PHP、CSS、JavaScript等の実用的知識
・ 15ヶ国語対応の多言語SaaSの開発経験
・ 17年間にも及ぶ、Eコマース長期運営経験
・ 幅広い業界でのSEO最適化の豊富な経験

VS Code 1.127リリース、エージェントブラウザツールがGAに
VS Code 1.127が2026年7月1日に公開された。今回のアップデートの焦点は、エージェント機能向けの統合ブラウザツールがプレビューを経て一般提供(GA)になった点と、エージェントウィンドウのセッション管理が大幅に強化された点にある。
ブラウザツールによって、AIエージェントはVS Code内のブラウザでページを開き、スクリーンショットを取得し、クリック操作まで行えるようになる。セッション管理ではグループ化やドラッグ&ドロップ、チャット入力バナーによるCI/CD統合、マルチチャットの改善が含まれ、開発者の生産性を高める機能が多数追加された。
エージェント向けブラウザツールが一般提供に、サイトごとの権限制御も実装

「ブラウザツール」の概要とGA化の意義
エージェント向けブラウザツールは、VS Codeの統合ブラウザ上でAIエージェントがWebアプリを開き、コンテンツの読み取り、コンソールエラーの取得、スクリーンショット撮影、さらにはクリックや入力といった操作を自律的に行えるようにする機能だ。これまでプレビューとして提供されていたが、1.127で一般提供へ移行し、デフォルトで有効化された。
このツールにより、エージェントは「Webアプリを構築して」という指示に対し、コード生成だけでなく実際のブラウザ上での表示確認やエラー検出、修正までをひとつのループで完結させられる。従来は開発者が逐一ブラウザで確認し、エージェントに修正を依頼する手間があったが、そのサイクルが自動化される。外部のMCPサーバーを用意する必要もない。
管理者はエンタープライズポリシーでブラウザツールの利用を制御できる。BrowserChatToolsポリシーで機能自体を無効化したり、エージェントネットワークフィルタリングによってアクセス可能なドメインを制限したりすることが可能だ。
ブラウザツールを活用すると、エージェントが独力でビルドからテスト、修正までのサイクルを回せる。開発者が手動で行っていた確認作業の大部分が自動化され、より高次の設計やレビューに集中できるようになる。
カメラや位置情報などサイト単位の権限制御
統合ブラウザにサイト単位の権限設定が追加された。ページがカメラ、マイク、位置情報、加速度センサー、Bluetooth、USBなどのWeb APIを要求した際、通常のブラウザと同様に許可・拒否のプロンプトが表示される。許可した内容は「サイト権限」メニューから一括管理できる。
これにより、ビデオ会議やフィットネス系Webアプリのテストなど、従来は統合ブラウザでは動作が制限されていたシナリオでもエージェント検証が可能になる。エージェントがカメラ映像を解析する必要があるテストも、この権限制御のもとで安全に実施できる。
エージェントセッション管理が大幅強化、グループ化やマルチチャットで並行作業を効率化

セッションをグループで整理し、ドラッグ&ドロップで並べ替え
エージェントウィンドウのセッションリストにグループ機能が追加された。複数のセッションを任意のグループにまとめられ、グループヘッダーを折りたたむことでリストを整理できる。各グループには「新しいセッションを開始」「グループ内の全セッションを完了としてマーク」といったクイックアクションも用意されている。
ドラッグ&ドロップにも新たに対応し、セッションの並べ替えやグループ間の移動、ピン留めが直感的に行える。複数セッションを選択してまとめて移動することも可能だ。
チャット入力バナーでプルリクエストのCI失敗やレビューコメントに即対応
エージェントがプルリクエストを作成しているセッションでは、チャット入力欄の真上にバナーが表示される。CIチェックが失敗した場合は「2 of 5 checks failed」といった件数とともに「チェックを修正」「詳細を表示」のアクションボタンが現れ、新たなレビューコメントが届いた際も同様に「コメントに対処」「コメントを表示」がワンクリックで実行できる。
従来はGitHubの画面を開いて状況を確認し、別途エージェントに指示を出す必要があった。このバナーにより、会話の流れを中断せずにエージェントへ修正を委ねられる。
チャット入力バナーにより、プルリクエストのCI失敗やレビューコメントが即座に可視化され、対応のリードタイムが短縮される。開発者がコンテキストを切り替える頻度も減るため、集中力を保ちやすい。
マルチチャットセッションの改善とエディタガターからのフィードバック
ひとつのエージェントホストセッション内で複数のチャットを走らせるマルチチャット機能にも改良が加わった。タブでチャットを切り替えられ、不要なチャットは閉じて非表示にし、後から「会話」ドロップダウンで再表示できる。完全に削除したい場合はタブのコンテキストメニューから「チャットを削除」を選択する。
進捗状況とファイル変更は全チャットで集約されるようになった。ひとつのチャットが作業中であればセッション全体が進行中と表示され、各タブにも個別の進捗が示される。セッションヘッダーの「Changes」ピルには、すべてのピアチャットの編集内容が合算されるため、並行して行われている変更の全容を把握しやすくなった。
会話のフォークも改善され、マルチチャットセッション内ではフォークが新たなピアチャットとして作成される。フォークしたチャットは分岐点までの会話を引き継ぎ、兄弟チャットとは独立して動作する。エディタのガターからは直接フィードバックを追加できるようになり、エージェントに修正してほしい行をホバー操作で即座に指摘できる。
チャットとターミナルの新機能、コスト管理の透明化

