WooCommerce 10.9で「あとで買う」「ほしいものリスト」が実験搭載

WooCommerce 10.9で「あとで買う」「ほしいものリスト」が実験搭載

WooCommerce 10.9で「あとで買う」「ほしいものリスト」が実験搭載

WooCommerce 10.9が2026年6月にリリースされ、ログイン顧客向けの実験的なショッピングリスト機能「Shopper Lists」が導入された。カート画面に表示される「あとで買う(Save for Later)」と、商品ページに追加される「ほしいものリスト(Wishlists)」の2機能が含まれている。

いずれもデフォルトでは無効化されており、店舗運営者が明示的にオンにして使うオプトイン方式だ。今回は WooCommerce のブロックベースショッピング体験を前提に設計されており、従来のショートコードベースの店舗では動作が保証されない点に注意が必要だ。

両機能は同じ Shopper Lists バックエンドを共有しており、今回の実験リリースを経て、将来的にはさらに多くのリスト系機能へ拡張される可能性がある。

2つのショッピングリスト機能の詳細

2つのショッピングリスト機能の詳細

Save for Later(あとで買う)

「Save for Later」はカートブロックの各商品行に「あとで買う」というアクションを追加する。ログイン顧客がこのボタンを使うと、その商品はカートから取り除かれ、カートブロックの下部に新設された「あとで買う」セクションへ移動する。

顧客はあとで買うセクションから商品をカートに戻したり、リストから削除したりできる。バリエーション商品(サイズや色を選択する商品)の場合、選択済みの属性情報が保持されるため、「どのサイズを保存したか」をあとで確認できるのが実務上の利点だ。

従来のカート(Before)
Tシャツ(Mサイズ) ¥2,980 数量 1
購入する か 削除する の二択しかない
購入する 削除
※「迷っている商品」を置いておく場所がない
Save for Later 導入後(After)
カート内
マグカップ ¥1,200 購入する
あとで買うセクション
Tシャツ(Mサイズ) ¥2,980 カートに戻す 削除

現時点ではカートブロックのみ対応で、ミニカートには未対応。WooCommerce 開発チームの発表によれば、ミニカート対応は今回の実験リリースのスコープ外とされている。

Wishlists(ほしいものリスト)

「Wishlists」は Add to Cart with Options ブロックを使っている商品ページに「ほしいものリストに追加」ボタンを表示する。単純商品だけでなく、選択済みのバリエーション商品も保存できる。

保存した商品はマイアカウントの「ほしいものリスト」セクションから一覧表示され、そこからカートへの移動や削除が可能だ。店舗運営者は Wishlist ブロックを任意の固定ページに配置することで、顧客が自分専用のほしいものリストページを持てるようになる。

Wishlists のデータフロー
顧客 商品ページで「ほしいものリストに追加」をクリック
WooCommerce Store API 経由で shopper-lists に保存
顧客 マイアカウント > ほしいものリスト で確認
顧客 「カートに追加」または「削除」を選択

技術的基盤

技術的基盤

Save for Later と Wishlists は、どちらも同一の Shopper Lists バックエンドを土台にしている。Store API、Interactivity API ストア、共有データ構造の3層で構成されており、今後のリスト系機能追加を見据えた拡張性の高い設計だ。

共有 Store API エンドポイント

両機能のデータ操作は、すべて以下の共通エンドポイント群を通じて行われる。

/wc/store/v1/shopper-lists/

Store API は WooCommerce のブロックベースショッピング体験を支える REST API 層で、カートやチェックアウト、商品データの取得を担う。今回の Shopper Lists 実装により、この API 層にリスト操作の機能が追加された形だ。

Developer WooCommerce Blog の発表によると、この API 表面はメイン機能マージ(#65263)で導入され、Wishlist ボタンは Add to Cart with Options ブロックへのレンダリング時注入(#65765)によって復帰したとされている。

Interactivity API との統合

Interactivity API は WordPress 6.5 で導入された、ブロックにインタラクティブなフロントエンド動作を追加するための公式 API だ。Shopper Lists では、カートブロック内での「あとで買う」への移動や、商品ページでの「ほしいものリストに追加」といった操作が、ページ遷移なしで即座に反映される。

この API を利用することで、従来の WooCommerce で課題だった「操作のたびにページ全体がリロードされる」問題が解消され、顧客体験が大きく向上する。とくに商品数が多い店舗では、体感速度の差が顕著になるだろう。

機能の有効化手順

機能の有効化手順

これらの機能はカートの挙動、商品ページの表示、マイアカウント、ブロックテンプレート、ログイン顧客データ、Store API との通信と、多岐にわたる領域に影響を与える。そのため WooCommerce チームは「本番環境ではなく、ステージング環境かローカルテストサイトで検証してほしい」と呼びかけている。