/troubleshootコマンドでエージェントの動作を診断
エージェントの動作に問題がある場合に利用できる/troubleshootコマンドが拡張され、エージェントホストセッションも診断対象になった。チャット入力欄で/troubleshootを入力し、続けて#sessionで特定のセッションを選択し、質問や問題の説明を追加すると、チャットログを解析してエージェントの振る舞いに関するインサイトを提示する。カスタム指示が無視される理由や応答が遅い原因の調査に役立つ。
ターミナルコマンドのサンドボックス化(macOSとLinux)
エージェントが実行するターミナルコマンドを、ネットワークアクセスを遮断しファイルシステムへのアクセスを制限したサンドボックス内で動作させる機能がmacOSとLinux向けに展開された。コマンドをサンドボックス外で実行する必要がある場合にのみエージェントが承認を求める仕組みで、毎回のプロンプト表示頻度が大幅に減る。
この機能はデフォルトで有効だが、権限設定のドロップダウンからオフにすることも可能だ。サンドボックス化によってエージェントの自律性が高まり、定型作業中の中断が少なくなる。開発者の心理的負荷も軽減されるだろう。
ターミナルコマンドのサンドボックス化は、エージェントの自律性を大きく引き上げる。毎回の承認待ちがなくなることで、ビルドからテストまでのパイプラインをエージェントがほぼ自動で進められるようになり、開発者の介入は「昇格が必要な重大操作」に絞られる。
サブエージェントの消費クレジットをホバー表示
エージェントがサブエージェントに作業を委譲した際、どの程度のAIクレジットが消費されたかが分かりにくいという課題があった。今回のアップデートで、チャット応答内のサブエージェントセクションにマウスカーソルを合わせると、そのサブエージェントが使用したクレジット数が表示されるようになった。コストの透明性が向上し、エージェントの利用計画を立てやすくなる。
Ollama内蔵プロバイダーが非推奨に、公式拡張への移行を推奨

公式Ollama拡張の提供開始と内蔵プロバイダーの非推奨化
モデルプロバイダーを拡張機能として提供する方針が明確化され、Ollamaの公式VS Code拡張がマーケットプレイスで公開された。これに伴い、これまで内蔵されていたOllamaプロバイダーは非推奨となった。ローカルのOllamaモデルをチャットで利用するには、公式拡張をインストールする方法が推奨される。
Bring Your Own Key(BYOK)で内蔵プロバイダーを使っていたユーザーは、公式拡張をインストールした後に内蔵プロバイダーを削除することで、継続してモデルを利用できる。非推奨プロバイダーの削除手順は、VS Code Blogのリリースノート内の動画で確認できる。
公式拡張への移行は、今後のOllamaモデルへの迅速な対応やセキュリティ更新を受け取るためにも重要だ。非推奨プロバイダーは近い将来削除されるため、早めの切り替えが望ましい。
エンタープライズ向け設定をファイル配信可能に、デバイス管理外でも適用

managed-settings.jsonによるCopilot設定の配信
管理者がGitHub Copilotのポリシーを適用する手段として、JSONファイルをOS固有のパスに配置する方式が追加された。MDM(モバイルデバイス管理)に登録されていないマシンや、構成管理システムでファイルを配信する方が簡便な環境で役立つ。macOSでは/Library/Application Support/GitHubCopilot/managed-settings.json、Linuxでは/etc/github-copilot/managed-settings.json、Windowsでは%ProgramFiles%\GitHubCopilot\managed-settings.jsonにファイルを置く。
ファイルのスキーマはGitHub.com上で管理者が設定する場合と同一で、アクセス許可やプラグインの有効・無効を制御できる。このファイルは、MDMやアカウントベースのエンタープライズ設定が存在しない場合にのみ適用されるため、既存の管理手法と競合しない。
この記事のポイント
- エージェント向けブラウザツールが一般提供開始、外部MCPサーバー不要でテスト自動化が可能に
- セッション管理がグループ化・ドラッグ&ドロップ・マルチチャット強化で並行作業の効率が向上
- チャット入力バナーでCI/CDフィードバックをその場で処理、ワークフローが途切れない
- ターミナルコマンドのサンドボックス化でエージェントの自律性が高まり、承認回数が減少
- Ollamaは公式拡張に移行し、内蔵プロバイダーは非推奨へ
- エンタープライズ向けに設定ファイル配信が可能になり、管理対象外端末にもポリシーを適用

・ 複数業界における17年間のデジタルビジネス開発経験
・ ウェブサイト開発のためのHTML、PHP、CSS、JavaScript等の実用的知識
・ 15ヶ国語対応の多言語SaaSの開発経験
・ 17年間にも及ぶ、Eコマース長期運営経験
・ 幅広い業界でのSEO最適化の豊富な経験

WordPress開発が劇的に速くなる?次世代ビルドツール「@wordpress/build」の全貌
WordPressのプラグイン開発において、ビルドツールのあり方が大きく変わろうとしている。現在広く使われている @wordpress/scripts の内部エンジンが、より高速でシンプルな @wordpress/build へと移行する計画が進んでいる。この変更は、単なる速度向上にとどまらず、開発者がコードを書く際の手順そのものを効率化するものだ。
2025年10月にプロジェクトが始動し、すでにGutenberg(ブロックエディタ)本体の100以上のパッケージビルドに採用されている。 esbuild(エスビルド)という非常に高速なエンジンを基盤に据えることで、これまでのwebpack(ウェブパック)ベースの環境では数分かかっていた処理が、わずか数秒で完了するようになる。開発の待ち時間がなくなることは、制作現場の生産性に直結する重要な変化だ。
なぜ今、使い慣れたツールを刷新する必要があるのか。それは、WordPress開発における「設定の複雑さ」を解消し、より直感的にコードを書ける環境を整えるためだ。新しいツールが目指すビジョンと、具体的な仕組み、そして今後の開発者がどのように対応すべきかを詳しく解説していく。
WordPressプラグイン開発の新たなスタンダード「@wordpress/build」とは

@wordpress/build は、WordPressコアチームが開発を進めている次世代のビルドツールだ。ビルドツールとは、JavaScriptやCSSなどのソースコードを、ブラウザが読み込める形式にまとめたり、最新の書き方を古いブラウザでも動くように変換したりする道具を指す。
webpack時代の複雑さからの脱却
これまで、WordPressの標準ツールである @wordpress/scripts は、内部でwebpackとBabel(バベル)を使用してきた。これらは非常に多機能で柔軟だが、長年の運用を経て設定が複雑化しすぎている側面があった。特に、依存関係の抽出やPHPファイルの生成など、WordPress特有の処理を組み合わせるために、多くのカスタム設定が必要だった。
結果として、Gutenbergプロジェクト自体が @wordpress/scripts を使わず、独自のカスタムツールでビルドを行うというねじれ現象が起きていた。 @wordpress/build は、この複雑さをツール内部に吸収し、開発者が「設定ファイル」をいじる必要をなくすことを目的としている。
esbuild採用による圧倒的なビルド速度
新しいエンジンの核となるのは esbuild だ。これはGo言語で書かれた非常に高速なバンドラー(ファイルをまとめるツール)で、従来のJavaScript製のツールとは比較にならないほどのパフォーマンスを発揮する。例えるなら、手作業で荷物を仕分けていた倉庫に、最新の高速自動仕分けロボットが導入されるようなものだ。
大規模なプロジェクトでも、フルビルドが数秒で終わる。また、ファイルの変更を監視して自動で再ビルドする「ウォッチモード」では、変更した箇所だけを瞬時に処理するため、修正が即座にブラウザへ反映される。この「待ち時間の消失」こそが、 @wordpress/build を導入する最大のメリットといえるだろう。
「設定」から「規約」へ:新しい開発ワークフロー