有効化に必要な条件

  • WooCommerce 10.9.1 以降がインストールされていること
  • ステージング環境またはローカルのテストサイトであること
  • カートページが Cart ブロックで構築されていること
  • 商品詳細ページのテンプレートが Add to Cart with Options ブロックを使用していること
  • テスト用の顧客アカウントが用意されていること

設定手順

管理画面の WooCommerce > 設定 > 高度な設定 > 機能 に移動し、以下の2つの実験的機能を有効化するだけだ。

  • Save for Later in Cart(カート内のあとで買う)
  • Wishlists(ほしいものリスト)

テスト用の商品構成としては、単純商品を1点以上、選択式属性を持つバリエーション商品を1点以上用意しておくと、両機能の動作を網羅的に確認できる。

テストすべきポイント

テストすべきポイント

WooCommerce チームはデベロッパーや制作会社、店舗構築者に対し、実際の店舗構成に近い環境でのフィードバックを求めている。とくにカスタマイズされたブロックテンプレートや多数の拡張機能を導入したサイトでの動作報告が重視されている。

Save for Later のテスト項目

  • カート内の商品に対して「あとで買う」ボタンが表示されるか
  • ボタン押下後、商品が「あとで買う」セクションに正しく移動するか
  • バリエーション商品の選択属性(サイズや色)が保持されているか
  • 「カートに戻す」で商品がカートに復帰するか
  • 「削除」でリストから消えるか

Wishlists のテスト項目

  • 商品ページに「ほしいものリストに追加」ボタンが表示されるか
  • 単純商品とバリエーション商品の両方が保存できるか
  • マイアカウント > ほしいものリスト に保存商品が正しく表示されるか
  • ほしいものリストからカートへの移動が正常に動作するか
  • Wishlist ブロックを任意の固定ページに配置して表示できるか

無効化時のクリーンアップ確認

両方の実験的機能を無効化したあと、カート、商品ページ、マイアカウントを再訪問し、Shopper Lists の UI が完全に消えるかを確認する必要がある。無効なブロックが残ったり、テンプレート出力が崩れたりしないことが、安定版への移行条件のひとつになる。

テストフロー概要
STEP 1 ステージング環境に WooCommerce 10.9.1 以降をインストール
STEP 2 両方の実験的機能を有効化し、テスト商品と顧客アカウントを準備
STEP 3 Save for Later と Wishlists の全操作を顧客目線でテスト
STEP 4 機能を無効化し、UI が完全に消えることを確認
STEP 1(青)  STEP 2(緑)  STEP 3(橙)  STEP 4(紫)

実務への影響と今後の展望

実務への影響と今後の展望

Shopper Lists の登場は、WooCommerce 店舗における顧客維持の選択肢を大きく広げる。従来の「その場で買うか、離脱するか」という二択から、「いったん保存して後日判断する」という選択肢が加わることで、カート放棄率の低減につながる可能性がある。

とくにアパレルや家具など、購入までに検討期間が長い商材を扱う店舗にとっては、ほしいものリスト機能の価値は高い。顧客が複数回にわたって同じ商品を閲覧する行動パターンがある場合、リスト保存によってコンバージョンまでの導線が短縮される。

ただし現時点では実験的機能であり、本番環境での利用は推奨されていない。カスタマイズされたブロックテーマや拡張機能との競合が発生する可能性があるためだ。WooCommerce チームが特に求めているのは、まさにそうした「実店舗に近い複雑な環境」でのテスト報告である。

フィードバックは Developer WooCommerce Blog の該当記事コメント欄、または GitHub ディスカッション(#66038)で受け付けている。制作会社やデベロッパーにとっては、正式リリース前に自社のクライアント店舗との相性を把握できる貴重な機会といえる。

この記事のポイント

  • WooCommerce 10.9 が Shopper Lists 機能を実験的に導入した
  • 「Save for Later」はカートブロックに商品を一時保存する機能
  • 「Wishlists」は Add to Cart with Options ブロックと連携するほしいものリスト
  • 両機能はデフォルト無効で、管理画面の「高度な設定 > 機能」から有効化する
  • 本番環境ではなくステージング環境でのテストが強く推奨されている
海田 洋祐

・ 複数業界における17年間のデジタルビジネス開発経験 ・ ウェブサイト開発のためのHTML、PHP、CSS、JavaScript等の実用的知識 ・ 15ヶ国語対応の多言語SaaSの開発経験 ・ 17年間にも及ぶ、Eコマース長期運営経験 ・ 幅広い業界でのSEO最適化の豊富な経験

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