@wordpress/build の大きな特徴は、「設定より規約(Convention over Configuration)」という考え方を採用している点にある。これは、あらかじめ決められたルールに従ってフォルダやファイルを配置すれば、ツールが自動的に中身を判断して適切に処理してくれる仕組みだ。
フォルダ構成がそのまま設定になる仕組み
従来のように「どのファイルが入り口(エントリポイント)か」をコードで指定する必要はない。プロジェクト内に特定の名前のフォルダを作るだけで、ツールがビルド対象を自動検知する。
packages/:JavaScriptのパッケージを配置する場所。各サブフォルダが1つのパッケージとして扱われる。routes/:管理画面のルーティング(ページ構成)を定義する場所。blocks/:ブロックのソースコードを置く場所(現在提案中の機能)。
このルールに従うだけで、ツールは各フォルダ内の package.json を読み取り、必要なJavaScriptやスタイルシートを生成する。開発者は「どこに何を書くか」というルールさえ覚えれば、ビルド設定の迷宮に迷い込むことはなくなる。
package.jsonによるシンプルな管理
個別の設定が必要な場合も、webpack.config.jsのような専用ファイルは使わず、 package.json 内に記述する。例えば、あるパッケージをブラウザで読み込むスクリプトとして登録したい場合は、以下のように記述するだけで済む。
{
"name": "@my-plugin/utility",
"wpScript": true
}これだけで、ツールはこのパッケージを「IIFE(即時実行関数式)」形式でビルドし、WordPressの管理画面で適切に読み込めるように準備してくれる。IIFEとは、他のプログラムと名前がぶつからないようにコードをカプセル化する手法のことだ。専門的な知識が必要だった設定が、1行のフラグ指定に集約されている。
PHP登録作業を自動化する革新的な機能

WordPress開発者を悩ませる作業の1つに、JavaScriptファイルを読み込むための wp_enqueue_script() などのPHP記述がある。 @wordpress/build は、このPHP側の登録作業も自動化する道筋を示している。
手動のPHP記述が不要になるメリット
これまでは、ビルドされたファイルのパスを確認し、依存するスクリプト(wp-elementやwp-i18nなど)を手動で配列に書き出す必要があった。新しいツールでは、ビルドプロセスの一環として build/build.php というファイルが生成される。プラグインのメインファイルでこれを1行読み込むだけで、すべての登録が完了する。
require_once plugin_dir_path( __FILE__ ) . 'build/build.php';このファイルには、スクリプト、モジュール、スタイルシートの登録処理がすべて含まれている。開発者がPHP側で「どのファイルを読み込むか」を管理する必要がなくなるため、ファイル名の変更や依存関係の追加に伴うケアレスミスを劇的に減らすことができる。
アセット管理と依存関係の自動解決
JavaScript側で import { __ } from '@wordpress/i18n'; と書けば、ツールは自動的に「このスクリプトはwp-i18nに依存している」と判断し、 .asset.php ファイルを作成する。これは従来も @wordpress/scripts で提供されていた機能だが、 @wordpress/build ではさらに強化されている。
例えば、最新の「スクリプトモジュール(ESM)」と従来のスクリプトの使い分けも、設定一つで切り替え可能だ。さらに、WordPress 6.8で導入された効率的なブロック登録機能(WP_Block_Metadata_Registry)への対応も進められており、最新のコア機能の恩恵を最小限の手間で受けられるようになる。
名前空間と外部依存関係の高度な制御

大規模なプラグインや、複数のプラグインが連携する環境では、「名前空間(Namespace)」の管理が重要になる。 @wordpress/build では、自分のプラグインが提供する機能を他のプラグインからどう参照させるかを、明快に定義できる仕組みが備わっている。
プラグイン間でのスクリプト共有が容易に
例えば、WooCommerceのような他のプラグインが提供するJavaScript機能を利用したい場合、 package.json に外部名前空間として定義する。これにより、コード内で import { Cart } from '@woo/cart'; と書くだけで、実行時には window.woo.cart を参照し、依存関係のリストに自動で追加される。
これは、複数のスクリプトが同じライブラリを二重に読み込んでしまう問題を回避し、サイト全体のパフォーマンス向上に寄与する。開発者は複雑なフックの順序を気にすることなく、モダンなJavaScriptの書き方でプラグイン間の連携を実装できるのだ。
今後のロードマップと開発者が今すべきこと

@wordpress/build は現在も活発に開発が進んでいる段階だ。すぐにすべてのプロジェクトを移行すべきかというと、そうではない。公式のロードマップでは、段階的な統合が予定されている。
@wordpress/scriptsとの統合プロセス
将来的には、 @wordpress/scripts の中身が @wordpress/build に置き換わる予定だ。つまり、開発者は今まで通り npm run build を実行するだけで、内部的に新しい高速エンジンが動くようになる。この際、標準的な設定を使っている開発者は、コードを一切変更することなく、ビルド速度の向上という恩恵を受けられる見込みだ。
一方で、webpackの設定を細かくカスタマイズしている場合は、将来的に移行ガイドを参照しながら調整が必要になる可能性がある。コアチームは、この移行を可能な限りスムーズに進めるためのAPI設計に注力している。
早期導入のメリットと注意点
現在、複数のパッケージを持つ大規模なプラグインを開発しているエンジニアにとって、 @wordpress/build を試す価値は十分にある。モノレポ(複数のパッケージを1つのリポジトリで管理する手法)構成での開発効率が格段に上がるからだ。
ただし、ブロック登録周りなど、まだ手動での作業が必要な箇所も残っている。現時点では実験的な導入にとどめ、GitHubのGutenbergリポジトリで進行中のディスカッションに参加し、フィードバックを送るのが最も賢明な関わり方といえるだろう。特に「blocks/フォルダをルートに置く規約」についての議論は、今後のプラグイン構造の標準を決める重要なポイントだ。
独自の分析:WordPress開発体験(DX)はどう変わるか

今回の @wordpress/build への移行は、WordPressが「独自の進化」から「モダンなWeb標準との融合」へと、さらに一歩踏み出したことを象徴している。 esbuildのような最先端のツールを標準に取り入れることで、WordPress開発特有の「古臭さ」や「設定の煩わしさ」が解消されようとしている。
特に注目すべきは、PHPとJavaScriptの境界線がより曖昧になり、自動化が進む点だ。これまでWordPressエンジニアには、フロントエンドの知識と、それをWordPressに登録するためのPHPの知識の両方が高いレベルで求められてきた。この「登録」という非創造的な作業が自動化されることで、開発者は「ユーザーにどんな機能を提供するか」という本来の目的に集中できるようになる。
また、ビルドが高速化されることは、単に時間の節約になるだけではない。試行錯誤の回数が増え、結果としてコードの品質が向上する。保存した瞬間に画面が変わる「ライブな開発体験」は、開発者のモチベーションを維持する上でも極めて重要だ。 @wordpress/build は、WordPressを「古いブログシステム」から「洗練されたアプリケーションプラットフォーム」へと進化させるための、強力なインフラになるだろう。
この記事のポイント
@wordpress/buildは@wordpress/scriptsの次世代エンジンとして開発されている。- esbuildの採用により、ビルド速度が分単位から秒単位へと劇的に高速化される。
- 「設定より規約」を重視し、フォルダ構成に従うだけで自動ビルドが可能になる。
- PHP側のスクリプト登録処理が自動生成され、手動での記述が不要になる。
- 将来的には既存のツールに統合されるため、標準的な構成なら変更なしで恩恵を受けられる。

・ 複数業界における17年間のデジタルビジネス開発経験
・ ウェブサイト開発のためのHTML、PHP、CSS、JavaScript等の実用的知識
・ 15ヶ国語対応の多言語SaaSの開発経験
・ 17年間にも及ぶ、Eコマース長期運営経験
・ 幅広い業界でのSEO最適化の豊富な経験
